事例で学ぶ 処方チェック コミュニケーション
CASE.10
ランタス XR 注ソロスターのバイオ後続品への変更はOK?
- 内分泌
- 関連キーワード:
-
- 糖尿病
- インスリン
- バイオ後続品
難易度:★★★
- 疾患名:糖尿病
-
- 医薬品販売名:ランタス XR 注ソロスター
- 医薬品一般名:インスリングラルギン(遺伝子組換え)
問題
下記の事例において、何をチェックし、具体的には何が問題であり、
疑義照会する際はどのように伝えればよいでしょうか?
<処方1> 総合病院の糖尿病内科(前回までの処方)
-
- ランタス XR 注ソロスター 450単位
- 1キット 1日1回 就寝前 10単位 皮下注射 ほか
<処方2> 総合病院の糖尿病内科(今回の処方)
-
- インスリングラルギン BS 注ミリオペン「リリー」300単位
- 1キット 1日1回 就寝前 10単位 皮下注射 ほか
チェックすべきことは? 何が問題?
解答・解説を見る
解答
チェックポイント
・ 先行バイオ医薬品は何か? 同等性、同質性が検証されたバイオ後続品であるか?
・切り替え後の用法・用量は初期用量として適正か?
問題点
インスリン グラルギン BS 注ミリオペン「リリー」(インスリン グラルギン100単位/mL製剤)は、ランタス注(インスリン グラルギン100単位/mL製剤)のバイオ後続品であり、ランタス XR 注(インスリン グラルギン300単位/mL)製剤とは単位濃度が異なり、ランタスXR注のバイオ後続品ではない。変更する場合の初期用量は、同単位よりも低用量を目安として投与を開始すべきである。
疑義照会
「本日、インスリン グラルギン BS 注ミリオペン「リリー」へ処方が変更となっておりますが、本剤はランタス注のバイオ後続品で有り、ランタス XR 注のバイオ後続品ではありません。また、ランタス XR 注本から本剤への切り替えの際には、 1 日投与量よりも低用量を目安として投与開始を考慮することとなっております。このままの変更でよろしいでしょうか?また、単位数のご検討を御願いいたします。」
医師は、本処方のバイオ後続品がランタス XR 注と同等、同質であると誤認していたとのことであった。疑義照会の結果、ランタス XR 注のバイオ後続品ではないことを認識した上で、インスリングラルギン BS 注ミリオペン「リリー」の単位を減らして開始することになった。患者には、血糖モニタリングを慎重に行い、異常があれば連絡するように伝えて欲しいと医師から薬剤師に依頼され、その旨を伝えた。
<処方1> 総合病院の糖尿病内科(変更後の処方)
-
- インスリングラルギン BS 注ミリオペン「リリー」300単位
- 1キット 1日1回 就寝前 8単位 皮下注射
まとめ
・インスリン グラルギン BS 注は、ランタス注のバイオ後続品である。
・ランタス XR 注からインスリン グラルギン BS 注へ変更する場合は単位を減らして開始し、血糖モニ タリングを慎重に行うこと!
解答に必要な医薬品情報
インスリン グラルギン 300 単位/mL 製剤から本剤に変更する場合には、「通常初期用量は、前治療のインスリン グラルギン 300 単位/mL 製剤の 1 日投与量と同単位よりも低用量を目安として投与を開始する」とされている。
※インスリン グラルギン BS 注ミリオペン「リリー」は「ランタス注」のバイオ後続品であり、いずれも単位濃度が 100 単位/mL である。「ランタス XR 注ソロスター」は単位濃度が 300 単位/mL である。
詳細は、最新の添付文書を参照されたい。
もっと知る!
<インスリン グラルギン製剤の切り替え>
ランタス XR 注と他のインスリン製剤の切り替えに関しては、ランタス XR 注の臨床試験(2 型糖尿病患者、26 週間)の後観察期間(4 週間)において、ランタス XR 注から他のインスリン製剤に切替えた患者がランタス注から切り替えた患者と比べて全体的に低血糖の発現が多く、基礎インスリ投与量が減少していたことから、ランタス XR 注の重要な基本的注意として「他の基礎インスリン製剤への切り替え時には、ランタス XR の 1 日投与量よりも低用量での切り替えを考慮するとともに、切り替え時及びその後しばらくの間は血糖モニタリングを慎重に行うこと。」とされた。詳細は、最新のランタス XR 注ソロスター インタビューフォームを参照されたい。
<先行バイオ医薬品とバイオ後続品の同一性>
バイオ後続品とは、国内で既に新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品(以下「先行バイオ医薬品」)と同等/同質の品質、安全性、有効性を有する医薬品として、異なる製造販売業者により開発される医薬品である。バイオ後続品の開発では、複数の機能部位から構成されるといった複雑な構造、生物活性などの点から化学合成医薬品と異なり先行バイオ医薬品との有効成分の同一性を実証することが困難な場合が少なくなく、後発品とは異なる新たな評価の指針が必要であることから、平成21年3月4日 「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」(薬食審査発第 0304007 号)(文献 )1が発出され、その指針にしたがって品質、安全性、有効性において、先行バイオ医薬品との同等性/同質性を検証することが求められる。
( 詳細は、国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部 バイオ後続品を参照されたい)
<薬局でバイオ後続品へ変更して調剤することは可能か?>
現時点で、医療保険制度上は、先行バイオ医薬品からバイオ後続品への変更は、先発医薬品から後発医薬品への変更の場合と同じ取り扱いで問題はない。しかし、品質、有効性および安全性において同一性が実証されていないことが考えられるため、先発医薬品から後発医薬品への変更の場合では疑義照会の必要がない切り替えのケースでも、バイオ医薬品の場合は、医師への疑義照会を行う必要があると考えられる。
薬剤師としては、医薬品毎に先行バイオ医薬品とバイオ後続品の品質、有効性および安全性の比較データや製剤特性(注射器の種類、手技方法など)、薬価などを検証して、バイオ後続品への変更が患者のメリットとなるか否かの見解を持っておくことが必要であろう。
- 重複投与
疾患名:鼻かぜ
医薬品一般名:d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩/dl-メチルエフェドリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩