鎮痛剤のOTCの中でも不動の人気を誇る、ロキソプロフェン含有医薬品。即効性があり、かつ知名度もあるので、愛用している方も多いでしょう。ロキソプロフェン含有のOTCは、第一類医薬品に分類されており、販売時にはきちんと説明をして、経過に注意することを伝える必要があります。しかしながら、「いつも病院で処方されているロキソニンを飲んでいるから大丈夫」とか「これまでも医療用のものを飲んできたから問題ない」と言われてしまい、きちんと説明できなかったということも多いと思います。今回は、患者さんにしっかりと聞いてもらえるように、ロキソプロフェンのOTC医薬品について、いつも飲んでいても注意すべきことや種類とその特徴について確認してみましょう。

医療用ロキソニンと添付文書の効能効果や用法用量の記載が異なる

ポピュラーなのはやはりロキソニン®Sでしょう。医療用のロキソニンと成分がまったく同じで、薬学的見地からは同じものと言えます。しかしながら、OTCで販売できるようになる過程で、使用者に誤解を与えない表現であることや、誰でも間違わずに服用できる用法であることが留意されているため、添付文書の効能効果や用法容量に違いがあります
OTC医薬品としての効能効果は、頭痛、生理痛、筋肉痛、腰痛などといった比較的単純な痛みの鎮痛と、悪寒・発熱時の解熱といったものです。用法用量に関しては、1回服用量は1錠、1日服用回数は2回までが原則で、症状再発時のみ4時間以上空ければ3回目を服用できると規定されています。
一方、医療用のものは、関節リウマチや手術後の鎮痛・消炎、急性上気道炎の解熱・鎮痛などのように、より高度な症状に対して、医師の診断の下で使用されます。用法用量も1回60mg、1日3回経口投与することを基本として、疾患・症状毎に変わってきます。
仮に、医療用のロキソニンを使用することが望ましいような疾患の方がOTCを購入しに来た場合には、安易に購入を促すことは避けましょう。医師に診察してもらうまでのつなぎとしてなど、明確な状況判断ができるときには、きちんと説明した上で臨機応変に販売する方法が選択肢としてありえます。ただ、たとえこれまでに医療用のロキソニンの服用経験があったとしても、医師の経過観察が必要になる疾患は刻一刻と症状が変化しうるので、いつ薬が効かなくなったり、副作用が出てきたりするかは予想できません。ここは慎重になって受診の予定を相談してから、それまでのつなぎとして販売するようにします。やはり優先すべきは受診勧奨となります。

OTCのロキソニン®シリーズ 種類と特徴は?

ロキソニンシリーズには、ロキソニン®Sプラスとロキソニン®Sプレミアムもあり、医療用とは異なる特徴があります。それぞれみていきましょう。
ロキソニン®Sプラスは胃を守る成分「酸化マグネシウム」を配合して、胃への負担を軽減するように作られています。元々「ロキソプロフェンナトリウム水和物」自体がプロドラッグで胃への負担は少ないほうですが、それでも胃が弱い方には注意が必要です。そういった方にはロキソニン®Sプラスの方がお薦めです。ただもちろん消化器潰瘍などの重篤な既往歴がある方への提供は避けましょう。
胃粘膜保護作用成分である「メタケイ酸アルミン酸マグネシウム」を配合し、かつさらに鎮痛作用を強める鎮静成分である「アリルイソプロピルアセチル尿素」を配合したものが、ロキソニン®Sプレミアムです。胃粘膜保護作用成分も鎮静成分も含有されているため、ついつい患者さんに薦めがちです。しかし、「アリルイソプロピルアセチル尿素」には催眠効果があり眠気が起こりやすく、依存性もあるため乱用にも注意が必要です。効果だけではなく、副作用の説明もきちんとしなければいけません。

患者さんが勘違いしている点とは??

患者さんの中には、あらゆる痛みにロキソニン®Sは効果を発揮すると勘違いをして、自身の症状を薬剤師に伝えないまま、購入してしまう方も少なくありません。症状として注意すべきは胃痛と腹痛です。これらには、胃酸を抑制する薬や胃痙攣を鎮める薬が望ましいでしょう。また、2日酔い時のアルコール性頭痛にもロキソニンは不向きです。こういうときには、まずは消化薬で胃腸の活性化を促進し、代謝を早めるように伝えましょう。
薬剤師としてとくに気にかけておきたいのは、お子さんが熱を出した際に親御さんが代理で購入しに来るような場面です。お子さんがインフルエンザの際には注意が必要で、ライ症候群が起きる可能性が高くなります。親御さんが代理で購入しにきた際にはいつも以上によくヒアリングして、どういった症状に使用しようとしているのかを探り、場合によっては受診勧奨や、違う薬を薦めましょう。

ロキソニンに関する知識は、薬剤師であれば当たり前のことです。しかし、とくに多忙極める調剤業務の合間にOTC医薬品を販売する際になどに確認をついつい疎かにしてしまうこともあると思います。この機会に再度見直してみましょう。

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