事例で学ぶ 処方チェック コミュニケーション

CASE.22

腎機能低下者において処方チェックのポイントは?

  • 精神疾患
関連キーワード:
  • 用量

難易度:★★

疾患名:てんかん
  • 医薬品販売名:ガバペン錠
  • 医薬品一般名:ガバペンチン

問題

下記の事例において、何をチェックし、具体的には何が問題であり、
疑義照会する際はどのように伝えればよいでしょうか?

患者は45歳の男性。てんかんのため病院の精神科にかかっている。患者インタビューにおいて、腎疾患があることはわかっていた。
今回から、ガバペンが追加処方された。たまたま患者が最新の採血の結果を見せてくれたので確認したところ、血清クレアチニン値が、1.47mg/dLであった。
患者に体重を尋ねたところ、55kg であり、Cockcroft-Gault 式を用いて算出したクレアチニンクリアランスは 49.4mL/minであった。

<処方1>病院の精神科

  • ガバペン錠200mg
    1回1錠(1日3錠) 1日3回 毎食後 7日分
  • デパケンR錠200mg
    1回2錠(1日4錠) 1日2回 朝夕食後 7日分
  • アレビアチン錠100mg
    1回1錠(1日2錠) 1日2回 朝夕食後 7日分

チェックすべきことは? 何が問題?
解答・解説を見る

解答

チェックポイント

・腎機能障害時のガバペンの用法・用量をチェックする。

問題点

腎機能障害患者にガバペンの通常投与量で処方されている。

疑義照会

「ご存じのように患者は腎疾患の既往があります。ガバペンは腎排泄型薬剤で血中濃度は非線形を示しますので、腎機能が悪い場合は、血中濃度が上昇し、添付文書上、クレアチニンクリアランス毎の投与量が設定されています。この患者様の場合、クレアチニンクリアランスが、50mL/minを下回っていますので、添付文書上の用法用量に従いますと、1回1錠(200mg錠)を1日2回投与から開始することとなっております。用法用量のご変更をご検討いただけないでしょうか。」
ガバペンの投与量は腎機能をチェックして決定するべきであることを認識していなかった。今回の薬剤師の提案が受け入れられ、以下の様に処方変更された。

  • ガバペン錠200mg
    1回1錠(1日2錠) 1日2回 朝夕食後 7日分
  • デパケンR錠200mg
    1回2錠(1日4錠) 1日2回 朝夕食後 7日分
  • アレビアチン錠100mg
    1回1錠(1日2錠) 1日2回 朝夕食後 7日分

まとめ

・腎排泄型の薬剤の用法•用量のチェックは必須である。

解答に必要な医薬品情報

ガバペンチンの【用法・用量】を下記に示す(抜粋)。
通常、成人および13歳以上の小児にはガバペンチンとして初日1日量600mg、2日目1日量1,200mgをそれぞれ3回に分割経口投与する。
3日目以降は、維持量として1日量1,200mg〜1,800mgを3回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は2,400mgまでとする。
一方、腎機能障害のある患者に対するガバペンチンの投与法、クレアチニンクリアランス値(CLcr)を参考としてガバペンチンの投与量および投与間隔を調節することとなっている。
詳細は最新の添付文書を参照されたい。

もっと知る!

腎機能の異なる患者20例をクレアチニンクリアランス(CLcr)により3群(CLcr:>60mL/min、CLcr:30〜60mL/min、CLcr:<30mL/min)に分け、本剤400mgを単回経口投与し、腎機能の低下が本剤の薬物動態に及ぼす影響を非盲検で検討した。その結果、CLcrの低下に伴いCmax及びAUC0-∞は増加し、Tmax及びT1/2は延長した。

表1.腎機能障害者におけるガバペンの体内動態パラメータの影響

CLcr
(mL/min)
Cmax(µg/mL) AUC0-∞
(µg・h/mL)
Tmax
(hr)
T1/2
(hr)
CLr
(mL/min)
> 60 3.17 37.8 4.5 6.5 81.7
30-60 3.52 73.5 5.1 12.8 44.7
< 30 4.93 551 7.1 52 9

(ガバペン錠インタビューフォームより引用)

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