製薬企業において、比較的新しい職種である「MSL」が注目されています。薬剤師の中にもどのような職種かよく知らない方もいるかもしれません。今回はMSLについて詳しく見ていきましょう。

MRとの違いは?

一般的に知られている製薬企業の職種としてMRがあります。名前が似ていますが、MSLは「Medical Science Liaison」の略称で、医薬品に関する専門性の高い情報を提供する職種です。
MRとの違いが分かりにくいですが、MRは医師などに自社製品の販売促進するための情報提供を主な生業としていますが、MSLはそのような営業活動をせず、営業部門から独立した立場とされています。MSLは営業部門ではなく、メディカルアフェアーズ部門に所属し、医療施設と製薬企業の橋渡しを行い、自社製品の価値を高めます。また、論文執筆・投稿のアドバイスも行う高度な能力も求められます。

MSLが注目される背景は?

MSLは2000年ごろから募集が始まりましたが、当時はMRの採用の方が主流であったことから、MSLの求人があまり目立たず応募者も少なかったのです。しかし製薬企業の研究不正などが明るみになったことで、より専門的知識を持った人材の必要性が高まり、MSLの存在感が増してきました。また、博士課程を修了し専門的な知識があるにもかかわらず研究職への就職が厳しくなってきたことなどの背景もあり、MSLを目指す方が増え、求人を目にすることも増えてきました。元々は外資系企業が積極的に採用してきましたが、最近では日系企業でも募集が積極的に行われています。
また、オンラインでの情報提供を優先している医療施設でも、専門的知識を持つMSLの訪問を歓迎するところも少なくないです。MSLは専門家として認められているといえるでしょう。

MSLに求められる人材とは?

前述したようにMSLには専門的な知識が求められます。もちろん、製薬企業によって何を求めるかは異なりますが、概ね「医療系職種を持っている博士号取得者」が多いです。つまり医療系知識を持った上で専門性を高めた人材が重宝されることになります。
特に、「生命科学分野の博士号取得者」、「がん、認知症などの重要疾患に関する研究経験がある者」、「国際学会での発表経験を持った者や国際雑誌に筆頭著者として論文を投稿したことがある者」などが多い印象です。
薬剤師でも、病院薬剤師に従事しながら専門薬剤師取得や論文執筆の努力を経てMSLとして転職することもあります。MRから研鑽を続けてMSLになる方もいらっしゃいます。MSLは給与も高水準です。研究職の就職、特に生命科学分野の就職が厳しい昨今において、博士号を取得後にMSLになる方が増えれば、製薬企業のレベル向上にも貢献できるでしょう。
なお、薬学部を卒業してすぐにMSLとなるのは現実的には難しいでしょう。MSLを目指す薬学生の方は、博士課程に進学して博士号を取得するとよいでしょう。博士号を取得した時点で国際学会発表や論文投稿を経験していることになるからです。
製薬企業での不祥事や、薬不足の問題を解決するためにもMSLの存在は重要です。ぜひ覚えておいてください。

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