耳に強烈な痛みを感じる中耳炎。耳に細菌が侵入することで発症するため、抗菌剤が有効となりますが、抗菌剤を使わない場合や、漢方を使う治療法もあります。今回は中耳炎についてご紹介します。

耳の構造と中耳炎について

耳の構造は外から「外耳」、「中耳」、「内耳」に分けられますが、のどや鼻の粘膜にくっついた細菌やウイルスが耳と鼻とのどを結んでいる「耳管」を通過して耳に入り込み、中耳が炎症をおこしている状態を中耳炎と呼びます。乳幼児期には、耳管が成人に比べて水平で太く短く、容易に中耳へ細菌が侵入しやすいため、小児のほうが中耳炎になりやすく、そのほとんどが急性中耳炎です。小学校入学までの間に約6割が一度は急性中耳炎になると言われています。

鼻の中には肺炎球菌やインフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは別のもの)などが普段から存在しています。健常時には何ともないですが、風邪などのウイルス感染の後に免疫能が弱まった状態になると、これらの細菌が鼻の奥で増殖し、耳管を介して中耳の方へ侵入していくことで急性中耳炎になります。そこで炎症が生じたり、それに伴い膿が溜まったりするといった状態になります。

よく見られる症状は?

中耳に膿が溜まって腫れることで、ズキズキした痛みを伴うようになります。痛みの度合いは人それぞれですが、痛みで急性中耳炎に気がつくということが多いです。ただし、新生児においては、痛みを正しく伝えられないことが多く、しきりに耳を触りながら泣いたりする場合には急性中耳炎を疑ってもいいかもしれません。

また、熱が出たり、耳だれを起こしたり、耳が詰まっているように感じたりすることもあります。日中であればすぐに小児科や耳鼻咽喉科を受診することができますが、夜中に症状を訴えた場合で、救急にかかれないなどの際には、とりあえず解熱鎮痛剤で痛みを和らげてあげて、翌朝受診するようにしてください。

どのような経過観察を辿るのか?

急性中耳炎は、適切な治療を施せば、ほとんどの場合完治します。しかしながら、治ったと思って自己判断でやめた場合や、治療の効果がいまいちだった場合には、鼓膜の奥に液体がたまる滲出性中耳炎、症状を繰り返す反復性中耳炎、慢性化する慢性中耳炎、鼓膜に陰圧がかかってへこむことで奥の骨についてしまう癒着性中耳炎、さらに鼓膜のへこみが重度になり骨を破壊する真珠腫性中耳炎など別の中耳炎に移行してしまう場合もあります。

時には手術が必要になるものもありますので、まずは医師の指示にきちんと従って最後まで治療を完遂することが重要になります。

現在の治療ガイドラインとは?

小児耳鼻咽喉科学会の提唱する「小児急性中耳炎の診療ガイドライン(2009年版)」によると、急性中耳炎は年齢、鼓膜の所見、痛みの程度などから、(1)軽症、(2)中等症、(3)重症の3つに分類されます。

(1)軽症の場合には、なるべく抗菌剤は使用しないという方針になります。3日間は抗菌剤を使用せず、鎮痛剤だけで対処し、その後痛みがまだ続いたり、鼓膜の状態が悪化したりするなどの場合には抗菌剤を使用します。膿が溜まって腫れがひどい場合には、鼓膜を少しだけ切って膿を出すこともあります。

(2)中等症、(3)重症の場合には、まずはサワシリン®やワイドシリン®などの抗菌剤を5日間使用します。その後効果があまり見られない場合には、増量するか、抗菌剤を分解する細菌内の酵素を阻害する成分も含んでいて抗菌剤が効きにくい細菌にも効果的なラバモックス®に変更してさらに10日間様子を見ます。それでもまだ効果がない場合には、メイアクト®に変更し、さらにまだ効果がないという場合には、ロセフィン®の点滴を行うことが推奨されています。

また、最近では、漢方薬での治療も注目されつつあります。
もちろん、まず中耳炎にならないために予防することです。鼻水がたまった状態が続くとそれが中耳炎の原因にもなりえますので、鼻吸引、鼻かみ、鼻洗浄をきちんと行うことが重要になります。鼻水は身体の防衛反応の1つですので、もし中耳炎と診断された患者さんで、鼻水を止める薬を服用している場合では中耳炎が悪化する可能性があります。

例えば、普段皮膚科処方で抗ヒスタミン剤を服用している方が、今回耳鼻咽喉科で風邪症状と軽度の中耳炎という診断がなされた場合です。薬局でこういう事例に気がついた場合には、薬剤師側できちんと説明してあげると良いでしょう。ぜひ覚えておいてください。

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