花粉が多く飛散する季節になりました。今や国民病と言っても過言でない花粉症に悩まされている方は非常に多いのではないでしょうか。今回は花粉症について復習してみましょう。

花粉症とはどのようなもの?

「花粉症」は正確には「季節性アレルギー性鼻炎」と言います。アレルギー性鼻炎は原因によって2つに分類されます。家のほこりやペットの毛などがアレルゲンとなるものを「通年性アレルギー性鼻炎」と呼び、花粉が原因となるものだけを季節性アレルギー性鼻炎と呼んで区別しています。ただし、両方とも抱えている方も増えており、一年中アレルギーに悩むこともあります。花粉症の原因となる花粉は50種類以上の植物が該当すると考えられています。それぞれの花粉が飛散する時期が違うため、どの花粉に反応するのかは人によります。花粉症の原因となる植物として有名なものは、スギ、ヒノキ、ヨモギ、ブタクサなどで、圧倒的に多いのは春のスギです。アレルギー症状としては、鼻の症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)、目の症状(かゆみ、涙、充血)、皮膚のかゆみなど多岐にわたります。花粉症による受診先は耳鼻咽喉科をメインとして、眼科、内科、皮膚科などとなります。

花粉症が起こる仕組みとは?

体内に入ってきた花粉(抗原)をマクロファージが食べると、リンパ球に情報が伝達され抗体が作られ肥満細胞(マスト細胞)に結合します。再び花粉が体内に入り肥満細胞の抗体に花粉が結合することで抗原抗体反応が起こります。この反応によって、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどのアレルギー誘発物質が放出され、前述したアレルギー症状が起こるという仕組みです。つまり、アレルギー誘発物質を阻害することができればアレルギー症状は出ないということになります。

どのような医薬品があるの?

さまざまな症状を同時に抑えたいなら内服薬が適しています。内服薬は次の4種類があります。

(1)抗ヒスタミン薬
(2)抗ヒスタミン薬とステロイド薬の合剤
(3)抗ロイコトリエン薬
(4)漢方薬

(1)抗ヒスタミン薬はヒスタミンがその受容体に結合できないようにするH1ブロッカーがメインとなります。なお、ヒスタミン放出を抑制するものもありますが、効果が弱いため現在はあまり使用されていません。
(2)抗ヒスタミン薬とステロイド薬の合剤は、ほかで効果がない場合に使用する薬で、強力な抗炎症薬のステロイドによって強い効果が発揮されます。その分、長期服用は避けるべきです。
(3)抗ロイコトリエン薬は、ロイコトリエン受容体をブロックするものがメインとなります。こちらもロイコトリエンの放出を抑制するものがありますが、あまり使用されていません。主に鼻づまりに効果を発揮します。また、気管支喘息にも使われるものです。効果発揮までに少し時間がかかるという欠点がありますが、眠気の副作用が少ないです。
(4)漢方薬の代表格は、小青竜湯(ショウセイリュウトウ)ですが、漢方薬は専門家に相談し体質に合わせて選ぶものなので、実は効果をきちんと発揮させるのは難しいです。
2020年にこれまでひどい喘息や蕁麻疹に使用されてきたオマリズマブという抗体医薬が花粉症でも使用できるようになるという動きもありました。これは前述した花粉症が起こる仕組みのうち、抗体の働きを抑制するものです。今まで使用されてきた薬よりも効果が強いですが、高額なためまだ一般的ではないです。

局所的な症状だけを抑えたい場合には?

鼻や目だけに効果を発揮したい場合は外用薬の点鼻薬や点眼薬があります。点鼻薬は局所ステロイド点鼻薬と血管収縮性点鼻薬があります。ただし、後者は使用しすぎると血管が薬に反応しなくなり、逆に症状が悪化することがあるので注意が必要です。点眼薬は、抗ヒスタミン点眼薬、抗アレルギー点眼薬、ステロイド点眼薬があります。これらは単独よりも併用することが多いです。

根本的治療を行うという選択肢!

これまでの薬は症状を抑えるもので、花粉症を根本的に治すことは難しいという最大の問題点がありました。しかし近年では舌下免疫療法という根本的に治療を行う方法も出てきました。これはアレルギーの原因物質のエキスをあえて少しずつ体内に吸収させていくことで、アレルギー反応自体を弱めていくというものです。外来のみで治療を自分で進めていけるという利点がある一方、効果が出るまで2∼3年以上かかることが多く、かつ、毎日きちんと使用する必要があるという面倒な点もあります。もちろん全員に効果があるわけではないですが、7∼8割の方で効果的というデータがあります。即効性を期待せず、気長に治していきたいという方は試してみると良いかもしれません。
花粉症はとても厄介なものである一方、薬の選択肢が豊富になってきているのは確かです。今後も新薬がどんどん出てくる可能性があるため、薬剤師としても動向は注視しておいてください。

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