医薬品を売る場として、調剤薬局、ドラッグストアに続く第三の場所と言っても過言ではない「零売薬局」というスタイル。近年全国的にもさまざまな場所で見かけるようになりました。今回は零売薬局について復習しましょう。
そもそも零売とは?
まずは医薬品の分類を復習しましょう。医薬品は大きく分けて、医療用医薬品、薬局製造販売医薬品、OTC医薬品(要指導医薬品、一般用医薬品)に分類されます。その中で医療用医薬品は約15,000種類存在しており、医師が発行する処方箋に基づいて薬剤師の調剤を介して受け取れます。しかし、実は医療用医薬品には処方箋が絶対に必要となる「処方箋医薬品」と、必ずしも処方箋が必要ではない「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」とが存在します。このうち、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」は医療用医薬品の中でおよそ半数を占めているもので、薬剤師の問診などによって販売することができます。
この仕組みを「零売(分割販売とも呼ばれます)」と呼びます。この仕組みを取り入れている薬局を零売薬局といいます。零売を専門とする薬局ではなく一般的な調剤薬局でも、処方箋医薬品以外の医療用医薬品に関しては、零売が可能です。実際に保険調剤をメインとしている薬局でも零売も行っているというところもあります。
零売のメリットとは?
コロナ禍で不要不急の医療機関への受診を控えたいという世論もあり、零売が浸透するようになりました。利用した方々の多くがメリットを感じているようです。そのメリットは、
(1)費用が安く済む
(2)待ち時間がない
(3)OTC医薬品よりも効果が実感できる
あたりになるのではないでしょうか。
(1)は、零売は保険適応にならないため一見高価と感じがちですが、受診費用など医薬品以外費用がかからないため、トータルで見ると安くなることもあります。
(2)に関しては「受診して処方箋を受け取り、薬局で受付順に調剤されるのを待つ」という手間がなくなるため、医薬品を受け取るまでの待ち時間が少なくなります。
(3)は一般的にOTC医薬品よりも医療用医薬品の方が含有成分の量が多かったり、強めの成分が配合されていることが多いため、より効果を感じられることが多いです。さらに(3)と関連していることとしては、零売で入手可能な医薬品の種類が意外と充実しているという点です。コロナ禍で需要が高まった解熱鎮痛薬や風邪薬はもちろん、胃腸薬、抗アレルギー薬、ビタミン薬、漢方薬、貼付薬、塗布薬、点眼薬など多岐にわたっています。そのため、一年を通して需要があると言えます。
零売のルールとは?
零売にはルールがあります。
- 販売数量に関しては必要最小限にとどめる
- 調剤室か備蓄倉庫で医薬品をきちんと保管する
- 必ず薬剤師が調剤室で分割し、かつ、対面販売を行う
- 販売時に、「販売品目・販売日・販売数量・患者氏名および連絡先」を記録する
- 購入者の薬歴を管理する
という厳しい規制があります。そのため、まずはきちんとシステムを構築しないといけません。
零売をめぐる最近の事情とは?
前述したルールを守るだけでなく、処方箋による保険調剤を行った方が実際には利益が出るという仕組みになっていることが、なかなか零売に手を出しにくいという理由だといえます。ビジネスとして維持できなければ、医療とて続けてはいけないのです。
加えて、一部の零売薬局において「処方箋なしで病院の薬が買えます」などの不適切広告を出していたり、効能効果とは関係ない売り方をしたり(例えば医療用医薬品とビタミン薬を「美白セット」として販売していた)という不適切事案が散見されたことで、厚生労働省によって規制が厳しくなりつつあることも背景にあります。実際に零売薬局業務を閉じている企業も出てきています。
しかしながら、きちんとしたルールの下で正しく販売するならば、零売薬局はメリットがあるといえます。保険調剤に加えて零売を行っている調剤薬局も増えていているので、これまで零売をあまり知らなかったという薬剤師の方もぜひ知っておいてください。
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