今年もいよいよ本格的な夏がやってきました。外でスポーツをしたり、バーベキューをしたりと楽しい季節ですが、ついついはしゃぎ過ぎて夏バテになってしまったという方も少なくないと思います。今回は夏バテの際に有効な漢方薬を学んでみましょう。
夏バテを漢方医学的に考えると?
漢方医学的には夏バテのことを「中暑」と言います。めまいや頭痛などがよく聞かされる症状ですが、他にも夏バテの症状は多岐に渡ります。そのため、気が付かないうちに夏バテになっているケースも多いです。
漢方医学的には夏の熱と湿気によって一番ダメージを受けやすいのは、胃腸であると考えます。そのため、夏バテが悪化すると下痢、全身倦怠感などの症状も出てきますが、それらがまさに胃腸の弱りから来るものです。つまり、夏バテとは「胃腸が弱ることによる体の不調」であると考えられます。
漢方医学の考え方に、「脾は燥を好み、湿を嫌う」というものがあります。脾はこの場合には胃腸の消化吸収機能の総称を指し、胃腸は湿気を嫌うということを表現しています。梅雨や真夏の時期は湿気が高い時期なので胃腸が重く感じて食欲がなくなり、ここで無理して食べると余計に悪化してしまいます。
秋になると乾燥の季節である冬に向かっていくことで湿気が減ってくるので、胃腸の不調が回復し、食欲が増してきます。昔から、「食欲の秋」と言われますが、この湿気の減少が関わっています。さらに、日本は中国のような砂漠地区が存在する大陸の国とは異なり、海に囲まれた島国です。元々湿気自体が高いので、ここに暑さが加わると夏バテである胃腸の不調になりやすいとも言えます。
詳しく書くと、湿気が多いことによる「湿邪」と夏の暑さによる「暑邪」によって気を作る胃腸機能が弱められると「気虚」になり、水の循環がうまくいかず「水毒」になることで、全身倦怠感や食欲不振などになるという訳です。一方、夏で暑いからと冷たいものを取り過ぎたり、冷房にさらされ過ぎたりすると、寒さにやられてしまって内臓が冷えることで下痢や鼻水などの症状がでます。この状態を漢方医学的には、「中寒」と言いますが、これも夏バテの1つと言えます。
夏バテの漢方薬の選び方のポイントとは?
夏バテと一口にいっても個々人によって症状が違っていますし、まずはだいたいの目安を理解しておくと初手としての漢方薬を選びやすくなると考えられます。まずは、漢方医学診断の基本となる舌診を行うと良いでしょう。
舌には白い苔(舌苔)が付いていることがありますが、舌苔の量は胃腸にたまった未消化物の量の目安と言われています。胃腸が不調の際には消化機能が低下するため、苔が厚くなってきます。この状態なら胃腸が弱り始めているサインだと考えてください。加えて、苔が黄色くなる場合がありますが、これは胃腸の働きがさらに弱って熱がこもっている状態を表しています。
この状態を放置すると吐き気や激しい腹痛を伴う下痢などの症状につながることがあるので注意が必要です。これらの舌の状態があれば夏バテが進行していると考えてよいでしょう。舌の状態を確認した上で、さらに具体的な症状を確認すると、より適切な漢方薬が選びやすくなります。
具体的な症状として確認するポイントとしては、倦怠感を感じる部位や手足の温度があります。もともと体力がなく、寝汗がひどく、倦怠感の中でも四肢倦怠感が特に強い場合には補中益気湯が良いです。また、全身倦怠感と手足の冷えの他に、皮膚乾燥が強い時には十全大補湯が、全身倦怠感と手足のほてりがあり、さらに夏やせしている場合には清暑益気湯がそれぞれ向いています。
その他、体内の水分量も症状の確認ポイントとして挙げられるでしょう。
胃腸が弱く、胃に水がたまっている感じがあり、手足の冷えがひどい時には六君子湯が良いです。逆に水分が不足し、尿が濃かったり、口がひどく乾いていたりしている時には白虎加人参湯が向いています。また、前述した中寒のように内臓の冷えによる場合には、附子や乾姜などの体を温めるような生薬が入った、冬に使うような漢方薬を使用すると良いでしょう。
夏バテといっても、症状によって色々な漢方薬が想定されます。ぜひ自分でも勉強してみてください。
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