胃腸炎で悩んだことがあるという方はかなり多いと思いますが、その中でもかなり厄介なものが好酸球性胃腸炎です。近年、患者数が少しずつ増えているものです。今回はこれについて見ていきましょう。

そもそもどういう病気?

好酸球性胃腸炎は、消化管に起こる好酸球性炎症症候群の一種です。好酸球性炎症症候群のうち、幼児から成人に起こるものが好酸球性胃腸炎です。これに罹患した場合、胃腸から大腸に至る全消化管に炎症が起こり、食欲不振、嘔吐、腹痛、下痢、血便、体重現象などが現れます。重症化すると消化管閉塞、腸破裂、腹膜炎にとどまらず、循環不全によるショックなどを起こして最悪の場合には死に至ることもある難病でもありますが、現時点で診断と治療の両方に関する研究は進んでいないのが現状です。その原因の一つとして、日本では患者数が多い半面、欧米においては罹患者数が少ないことが挙げられます(なお、欧米においては好酸球性食道炎が多いです)。

好酸球性胃腸炎の詳細なメカニズムは分かっていませんが、免疫機構の何らかの異常によって、消化管において炎症が起こることが原因ではないかと考えられています。
また、好酸球性胃腸炎という名前は、消化管で好酸球の著名な浸潤が観察されることから名付けられています。このことから、好酸球の活性化に関係するサイトカインが炎症に関与しているかもしれないと考えられています。もちろん、この詳細な理由も分かっていません。そして、半数を超える罹患者において再発を繰り返すともいわれています。

好酸球性胃腸炎に関する診断基準は?

好酸球性胃腸炎に関する詳細なメカニズムは分かっていないものの、診断基準は確立されています。診断指針としては具体的には次のようになります。なお、次のa.とb.またはc.を満たすものを対象とし、a.、b.、c.以外の項目に関しては参考としています。

a.腹痛、下痢などの症状を有する。
b.胃、小腸、大腸の生検で、粘膜内に好酸球主体の炎症細胞浸潤が存在している〔20/HPF以上の好酸球浸潤、生検は数カ所以上で行い、また他の炎症性腸疾患(過敏性超症候群、潰瘍性大腸炎、感染性腸炎、放射線性腸炎、悪性リンパ腫など)を除外することを要する〕。
c.腹水が存在し腹水中に多数の好酸球が存在している。
d.喘息などのアレルギー疾患の病歴を有する。
e.末梢血中に好酸球増多を認める。
f.CTスキャンで胃、腸管壁の肥厚を認める。
g.内視鏡検査で胃、小腸、大腸に浮腫、発赤、びらんを認める。
h.グルココルチコイドが有効である。

これらを見てみると、診断自体は割としっかりとできる印象を持つと思います。このことから、なおさら根治的な治療法の確立が急務ということが理解できます。
なお、重症化を診断するための、重症度分類に関しては、疾患最盛期の症状スコア(成人EGID重症度評価票)の合計点82点のうち、40点以上を重症、15~39点を中等症、14点以下を軽症とします。内容が細かくなってしまうため、今回詳細は省きます。

根本的治療法がないために生じる別の問題とは?

前述したように好酸球性胃腸炎は、根本的治療法がない疾患です。しかしながら、免疫異常が関わっている疾患であることは分かっているため、症状緩和を行うことを目指します。具体的には、ステロイド抗炎症薬を使用します。しかしながら、あくまで症状緩和を行えるだけであるため、長期にわたって使用することになり、ステロイドの副作用(糖尿病、骨粗鬆症など)が生じやすくなってしまうという方も少なくないです。ある疾患を緩和するために使用した薬で、別の疾患になり本末転倒になってしまうわけです。
ですので、薬剤師としては、好酸球性胃腸炎になっている患者さんを見かけた場合には、ステロイドによる副作用が出ていないか、もし出ていた場合には主治医に相談することを患者さんに説明する必要があります。いずれにしろかなり難しい疾患であることは変わりありません。薬剤師としてもしっかりと把握して、ぜひ自分でも勉強してみてください。

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