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CASE.12

ニュープロ パッチの漸増がなく、30日分処方されたら?

  • 神経内科
関連キーワード:
  • 用法・用量
  • ドパミン受容体作動薬
  • 副作用

難易度:☆☆

疾患名:パーキンソン病
  • 医薬品販売名:ニュープロ パッチ 2.25 mg、4.5 mg、9 mg 、13.5 mg、18 mg*
    (*パーキンソン病に効能効果を持つ規格のみ記載)
  • 医薬品一般名:ロチゴチン経皮吸収型製剤

問題

下記の事例において、何をチェックし、具体的には何が問題であり、
疑義照会する際はどのように伝えればよいでしょうか?

<処方> 病院の神経内科

  • マドパー配合錠 4 錠
    1 日 4 回 毎食後と寝る前 30 日分
  • ニュープロ パッチ 9 mg
    1 日 1 回 30 日分

チェックすべきことは? 何が問題?
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解答

チェックポイント

・ニュープロ パッチの開始用量および用法をチェックする。

問題点

ニュープロ パッチは、副作用発現回避のため、少量から開始し、1 週間毎に増量し、維持量を定める漸増法で投与する。そのため、本事例のように、初回にもかかわらず、単一規格のニュープロ パッチが、 30 日分の処方が出された場合、疑義照会の必要がある。

疑義照会

「ニュープロ パッチが初めて処方された患者さんの投与日数についてご確認をお願いいたします。この薬は、副作用の発現を回避するため、少量から開始し、1週間毎に維持量まで増量する必要のある薬です。今回、維持量の 9 mg で 30 日分の御処方となっておりますが、初回ですので 4.5 mg から開始して頂き、1 週間毎の漸増処方に変更をお願いいたします。患者さんは、 2 週間後でも受診可能だと仰っております。」
その結果、医師より返答があり、以下に変更となった。

変更後処方

  • マドパー配合錠 4 錠
    1 日 4 回 毎食後と寝る前 14 日分
  • ニュープロ パッチ 4.5 mg
    1 日 1 回 7 日分
  • ニュープロ パッチ 9 mg
    1 日 1 回 7 日分

    (ニュープロ パッチ 9 mg は、ニュープロ パッチ 4.5 mg 貼付終了後より開始)

まとめ

・ドパミン受容体作動薬を他の抗パーキンソン剤と併用した場合、ジスキネジア、幻覚、妄想、錯乱等の精神症状、消化器症状(悪心・嘔吐など)の副作用が発現しやすくなるため、少量から開始し漸増しながら維持用量まで増量する必要がある

解答に必要な医薬品情報

ニュープロ パッチの添付文書
【用法・用量】
●パーキンソン病
〔ニュープロ パッチ 2.25 mg、同パッチ 4.5 mg、同パッチ 9 mg、同パッチ 13.5 mg、同パッチ 18 mg〕
通常、成人にはロチゴチンとして 1 日 1 回 4.5 mg/日から、はじめ、以後経過を観察しながら 1 週間毎に 1 日量として 4.5 mg ずつ増量し、維持量(標準1日量 9 mg~36 mg)を定める。なお、年齢、症状により適宜増減できるが、1 日量は 36 mg を超えないこと。
本剤は肩、上腕部、腹部、側腹部、臀部、大腿部のいずれかの正常な皮膚に貼付し、24 時間毎に貼り替える。

【用法・用量に関連する使用上の注意】
●パーキンソン病
  (1)本剤の投与は、「用法・用量」に従い少量から開始し、幻覚、妄想等の精神症状、消化器症状、血圧等の観察を十分に行い、慎重に維持量(標準 1 日量 9 mg~36 mg)まで増量すること。

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1.漸増の必要性について
ドパミン受容体作動薬共通の副作用であるが、他の抗パーキンソン剤と併用した場合、ジスキネジア、幻覚、妄想、錯乱等の精神症状、消化器症状(悪心・嘔吐など)の副作用が発現しやすくなる可能性がある。したがって、幻覚、妄想等の精神症状、消化器症状、血圧等の患者の状態を十分に観察し、慎重に維持量(標準 1 日量 9 mg~36 mg)まで増量する必要がある。
(文献 1より引用改変)

ドパミン受容体作動薬に特徴的な有害事象(悪心・嘔吐、幻覚・妄想、突発的睡眠、衝動制御障害及び強迫性障害)については、いずれもプラセボ群と比較してロチゴチン投与群で発現頻度が高い傾向が認められることから、ロチゴチン投与時には十分に注意する必要があり、患者の状態に注意しながら少量から漸増する用法・用量が遵守されれば、許容可能なリスクであると判断した。
(文献 2 より引用改変)

2.パーキンソン病におけるロチゴチンの用法、用量の設定
2-1.開始用量について
 パーキンソン病患者を対象とした国内臨床試験において、高い発現率が認められた有害事象は、悪心、嘔吐、「適用および滴下投与部位反応」及び傾眠であり、特に悪心及び嘔吐は投与早期に発現し増量を制限する有害事象であった。国内比較対照試験のロチゴチン投与群において、開始用量 4.5 mg/日のパーキンソン患者では、投与 7 日目までに発現した悪心や嘔吐の発現率が他の群と比較して低かった(各々6.7%、3.2%)事から、パーキンソン患者で 4.5 mg/日を開始用量とすることは妥当と考えられた。また、有効性の点から、パーキンソン病での臨床用量の範囲(4.5~36.0 mg/日)は大きく、忍容性があればできるだけ高い用量を開始用量に設定することで、より早く効果用量に到達することが可能になることから、忍容性及び有効性を考慮し、パーキンソン病における開始用量を 4.5 mg/日と設定された。

2-2.維持用量について
維持用量は、概ね 9.0~36.0 mg/日であった国内臨床試験において、有意な改善が認められたこと、9.0~36.0 mg/日の各用量においても 改善が示唆されていることや国内臨床試験における累積初回反応率が 4.5 mg/日群に対して 9.0 mg/日が有意に高かったことから、標準的維持用量の下限を 9.0 mg/日と設定された。
さらに、最高用量として、36.0 mg/日までの用量範囲の安全性は許容可能と考えられること、増量により初めて症状の改善が認められた患者も存在したことから、維持用量の最高用量を 36.0 mg/日とすることは可能であり、標準的維持用量を 9.0~36.0 mg/日と設定された。

以上より、ニュープロ パッチの用法・用量は、開始用量は 4.5 mg/日で、消化器症状(悪心・嘔吐)等の観察を十分に行い、1週間毎に慎重に維持量(標準 1 日量 9 mg~36 mg)まで増量することとされた。
(文献 2 より引用改変)

文献)
1.ニュープロ パッチ インタビューフォーム(2016 年 5 月改訂第 6 版)(2018.6.22 アクセス)
2. ニュープロ パッチ 審査結果報告書(平成24 年12 月3 日 医薬食品局審査管理課)(2018.3.28 アクセス)

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