飽食の時代と言われている現代において、日本やアメリカなど多くの先進国で肥満の方が増加しています。今回はこの肥満に効果のある薬について見ていきましょう。

肥満の問題点とは?

肥満は余分な脂肪が体内に蓄積されている状態で、エネルギーを貯えているという見方もでき、直接的に問題というものではありません。しかし、そのまま肥満状態が続くと2型糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病になるリスクが高まり、最悪の場合には心筋梗塞や脳溢血など重篤な疾患に罹患し死に至ることもあるので肥満状態は望ましくありません。そしてコロナ禍では肥満やその合併症の方はコロナウイルスに罹患した際に重症化リスクや死亡リスクが高まるということが示されたのです。そのことから、以前にも増して肥満対策が必要になりました。それにより、抗肥満薬の需要が高まったという背景があります。

日本ではあまり身近でない理由とは?

抗肥満薬は日本ではあまり馴染みがなく、肥満対策として薬を飲んでいるという事例は少ないです。他方、アメリカでは積極的に多くの抗肥満薬が使用されています。
保険診療が主流の日本ではがんや認知症などほかの治療薬がメインとなるため、抗肥満薬に対して関心が低いという背景があります。それに加え、コロナ禍において日本は比較的重症化患者数が少なかったこともあり肥満対策に国も前向きにはなっていないのです。
そのため、日本では医師の判断により海外で実績のある抗肥満薬をダイエットの一環として自費診療で処方することが一般的です。

実際に使われている抗肥満薬は?

日本での肥満対策(いわゆるダイエット)は食事制限や運動が主流であり、薬の使用はあまり広がっていません。漢方処方製剤の「防風通聖散(ボウフウツウショウサン)」は耳にすることもあるかもしれませんが、これは体質によって効果が大きく変わります。
現在抗肥満薬として日本で唯一認可されているのは、食欲中枢に働きかけて食欲を抑制するマジンドールですが、これも最近ではあまり見かけなくなりました。マジンドールは覚せい剤成分であるアンフェタミンと類似した特性を持っているため、依存性などが問題になりがちだからです。そのためマジンドールが保険適応されるのは高度な肥満症の方のみに限定されています。日本では保険が適応されるほど肥満の方は少ないので、結果としてあまり見かけることがありません。
つまり日本においての抗肥満薬はやはり自費診療の薬が多くなります。例えば消化管リパーゼ阻害薬であるオルリスタットや、糖尿病薬のメトフォルミンなどが自費診療で使用されています。

注意すべきこととは?

肥満対策として薬が自費診療で処方されますが、薬不足問題は考慮すべきです。現在多くの薬で供給不足が続いています。例えばダイエット目的で糖尿病薬をたくさん消費してしまうと、肝心の糖尿病患者さんに薬が渡らないということになってしまいます。ダイエット薬として効果的でも、優先すべきは本来の患者さんということはきちんと覚えておきたいものです。薬剤師としても安易にダイエットにいいと推奨するのではなく、薬不足問題なども加味してアドバイスすべきかと思います。
今後日本においても抗肥満薬はたくさん登場し保険適応の薬も増えてくるかもしれません。ぜひ今回のことを覚えておいてください。

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