事例で学ぶ 処方チェック コミュニケーション
CASE.15
2歳児へのホクナリンテープの用量は?
- 呼吸器系
- 関連キーワード:
-
- 用法・用量
- 年齢
難易度:★☆☆
- 疾患名:急性気管支炎
-
- 医薬品販売名:ホクナリンテープ ほか
- 医薬品一般名:ツロブテロール
問題
下記の事例において、何をチェックし、具体的には何が問題であり、
疑義照会する際はどのように伝えればよいでしょうか?
<処方 1> A クリニック小児科
-
- ホクナリンテープ 1 mg
- 1 枚 1 日 1 回 就寝前に胸部に貼付 5 日分
現在、カロナールシロップ、アスベリンシロップ、ムコダインシロップ、ペリアクチンシロップを服用中(服用 2 日目)
チェックすべきことは? 何が問題?
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解答
チェックポイント
・ホクナリンテープの年齢ごとの用法・用量をチェックする。
問題点
ホクナリンテープは、年齢によって使用量が決まっており、今回、患者の 2 歳という年齢や、平均体重や体型を考慮しても、1 mg/日が適応となる3 歳児の平均値をまだ満たさないことからも、過量に処方されていると考えられる。
疑義照会
「ホクナリンテープが処方された患者さんの用量についてご確認をお願いいたします。今回、ホクナリンテープ 1 mg が 1 日 1 回で処方されておりますが、添付文書では 2 歳の小児には、1日 0.5 ㎎ が用量となっておりますので、減量をご検討頂けないでしょうか?」
医師は、患児がもうすぐ 3 歳になると主張したせいで、2 歳 3 ヶ月ではなく、本当に 3 歳間近であると誤解し、3 歳の用量で処方したとのことだった。薬剤師が 2 歳に対する用量の情報提供をおこなったところ、以下の処方に変更された。
<処方 1> A クリニック小児科
-
- ホクナリンテープ 0.5 mg
- 1 枚 1 日 1 回 就寝前 5 日分
まとめ
・小児では、年齢ごとに用法・用量が決まっている場合があるので注意!
解答に必要な医薬品情報
ホクナリンテープの添付文書
【用法・用量】
通常、成人にはツロブテロールとして 2 mg、小児にはツロブテロールとして 0.5〜3 歳未満には 0.5 ㎎、3〜9 歳未満には 1 mg、9 歳以上には 2 ㎎ を 1 日 1 回、胸部、背部又は上腕部のいずれかに貼付する。
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ホクナリンテープの小児における至適用量
承認時の無作為化平行用量反応試験において、気管支喘息患児 (n=181) を対象に本剤 1 日 1 回 0.5 mg、1 mg、2 mg の 3 用量によるオープン試験(1 週間投与)が実施されている。
その結果、全般改善度における改善率から、至適用量は約 50 μg/kg と推察され、小児の各年齢における平均体重を目安に体重 15 kg 未満(0.5~3 歳未満)には 0.5 mg,15~30 kg 未満(3~9 歳未満) には 1 mg、30 kg 以上 (9 歳以上) には 2 mg で臨床効果が期待できるものと考えられている。
(文献 1 Ⅴ.治療に関する項目 3. 臨床成績(4) 検証的試験 1) 無作為化平行用量反応試験より引用改変)
男子の平均体重(文献 2 より抜粋)
・ 2 歳 3 ヶ月の標準体重:12.1 ± 1.3 kg(平均値±標準偏差)
・ 3 歳 0 ヶ月の標準体重:13.7 ± 1.5 kg(平均値±標準偏差)
急性気道感染症(文献 3)
急性気道感染症とは、急性上気道感染症(急性上気道炎)と急性下気道感染症(急性気管支炎)を含む概念であり、一般的には「風邪」、「風邪症候群」、「感冒」などの言葉が用いられている。「風邪」は、狭義の「急性上気道感染症」という意味から、「上気道から下気道感染症」を含めた広義の意味まで、様々な意味で用いられることがある。そのため、患者が「風邪をひいた」と訴える場合、その病態がどちらを指しているのか、または類似疾患なのかを区別して考えることが、薬剤師にとっても重要である。その病型分類について、表 1 に示す。感冒は、発熱の有無は問わず、鼻症状(鼻汁、鼻閉)、咽頭症状(咽頭痛)、下気道症状(咳、痰)の3系統の症状が「同時に」、「同程度」存在する病態である。一方、急性気管支炎は、発熱や痰の有無は問わず、咳を主症状とする病態である。
表.急性気道感染症の病型分類
病型 | 鼻汁・鼻閉 | 咽頭痛 | 咳・痰 |
---|---|---|---|
感冒 | △ | △ | △ |
急性副鼻腔炎 | ◎ | × | × |
急性咽頭炎 | × | ◎ | × |
急性気管支炎 | × | × | ◎ |
◎:主要病状、△:際立っていない程度で他症状と併存、×:症状なし~軽度
・小児の急性気管支炎(文献 4)
小児における急性気管支炎の原因の多くは、ウイルス感染症のため、抗菌薬投与の必要性は低く、治療は対症療法が中心となる。急性気管支炎の症状は、発熱・咳嗽・喀痰などの症状を呈する気管支、主気管支、気管の炎症性疾患であり、初期には粘膜の充血が起こり、分泌物は少ないが、炎症が持続すると粘膜腺の活動が高まり、粘液産生が亢進や気道粘液輸送の停滞により粘液(痰)を効率よく喀出できず、咳嗽が長引くことがある。その治療には、薬物療法として去痰薬や気管支拡張薬が処方され、また、安静、水分補給に加えて、受動喫煙、運動などの刺激を避ける環境整備も重要である。ウイルス性以外にも原因が細菌性の場合は、重症化しやすいので、起炎菌を検索して感受性のある抗菌薬をすみやかに投与する必要がある。
文献)
1.ホクナリンテープインタビューフォーム(2017 年 4 月 第 15 版)(2018.6.21 アクセス)
2. 日本小児内分泌学会 ホームページ 日本人小児の体格評価 1.身長と体重の標準値(2000 年の厚生労働省の乳幼児身体発育調査報告書からのデータ作成)(2018.02.27 アクセス)
3. 厚生労働省健康局結核感染症課 発行、抗微生物薬適正使用の手引き 第一版(2017.06.01)(2018.02.27 アクセス)
4. 吉原重美,今日の治療指針 2017年版,第 23 章 小児疾患 急性気管支炎
- 重複投与
疾患名:鼻かぜ
医薬品一般名:d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩/dl-メチルエフェドリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩