事例で学ぶ 処方チェック コミュニケーション

CASE.7

グリコラン錠の最大用量以上が処方されていたら?

  • 内分泌内科
関連キーワード:
  • 最高投与量

難易度:☆☆

疾患名:2型糖尿病
  • 医薬品販売名:メトグルコ錠 250 mg/500 mg、グリコラン錠 250 mgほか
  • 医薬品一般名:メトホルミン塩酸塩

問題

下記の事例において、何をチェックし、具体的には何が問題であり、
疑義照会する際はどのように伝えればよいでしょうか?

60 歳の男性患者。2型糖尿病のため、グリコラン錠を 1 日 750 mg で服用していたが、血糖値悪化のため、1 日 1,500 mg に増量された。

<処方> 大学病院の内分泌内科

  • グリコラン錠 250 mg
    6錠   1日3回 毎食後   30日分
  • セイブル錠 50 mg
    3錠   1日3回 毎食直前   30日分

チェックすべきことは? 何が問題?
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解答

チェックポイント

グリコラン錠と他のメトホルミン塩酸塩錠の最高投与量をチェックする。

問題点

グリコラン錠はメトホルミン製剤であるが、1 日最高投与量は 750 mg までとされており、高用量投与が可能なメトホルミン製剤ではない。2010 年に新薬として承認された高用量投与が可能なメトホルミン製剤には、メトグルコ錠や、ジェネリック医薬品の場合、名称に「MT」がつくメトホルミン製剤なら、成人には1 日最高投与量は 2,250 mg まで投与可能である。

疑義照会

「グリコラン錠を処方された患者さんの用量についてご確認をお願いいたします。今回、グリコラン錠が 1,500 mg に増量されましたが、グリコラン錠の最高投与量は 750 mg となり、高投与量の適応がないメトホルミン製剤となります。ただし、同成分同規格のメトグルコ錠なら、成人で最高投与量が 1 日 2,250 mg まで適応が通っておりますが、いかがいたしましょうか。」

まとめ

・一般名を同じくする製品でも、最高投与量が異なることがある。

解答に必要な医薬品情報

グリコラン錠 250 mg の添付文書
【用法・用量】
通常、成人にはメトホルミン塩酸塩として 1 日量 500 mg より開始し、1 日 2〜3 回食後に分割経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、1 日最高投与量は 750 mg とする。

メトグルコ錠 250 mg/500 mg の添付文書
【用法・用量】
通常、成人にはメトホルミン塩酸塩として 1 日 500 mg より開始し、1 日 2~3 回に分割して食直前又は食後に経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、通常 1 日 750~1,500 mg とする。なお、患者の状態により適宜増減するが、1 日最高投与量は 2,250 mg までとする。
通常、10 歳以上の小児にはメトホルミン塩酸塩として 1 日 500 mg より開始し、1 日 2~3 回に分割して食直前又は食後に経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、通常 1 日 500~1,500 mg とする。なお、患者の状態により適宜増減するが、1 日最高投与量は 2,000 mg までとする。

もっと知る!

<高投与量の設定があるメトホルミン製剤について>[文献 1]
 メトホルミン塩酸塩錠はビグアナイド系糖尿病治療薬(BG 剤)として、本邦では 1961 年から承認を受け、使用されていたが、1970 年代後半、BG 剤の 1 つであるフェンホルミンによる乳酸アシドーシスが問題となり、同じビグアナイド系薬剤であるメトホルミンの効能・効果、用法・用量、使用患者に制限が加えられ、本邦では長い間、欧米諸国よりも低用量で使用されてきた。海外では、UKPDS(UK Prospective Diabetes Study)など日本の承認用量を大きく上回る用量のメトホルミンを用いた大規模臨床試験におけるメトホルミンの有効性、安全性が実証されてきたため、本邦でも 2010 年に高用量のメトホルミン製剤として「メトグルコ錠」が新たに承認された。ただし、従来のメトホルミン製剤とは用法・用量などが異なることから、「新薬」として扱われることになった。
従来の「低用量メトホルミン製剤(グリコラン錠など)」と「高用量メトホルミン製剤(メトグルコ錠など)」は使用方法に異なる点がある。
 用法・用量では、1 日開始用量は同じ 500 mg であるが、低用量メトホルミン製剤には維持量設定はなく、1日最高投与量は「750 mg」で、「食後」服用であるのに対して、高用量メトホルミン製剤は、維持量 750~1,500 mg/日で、1 日最高投与量は「2,250 mg」、「食直前または食後」服用となっている。低用量メトホルミン製剤では、高齢者や腎機能障害、肝機能障害がある患者に「禁忌」とされているが、高用量メトホルミン製剤では、高齢者や軽度の腎機能障害、軽度~中程度の肝機能障害の患者には、「慎重投与」となっている。
このように、同成分のメトホルミン製剤でも、相違点があることを確認する必要がある。
 現在、グリコラン錠以外の従来の低用量メトホルミン製剤のジェネリック医薬品は、メトホルミン塩酸塩錠 250 mg「トーワ」、メトホルミン塩酸塩錠 250 mg「SN」がある(2018.05.7 時点)。
また、メトグルコ錠と同じ高用量メトホルミン製剤のジェネリック医薬品には名称に「MT」がつく。(例:メトホルミン塩酸塩錠250mg「トーワ」)

文献
1. メトグルコ錠 250 mg 500mg インタビューフォーム、改訂第 11 版、大日本住友製薬株式会社、2018 年 2 月

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