COVID-19によって、一般の方がこれまで知らなかったPCR検査が世間に知られるようになりました。PCR検査はゲノム関連の検査の一種ですが、実はゲノム関連の検査には他にも色々とあります。ゲノムの時代と言われている昨今、多くの患者さんが実際に受けていることもあり、薬剤師であれば知っておきたいところです。今回はゲノム関連の検査について紹介しようと思います。

まずゲノムについての用語を復習しよう!

ゲノムの具体的な用語を理解していないと、当然ながら、それらに関連した検査も理解できません。まずは用語を見ていきましょう。

ヒトは60兆個の細胞から出来ていると言われています。細胞の中には細胞核と呼ばれる器官があり、その中に染色体が含まれています。染色体は言わば収納箱であり、この中にDNAがしまわれているというイメージになります。そして、このDNAに、ヒトの身体を構成する最もメインの成分であり、タンパク質の設計図である、様々な遺伝子が含まれています。
なお、ヒトの場合には、染色体が全部で46個あり、最後の45個目、46個目が男女で違い、男性はXY、女性はXXとなります(性差に関連していることから、これらを性染色体と呼びます)。

また、これら46個の染色体のセットには、ヒトに必要な全てのタンパク質の設計図である遺伝子が含まれていることになり、このセットをゲノムと言います(ヒトの場合にはヒトゲノム)。遺伝子が変異し、作られるタンパク質が変わってしまうことがあるのはもちろん、DNAや染色体が変異を起こした場合にも、そこに含まれている遺伝子の変異につながることがあるので同様に問題になります。

つまり、ゲノム関連の検査は、遺伝子を検査することの他にも、DNA(場合によってはRNA)や染色体を検査することも含まれます。この観点から、用語を理解しながら、まずは、その患者さんが何を検査しているのかをきちんと理解するようにしましょう。

ゲノム検査について知ろう!

COVID-19で有名となった「PCR法」は調べたいDNAやRNAの配列情報を検出する方法で、いくつかの手法が存在しています。検体中のDNA・RNA量が微量でも検出できる一方、手法によっては、自分が調べたいと思っている配列以外を拾ってしまうことがあるので注意が必要になります。また、比較的定量性が高い反面、多検体を網羅的に調べたい場合には不適となります。

やや精度が落ちるものの、多検体を網羅的に調べたい時には、「マイクロアレイ法」が向いています。これは、DNA・RNAは同じ配列を持つDNA・RNAを結合するという性質を利用したものです。調べたい多数の配列のDNA・RNAを別々のチューブにあらかじめ固定しておいて、それらに処理した検体液を流し込み、その後洗浄します。この時に、あらかじめ固定しておいたDNA・RNAと同じ配列を持つDNA・RNAが検体中に含まれていれば結合して残ることで検出できるというものです。

他には、「シークエンサー法」という手法があります。この方法に関しては、近年さらに進化して、「次世代シークエンサー法」という新手法になっています。これにより、多種類のDNA・RNAを高速に、かつ、高精度で検出できるようになりました。ただ、得られるデータが膨大になるため、解析が大変というデメリットもあります。ただし、PCR法やマイクロアレイでは既知の配列しか検出できない反面、次世代シークエンサーでは、未知の配列を検出できるという大きなメリットがあります。つまり、病気に関わる全く新しい遺伝子を発見できるかもしれないのです。

顕微鏡を使った方法も!

前述した方法は配列を数値化することで定量的結果を得る方法でした。対して、顕微鏡を使って、定性的な遺伝子の場所や配列の空間的情報を得られる方法もあります。

一番有名なのは「FISH(florescence in situ hybridization)法」と呼ばれるものです。これは蛍光を発する物質をつけたプローブを用います。検体にこのプローブを適用して、蛍光顕微鏡で調べた際に、見たい配列のDNA・RNAが検体中に含まれていればそこが光り、どこの場所にあるかが分かるものです。蛍光の色は複数あるので、この色を変えれば同時にいくつもの配列の場所を検出することも可能になります。染色体の構造異常、病気のマーカーとなる染色体検出、染色体欠失が原因となる先天異常の検査などの染色体系の検査でよく使われます。
定量性という点では劣るものの、実際の目で見て直感的に理解しやすいというのが大きなメリットになります。その反面、普通の顕微鏡ではなく特別な顕微鏡が必要で、かつ、蛍光関連試薬が割と高価であるというデメリットもあります。

今回紹介した方法も実際はもっと細分化されており、もちろん、他にも色々な検査手法があります。ぜひご自身でも勉強してみてください。

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