事例で学ぶ 処方チェック コミュニケーション
CASE.4
バルトレックスの単純疱疹への用法は?
- 感染症
- 関連キーワード:
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- 用法・用量
- 効能・効果
難易度:★☆☆
- 疾患名:単純疱疹
-
- 医薬品販売名:バルトレックス錠 500 mg ほか
- 医薬品一般名:バラシクロビル
問題
下記の事例において、何をチェックし、具体的には何が問題であり、
疑義照会する際はどのように伝えればよいでしょうか?
<処方>A皮膚科クリニック
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- バルトレックス錠500mg
- 3錠 1日 3回 毎食後 5日分
チェックすべきことは? 何が問題?
解答・解説を見る
解答
チェックポイント
バラシクロビルの効能・効果と用法・用量をチェックする。
問題点
バラシクロビルは、適応症により用量や投与日数が異なる。今回は単純疱疹で処方されており、投与日数5日間で1回量500mgは問題ないが、単純疱疹での用法は1日2回であり、また、用法の欄に「適宜増減する」の記載もないため、増量の可能性もなく、用法が誤りと考えられる。
疑義照会
「バルトレックス錠が処方された患者さんの用法についてご確認させていただきます。今回、患者さんより口唇ヘルペスでおかかりになったとお聞きしておりますが、バルトレックス錠が1日 3 回で処方されております。添付文書では、単純疱疹の用法は、1回500mgを1日2回までの服用となっておりますが、このままお渡ししてもよろしいでしょうか?」
医師は、帯状疱疹の患者にバルトレックス錠を処方した後、すぐ次の患者であったため、つい帯状疱疹と同じ用法で処方してしまったとのことで、以下の処方に変更された。
<処方>A皮膚科クリニック
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- バルトレックス錠500mg
- 2錠 1日2回 朝食後・夕食後 5日分
まとめ
帯状疱疹と単純疱疹では用法・用量が異なる!
解答に必要な医薬品情報
バルトレックス錠の添付文書
Pmdaでの添付文書情報はこちら
※必ず、各製品の最新の添付文書をご確認ください。
【用法・用量】
[成人]
・単純疱疹:通常、成人にはバラシクロビルとして1回500mgを1日2回経口投与する。
・造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制:通常、成人にはバラシクロビルとして1回500mgを1日2回造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで経口投与する。
・帯状疱疹:通常、成人にはバラシクロビルとして1回1000mgを1日3回経口投与する。
・水痘:通常、成人にはバラシクロビルとして1回1000mgを1日3回経口投与する。
【使用上の注意】
2.重要な基本的注意
(3)単純疱疹の治療においては、本剤を5日間使用し、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、他の治療に切り替えること。ただし、初発型性器ヘルペスは重症化する場合があるため、本剤を10日間まで使用可能とする。
(4)成人の水痘の治療においては本剤を5~7日間、小児の水痘の治療においては本剤を5日間使用し、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、他の治療に切り替えること。
(5)帯状疱疹の治療においては、本剤を7日間使用し、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、他の治療に切り替えること。
(6)本剤による性器ヘルペスの再発抑制療法は、性器ヘルペスの発症を繰返す患者(免疫正常患者においては、おおむね年6回以上の頻度で再発する者)に対して行うこと(「臨床成績」の項参照)。また、本剤を1年間投与後、投与継続の必要性について検討することが推奨される。
もっと知る!
単純疱疹
・病態:単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)により、皮膚・粘膜に疼痛を伴う小水疱やびらん性の病変が形成される疾患で、初感染は不顕性感染のことが多い。HSVには1型(HSV-1)と2型(HSV-2)の2種類の型があり、HSV-1は主に口唇ヘルペスの原因であり、性器ヘルペスはどちらも原因となるが、再発を繰り返す場合、主にHSV-2が原因である。
・治療:単純疱疹は、主に薬物治療を行うが、発病初期に近いほど効果が期待できるので、早期に投与を開始する。健常者の再発性口唇ヘルペスのような軽症例には、外用の抗ヘルペスウイルス薬を用いるが、中等症例には本事例のような内服の抗ヘルペスウイルス薬を用い、初感染重症型、重症Kaposi水痘様発疹症、免疫不全患者などの重症例には注射の抗ヘルペスウイルス薬を用いる。
帯状疱疹
・病態:帯状疱疹は、水痘罹患後に神経節に潜伏感染していた水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster virus:VZV)が再活性化して生じる疾患であり、神経痛様の痛みが先行し、数日後に神経分布に一致して片側、帯状に小水疱を伴った浮腫性紅斑が生じ、膿疱化、びらん形成のあと、痂皮化して約3週間で治癒する。免疫能低下例では重症化、汎発化が起こりやすい。皮疹の治癒後も、後遺症である帯状疱疹後神経痛(PHN:postherpetic neuralgia)として疼痛が数か月から数年続くことがある。
・治療:皮疹の早期寛解、急性期疼痛のすみやかな緩和、運動麻痺、眼病変、髄膜炎などの合併症の予防や治療、PHN の予防や治療などを行う必要がある。できるだけ早期に抗ヘルペスウイルス薬の内服薬や重症度に応じて注射薬の全身投与を開始する。免疫能低下例、汎発化例では点滴静注を行う。腎機能低下のある患者や高齢者では抗ウイルス薬の投与量を減量する。急性期疼痛にはアセトアミノフェン、疼痛が激しい場合には副腎皮質ステロイドや神経ブロックを併用する。なお、目安として、帯状疱疹の治療においては皮疹出現後5日以内に抗ヘルペスウイルス薬を投与開始するのが望ましいとされている。
文献)
1.浅田秀夫,今日の治療指針2016年版
2.渡辺大輔 他,臨床医薬. 28(3):161-173,2012.
3.本田まりこ,Modern Physician. 36(12):1270-1274,2016.
- 重複投与
疾患名:鼻かぜ
医薬品一般名:d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩/dl-メチルエフェドリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩