事例で学ぶ 処方チェック コミュニケーション
CASE.18
ケラチナミンコーワ軟膏とリドメックスコーワ軟膏の混合処方は可能?
- 皮膚科系
- 関連キーワード:
-
- 軟膏混合
難易度:★★☆
- 疾患名:湿疹
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- 医薬品販売名:
(1)ケラチナミンコーワクリーム20%
(2)リドメックスコーワ軟膏 0.3% - 医薬品一般名:
(1)尿素
(2)プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル
- 医薬品販売名:
問題
下記の事例において、何をチェックし、具体的には何が問題であり、
疑義照会する際はどのように伝えればよいでしょうか?
<処方 1> A病院 皮膚科
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- ケラチナミンコーワクリーム 20%
- 25g
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- リドメックスコーワ軟膏 0.3%
- 25g (両者を混合) 1日2回 患部に塗布
チェックすべきことは? 何が問題?
解答・解説を見る
解答
チェックポイント
ケラチナミンコーワクリーム<尿素>とリドメックス軟膏<プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル>の混合が可能かどうかをチェックする。
問題点
ケラチナミンコーワクリームは O/W 型乳剤性基剤、リドメックスコーワ軟膏は油脂性基剤であり、基剤が異なる。混合により外観変化などが見られる可能性もあり、混合すべきではない。同じ基剤の外用剤への変更を検討する必要がある。
疑義照会
「ケラチナミンコーワクリームとリドメックスコーワ軟膏を混合致しますと、混合後早い段階で外観変化が認められるため、混合を避けるべきだと考えます。リドメックスコーワ軟膏のかわりにリドメックスコーワクリームを使用すればとくに問題ありません。」と疑義照会を行った。患者は混合を希望しており、<処方 2>に変更となった。
<処方 2> A 病院 皮膚科
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- ケラチナミンコーワクリーム 20%
- 25g
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- リドメックスコーワクリーム 0.3%
- 25g (両者を混合) 1日2回 患部に塗布
まとめ
・軟膏やクリーム剤の混合指示がある場合は、混合の可否の判断が必要になる。軟膏とクリームの違い等を理解し、剤形変更や処方変更等の提案をできるようにする。
解答に必要な医薬品情報
一般的に、外用剤の混合にあたっては混合後も基質の特性が維持できるように、同じ性質の基剤同士を選択する必要がある。基本的には異なる性質の基剤を混合すれば基剤の性質を損なう可能性が高い。ケラチナミンコーワクリームの基剤は油脂性基剤ではなく、O/W 型乳剤性基剤である。したがって、油脂性基剤であるリドメックスコーワ軟膏とは、混合によって外観的変化などの配合変化が起こる可能性は高い。また、性質の異なる外用剤を混合して均等に混合されたとしても、混合された軟膏は経時的に外観が変化していく可能性がある。実際に、ケラチナミンコーワクリーム (論文発表時はケラチナミンコーワ軟膏) とリドメックスコーワ軟膏の混合において、直後に著しい乳化破壊が起こることが顕微鏡観察にて確認されたとの報告がある[文献1]。白色乳剤性軟膏であるリドメックスコーワクリームとケラチナミンコーワ軟膏との混合においては、同じ基剤同士でとくに問題はない。
もっと知る!
日本薬局方16改正で製剤総則が変更され、軟膏剤とクリーム剤が分類された。軟膏剤は「皮膚に塗布する、有効成分を基剤に溶解又は分散させた半固形の製剤である。」と定義され、クリーム剤は「皮膚に塗布する、水中油型又は油中水型に乳化した半固形の製剤である。油中水型に乳化した親油性の製剤については油性クリーム剤と称することができる。」と定義された。17改正でもこの内容は踏襲されている[文献2]。ケラチナミンコーワクリームも元々は「ケラチナミンコーワ軟膏」であったが、この改正に伴い販売名が変更となった。
[文献]
1.大谷道輝他病院薬学19(6):493-502,1993.
2.第十七改正日本薬局方(平成30年10月3日アクセス)
- 重複投与
疾患名:鼻かぜ
医薬品一般名:d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩/dl-メチルエフェドリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩