専門性を今まで以上に求められることが多くなった医療業界。
医師の世界では専門医・認定医がないと、実質業務を行うことができないという場面も登場しています。
この流れは、ジェネラリストである薬剤師の世界にも広がっており、多数の専門薬剤師・認定薬剤師が存在します。
しかしながら、その多くが病院薬剤師でないと取得困難であることが実情で、薬局に勤務している方からすると、いまいちピンとこないでしょう。
今回は、病院薬剤師にとどまらず、薬局薬剤師やその他の職種にいる薬剤師でも取得可能な漢方薬・生薬認定薬剤師をピックアップ。
実際に取得し活躍している数十名の方からお話を伺いました。
そもそもどのような資格なのか??
中国の医学を参考にし、日本人の特性に合わせながら独自に発展した漢方薬。
薬剤師国家試験には数問しか出題されないため、漢方薬専門の薬局に勤めたり、自身で学んだりしない限りは、漢方薬についてはさっぱりわからないという薬剤師も、残念ながら多いと思います。
日本は今、予防医学の時代に突入してきています。
国も力を入れている中、体質改善が期待でき、「未病を治す」がコンセプトである漢方薬は、再注目されています。
ただ、ネット上でも漢方薬について多々情報がありますが、医療の専門家以外の方が情報提供している場合もあるようで、必ずしも正しくない知識が広まっていることもしばしばです。
こういった背景から、漢方薬に精通した薬剤師を養成しようと、日本生薬学会と日本薬剤師研修センターの連名で認定するようになったのがこの資格です。
常に研鑽を積むことが求められ、3年ごとに認定更新があります。
どんな薬剤師でも取得できるようにするため、比較的垣根が低く設定されています。
取得してみようと思ったきっかけとして多いのものが「取得しやすそうだったから」や「最近処方箋でも漢方薬が増えてきているのに薬剤師として漢方薬を知らないことが恥ずかしいと感じ、勉強のために取得した」となっています。
具体的な取得方法とは??
漢方薬・生薬認定薬剤師を取得するには、日本生薬学会と日本薬剤師研修センターが実施する9回の「漢方薬・生薬研修会」と、1回の薬用植物園実習を受講します。
試験に合格した後、申請することで認定証が発行されます。
この研修というのは座学の他、ビデオやインターネットでの研修なども用意されたことで、さらに受講しやすくなりました。
その3年後にやってくる更新のためには、漢方薬や生薬に関連する研修(学会など)に参加し定められた単位を取得する必要があります。
実務経験や職種を問わず、薬剤師であればどなたでも取得可能です。
取得して良かったことやメリットとは??
取得することで、薬剤師の中でも「漢方薬の専門家」という地位を確立することができます。
漢方薬専門の薬局の中には、就職後にこの資格を取得させるところありますので、あらかじめ取得しておけば漢方薬専門の薬局への転職がより有利になるでしょう。
実際の声としても、
「転職する際にアピールになった」
「漢方薬メーカーに就職する際に、人事の方からとても興味を持ってもらえた」
というものが多いです。
また、ちょっと変わった意見として、
「ある門前薬局に勤めていた際に、ひょんなことからクリニックの先生にこの資格を持っていることを話す機会があり、『今度別の場所に漢方薬を専門としたクリニックを開院するんだけれど、そこの薬剤師として来てくれないか?』と言われて転職を決めました。お給料も上がりました。」
というものもありました。
また、医師数名にも意見を募ったところ、
「専門薬剤師・認定薬剤師などを持っている薬剤師は、医師側から見ても、やはり信頼感が増すと思う」
との声が多かったです。
医師の世界では専門医・認定医の概念が当たり前だからこそ、余計このように感じるのかもしれませんね。
直接は給料アップにつながる資格ではありませんが(実は専門医・認定医もそうなのです)、予防医学全盛の時代を見越して、今から取得してみてはいかがでしょうか?
参考
公益財団法人 日本薬剤師研修センター
http://www.jpec.or.jp/