事例で学ぶ 処方チェック コミュニケーション

CASE.2

ニューキノロン系抗菌薬と制酸薬の同時服用はOK?

  • 感染症
  • 泌尿器系
関連キーワード:
  • ニューキノロン系抗菌薬
  • 制酸薬
  • 相互作用

難易度:★★

疾患名:膀胱炎
  • 医薬品販売名:(1)クラビット錠500mg、(2)マグミット錠330mg ほか
  • 医薬品一般名:(1)レボフロキサシン、(2)酸化マグネシウム

問題

下記の事例において、何をチェックし、具体的には何が問題であり、
疑義照会する際はどのように伝えればよいでしょうか?

35歳の女性患者。排尿痛があり泌尿器科を受診し、膀胱炎と診断されてクラビット錠(一般名:レボフロキサシン水和物)が処方されたが(処方1)、胃炎のため以前から内科でマグミット錠(一般名:酸化マグネシウム)を服用中であった。

<処方1>A病院の泌尿器科

  • クラビット錠500mg
    1錠   1日 1回 朝食後   3日分

<処方2>A病院の内科(お薬手帳より)

  • マグミット錠330mg
    3錠   1日 3回 毎食後   28日分 ほか

チェックすべきことは? 何が問題?
解答・解説を見る

解答

チェックポイント

新たに処方されたクラビット錠と、服用中の薬との相互作用をチェックする。

問題点

レボフロキサシンなどのニューキノロン系抗菌薬と酸化マグネシウムは、医薬品添付文書において「併用注意」とされている薬剤であり、同時服用により、レボフロキサシンがマグネシウムと難溶性のキレートを形成し、レボフロキサシンの吸収が阻害され、効果が減弱するおそれがあるので、同時に服用させないなど注意する必要がある。

疑義照会

「本日、クラビット錠を朝食後で処方された患者さんですが、内科でマグミット錠を毎食後に服用されています。マグミット錠と同時に服用しますと、クラビット錠の吸収が低下するおそれがございます。クラビット錠とマグミット錠が同時服用とならないように、クラビット錠を朝食前服用に変更したほうがよろしいかと思います。いかがでしょうか。」

医師は、患者の併用薬をきちんと確認していなかったとのことであった。十分な治療効果を期待するため、クラビット錠は朝食前の服用に変更となった。

<処方> A病院の泌尿器科(変更後の処方)

  • クラビット錠500mg
    1錠   1日 1回 朝食前   3日分

まとめ

ニューキノロン系抗菌薬と制酸薬との併用で、ニューキノロン系抗菌薬の吸収が低下!

解答に必要な医薬品情報

クラビット錠の添付文書
Pmdaでの添付文書情報はこちら
※必ず、各製品の最新の添付文書をご確認ください。
併用注意(併用に注意すること)
薬剤名等:アルミニウム又はマグネシウム含有の制酸薬等、鉄剤
臨床症状・措置方法:本剤の効果が減弱されるおそれがある。これらの薬剤は本剤投与から1~2 時間後に投与する。
機序・危険因子:これらの薬剤とキレートを形成し、本剤の吸収が低下すると考えられている。

マグミット錠の添付文書
Pmdaでの添付文書情報はこちら
※必ず、各製品の最新の添付文書をご確認ください。
併用注意(併用に注意すること)
薬剤名等:ニューキノロン系抗菌剤(シプロフロキサシン、トスフロキサシン等)
臨床症状・措置方法:これらの薬剤の吸収が低下し、効果が減弱するおそれがあるので、同時に服用させないなど注意すること。
機序・危険因子:マグネシウムと難溶性のキレートを形成し、薬剤の吸収が阻害される。

もっと知る!

レボフロキサシンの服用を酸化マグネシウム服用後に変更する場合には、酸化マグネシウム服用後にニューキノロン系抗菌薬服用まで3~6時間以上空ける必要がある。そのため、例えば、夕食後にマグミッ錠を服用後、少なくとも3時間以上空けて就寝前にクラビット錠を服用することを提案するなども考えられる。
一方、酸化マグネシウムの服用時期を変更できるのであれば、朝食後の酸化マグネシウムを朝食後2時間など、食間の服用に変更することを提案するのも1つである。

<制酸薬との服用間隔によるニューキノロン系抗菌薬のバイオアベイラビリティの変化>[文献 1-2]
レボフロキサシンに関するデータはないが、制酸薬との併用による他のニューキノロン系抗菌薬の相対的バイオアベイラビリティの変動を図1に示す。ニューキノロン系抗菌薬の投与時間を0 時間とし、制酸薬の投与をずらして相対的バイオアベイラビリティを調べた結果、ニューキノロン系抗菌薬の服用3~6時間前、服用2時間後までは、制酸薬の併用を避けるべきであることが示唆された。

図 1. 制酸薬投与タイミングによるニューキノロン系抗菌薬の相対的バイオアベイラビリティの変化
ニューキノロン薬の投与タイミングを 0 時間とし、制酸薬をその前後に投与している。
CPFX:シプロフロキサシン、LFLX:ロメフロキサシン、OFLX:オフロキサシン、
ENX:エノキサシン、NFLX:ノルフロキサシン

文献)
1.川上純一 他, 病院薬学 18(1):1-12, 1992.
2.伊藤由紀 他, 医薬ジャーナル 37(12):168-173, 2001.

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