事例で学ぶ 処方チェック コミュニケーション

CASE.13

クラリスロマイシンを服用中の患者へベルソムラが処方されていたら?

  • 神経系
関連キーワード:
  • 相互作用
  • 併用禁忌
  • CYP3A

難易度:☆☆

疾患名:不眠症
  • 医薬品販売名:ベルソムラ錠10 mg/15 mg/20 mg
  • 医薬品一般名:スボレキサント

問題

下記の事例において、何をチェックし、具体的には何が問題であり、
疑義照会する際はどのように伝えればよいでしょうか?

40 歳代女性、A 病院神経科よりベルソムラが処方された。患者は、同病院の呼吸器科からびまん性汎細気管支炎治療のため<処方 2>のクラリスロマイシンを服用中であった。

<処方 1> A 病院 神経科

  • ベルソムラ錠 20 mg
    1 錠  1 日 1 回 就寝前直前    7 日分

<処方 2> A 病院 呼吸器科

  • クラリシッド 錠 200 mg
    1 錠 1 日 1 回 朝食後 28 日分

チェックすべきことは? 何が問題?
解答・解説を見る

解答

チェックポイント

・ベルソムラ<スボレキサント>の併用禁忌薬をチェックする。

問題点

スボレキサントは CYP3A で代謝されることから、CYP3A を強く阻害するクラリシッド錠<クラリスロマイシン>は併用禁忌である。患者は、びまん性汎細気管支炎治療のためクラリスロマイシンを服用中であり、中止をすることができないことから、スボレキサントを他の眠剤へ変更することを医師に提案する。

疑義照会

「ベルソムラを処方された患者さんですが、呼吸器科からびまん性汎細気管支炎治療のためクラリシッドを服用中です。クラリシッドはベルソムラの肝代謝を強く阻害しますので、ベルソムラとクラリシッドは併用禁忌となっています。ベルソムラを御変更頂けないでしょうか?なお、他のベンゾジアゼピン系睡眠薬の多くはCYP3A4 で代謝されますので、少なからずクラリスロマイシンの影響を受けると予測されます。CYPを介さない睡眠薬としては、ロラメット(エバミール)<ロルメタゼパム>があります。」と疑義照会したところ、以下に処方変更となった。

<処方 1> A 病院 神経科

  • ロラメット 1.0 mg
    1 錠  1 日 1 回 就寝前直前    7 日分

まとめ

・クラリスロマイシンの処方を手にしたら、相互作用の有無をチェックする。

解答に必要な医薬品情報

ベルソムラ錠の禁忌内容とその理由を下記に示す。(原則禁忌を含む)

(1) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
国内及び外国の臨床試験で、本剤投与による過敏症の副作用はみられていないが、本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者では、過敏症が発現する可能性があると考えられるため、一般的留意事項として、設定した。本剤の投与に際しては、問診等を行い、本剤の成分に対する過敏症の既往歴を確認すること。

(2) CYP3A を強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、サキナビルネルフィナビル、インジナビル、テラプレビル、ボリコナゾール)を投与中の患者
外国人健康成人を対象とした本剤(4 mg 単回)とスボレキサントの代謝酵素である CYP3A を強く阻害するケトコナゾール(400 mg 1 日 1 回経口反復、経口薬本邦未発売)との薬物相互作用成績でスボレキサントの最高血漿中濃度(Cmax)の上昇はわずかであったものの(23% 上昇)、濃度‐時間曲線下面積(AUC)は顕著に上昇した(179% 上昇)。本剤の作用を著しく増強させるおそれがあるため、設定した。本剤と CYP3A を強く阻害する薬剤を併用しないこと。
(ベルソムラ錠 IF より)

もっと知る!

ベルソムラの併用注意とその理由を下記に示す。

(1) アルコール(飲酒)
外国人健康成人 30 例に本剤(40 mg 単回)とアルコール(0.70 g/kg 単回)を併用した薬物相互作用試験では、精神運動機能の相加的な低下がみられた。本剤を服用時に飲酒は避けるようにすること。

(2) 中枢神経抑制剤
本剤は中枢神経系に対する抑制作用を有するため、中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体等)と併用した際、相互に作用を増強させるおそれがあるため、設定した。本剤と中枢神経抑制剤を併用する場合には、注意すること。

(3) CYP3A を阻害する薬剤
CYP3A を阻害する薬剤(ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等)との併用により、スボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊症等の副作用が増強されるおそれがあるため、これらの薬剤を併用する場合は 1 日 1 回10 mg への減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察すること。

(4) CYP3A を強く誘導する薬剤
外国人健康成人を対象とした 本剤(40 mg 単回)とリファンピシン(600 mg 1 日 1 回反復)を併用した薬物相互作用試験では、スボレキサントの血漿中濃度が低下(Cmax は 64 %、AUC は 88 % 低下)したため、設定した。本剤と強力な CYP3A 誘導剤を併用する場合には、注意すること。

(5) ジゴキシン
外国人健康成人を対象とした 本剤(40 mg 1 日 1 回反復)とジゴキシン(P 糖蛋白基質、治療域が狭い薬剤:0.5 mg 単回)を併用した薬物相互作用試験では、ジゴキシンの血漿中濃度が上昇(Cmax は 21 %、AUC は 27 %上昇)したため、設定した。また、スボレキサント投与時のジゴキシン濃度は最初の 6 時間以内に上昇した。本剤とジゴキシンを併用する場合には、ジゴキシンの血漿中濃度をモニタリングすること。

(6) ミダゾラム
外国人健康成人で実施した薬物相互作用試験では、本剤(80 mg 単回)とミダゾラム(2mg 単回)を単回併用投与した際、ミダゾラムの Cmax 及び AUC に影響を及ぼさなかった。
一方、本剤(80 mg 1 日 1 回反復)とミダゾラム(2 mg 単回)を投与した際、ミダゾラムの Cmax 及び AUC に影響がみられたが(Cmax 23 % 及び AUC 47 % 増加)、実際に服用する用量(20 mg)での血漿中濃度(遊離型濃度:約 2~5 nM)は CYP3A に対する 50% 阻害濃度(約 4~5 µM)と比べて約 1000 倍低いことから、CYP3A により代謝されるほとんどの薬剤について、臨床的に重大となる程度にまで血漿中濃度を上昇させる可能性は低いと考えられる。

(7) ワルファリン
外国人健康成人に、本剤(40 mg 1 日 1 回反復)とワルファリン(30 mg 単回)を併用した薬物相互作用試験では、S(-)ワルファリン又は R(+)ワルファリンの薬物動態又は薬力学には影響を及ぼさなかった。

(8) 経口避妊薬
外国人健康成人に、本剤(40 mg 1 日 1 回反復)とエチニルエストラジオール(0.035 mg 単回)及びノルエルゲストロミン(0.25 mg ノルゲスチメート単回)を併用した薬物相互作用試験では、薬物動態には影響を及ぼさなかった。
(ベルソムラ錠 IF より)

処方チェック事例一覧
服薬ケア事例一覧はこちら
  • 用法・用量
25. パロキセチンの中止指示、処方チェックのポイントは?

疾患名:うつ病

医薬品一般名:パロキセチン

  • 禁忌
24. パーキンソン病治療薬との相互作用、処方チェックのポイントは?

疾患名:パーキンソン病

医薬品一般名:セレギニン

  • 効能・効果
23. 閉経前乳がんにフェアストンが処方?

疾患名:乳がん

医薬品一般名:トレミフェンクエン酸塩

  • 用量
22. 腎機能低下者において処方チェックのポイントは?

疾患名:てんかん

医薬品一般名:ガバペンチン

  • 成分量
  • 製剤量
21. 製剤量?成分量?処方チェックのポイントは?

疾患名:三叉神経痛

医薬品一般名:カルバマゼピン

  • 休薬期間
20. UFTからTS-1への切り替え方法は?

疾患名:胃癌

医薬品一般名:テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

  • 休薬
19. リウマトレックスカプセルの休薬期間が記載されていない?

疾患名:関節リウマチ

医薬品一般名:メトトレキサート

  • 軟膏混合
18. ケラチナミンコーワ軟膏とリドメックスコーワ軟膏の混合処方は可能?

疾患名:湿疹

医薬品一般名:尿素、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル

  • 重複投与
17. ポララミン錠服用中の患者にフスコデ配合錠が処方された?

疾患名:鼻かぜ

医薬品一般名:d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩/dl-メチルエフェドリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩

  • 相互作用
  • 併用注意
16. チラーヂンS錠服用患者に鉄剤が処方された?

疾患名:鉄欠乏性貧血

医薬品一般名:レボチロキシンナトリウム水和物、乾燥硫酸鉄

  • 用法・用量
  • 年齢
15. 2歳児へのホクナリンテープの用量は?

疾患名:急性気管支炎

医薬品一般名:ツロブテロール

  • 用法・用量
  • 適応外使用
  • 予防的投与
14. 泌尿器科からのケフラールの長期処方の処方意図は?

疾患名:尿路感染症

医薬品一般名:セファクロル

  • 相互作用
  • 併用禁忌
  • CYP3A
13. クラリスロマイシンを服用中の患者へベルソムラが処方されていたら?

疾患名:不眠症

医薬品一般名:スボレキサント

  • 用法・用量
  • ドパミン受容体作動薬
  • 副作用
12. ニュープロ パッチの漸増がなく、30日分処方されたら?

疾患名:パーキンソン病

医薬品一般名:ロチゴチン経皮吸収型製剤

  • 用法・用量
11. ヘリコバクター・ピロリの除菌でタケプロンカプセル 15 mg が処方されていたら?

疾患名:ヘリコバクター・ピロリの除菌

医薬品一般名:ランソプラゾール

  • 糖尿病
  • インスリン
  • バイオ後続品
10. ランタス XR 注ソロスターのバイオ後続品への変更はOK?

疾患名:糖尿病

医薬品一般名:インスリングラルギン(遺伝子組換え)

  • 女性
  • 投与量
9. 女性患者にイリボー錠が初回から最高投与量で処方されていたら?

疾患名:下痢型過敏性腸症候群

医薬品一般名:ラモセトロン塩酸塩

  • 前立腺肥大
  • 前立腺肥大に伴う排尿障害
  • 高血圧症
8. フリバスが初回から1 日 1 回 50 mg で処方されていたら?

疾患名:前立腺肥大に伴う排尿障害

医薬品一般名:ナフトピジル

  • 最高投与量
7. グリコラン錠の最大用量以上が処方されていたら?

疾患名:2型糖尿病

医薬品一般名:メトホルミン塩酸塩

  • 用法・用量
  • 適応外使用
  • 抜歯
  • 感染性心内膜炎
6. 歯科医師から高用量のサワシリン処方はなぜ?

疾患名:感染性心内膜炎の予防(適応外使用)

医薬品一般名:アモキシシリン水和物

  • ジェネリック医薬品
  • 効能・効果
5. ディナゲスト錠のジェネリックへの変更はOK?

疾患名:子宮腺筋症に伴う疼痛の改善

医薬品一般名:ジエノゲスト

  • 用法・用量
  • 効能・効果
4. バルトレックスの単純疱疹への用法は?

疾患名:単純疱疹

医薬品一般名:バラシクロビル

  • 用法口授
  • 用法・用量
3. 用法口授の具体的な使用法は?

疾患名:湿疹,鼻炎

医薬品一般名:ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム・フラジオマイシン硫酸塩

  • ニューキノロン系抗菌薬
  • 制酸薬
  • 相互作用
2. ニューキノロン系抗菌薬と制酸薬の同時服用はOK?

疾患名:膀胱炎

医薬品一般名:レボフロキサシン,酸化マグネシウム

  • 剤形
  • 小児
1. 5歳の男児にザイザル錠の処方はOK?

疾患名:皮膚そう痒症

医薬品一般名:レボセチリジン塩酸塩

2025年の転職を目指すなら今から準備がおすすめ

薬剤師のご友人紹介

希望に合った求人を紹介します

リクナビ薬剤師の転職お役立ち情報

プライバシーマーク

リクナビ薬剤師を運営する株式会社リクルートメディカルキャリアは、プライバシーマークを取得しており、お客さまの個人情報を適切に管理し、目的に沿って正しく利用します。