コロナ禍でのセルフケア意識の向上もあり、漢方医学が見直されている昨今、他の伝統医学にも注目が集まっています。伝統医学の中で世界最古の長寿医学がインド・スリランカ発祥の「アーユルヴェーダ」です。日本におけるヨガや薬膳料理にも影響しているもので、統合医療の理解のためにも薬剤師としても少しは知っておきたいところです。今回はこのアーユルヴェーダの基礎について学んでみましょう。

アーユルヴェーダの歴史は?

アーユルヴェーダの起源は、紀元前3,000年頃に存在したリグヴェーダと紀元前1,500年頃に存在したアタルヴァヴェーダになります。

リグヴェーダでは自然科学、病理学、治療法が記載されており、一方、アタルヴァヴェーダでは自然科学、診療8科目、長寿法、強精法などが記載されています。その後の長い歴史の中で薬理学など他の医学的知識や臨床試験についての方法論なども加わっていき、ほぼ現代の形のアーユルヴェーダが構成されていきました。

また、中国、ペルシャ、ギリシャなどの各国から来た人たちがアーユルヴェーダを自国へ持ち帰っていったことで、様々な国の医学にも多大な影響を与えていきます。中国に伝わったことで中医学に影響し、それが日本に伝わり、その後独自に発展した漢方医学にも少なからず影響していると言えます。また、世界最古の医学ですが、漢方医学同様に色々な医学や科学的知見を取り入れながら進化を続けています。

アーユルヴェーダの特徴とは?

伝統医学全般に言えることですが、全身を対象とし、かつ身体も自然と同じと考えて、個別に対応するという特徴が共通してあります。つまり、病気の患部だけ治すことを目的とせず、病気の原因自体を治すことを目的としています。

治療8部門が存在し、各々の方法論を上手に組み合わせることで病気の根幹にアプローチしていきます。具体的には、治療医学として、内科学(カーヤ・チキッツァー)、小児科学(バーラ・タントラ)、精神科学=鬼人学(ブーダ・ヴィディヤー)、耳鼻咽喉科および眼科学(シャーラーキャ・タントラ)、外科学(シャーリャ・チキッツァー)、毒物学(アガダ・タントラ)の6つと、予防医学として、老年医学=不老長寿法(ラサーヤナ)、強精法(ヴァジーカラナ)の2つから成り立っています。驚くことに、ただの理論だけではなく、科学的な視点も入っていて、かなりのハイブリッド医学と理解できます。

アーユルヴェーダで一番大事な理論とは?

アーユルヴェーダの最も重要な概念は「トリ・ドーシャ(3つの体質)理論」です。<1>ヴァータ(風、運動エネルギー)、<2>ピッタ(胆汁または熱、変換エネルギー)、<3>カパ(粘液または痰、結合エネルギー)の3つの生命原理が生命現象と病気を支配すると考えます。

多くの人は、生来この3つのドーシャのうち優勢な1つないし2つのドーシャに主に影響されます。また、ドーシャは遺伝的な要素が多いため、民族によって大まかな傾向があります。さらに、このドーシャは五大(マハーブータ)で構成されており、(1)土大(プリティヴィーもしくはブーミ)、(2)水大(アーパもしくはジャラ)、(3)火大(アグニもしくはテージャス)、(4)風大(ヴァーユ)の4つに、元素の存在と運動の場を与える(5)空大(アーカーシャ)を加えた5つで構成されています。

ドーシャとマハーブータとの関係としては、<1>ヴァータは(4)風大・(5)空大、<2>ピッタは(2)水大・(3)火大、<3>カパは(1)土大・(2)水大、とそれぞれが密接に関係しています。興味深いのは、「3」、「5」という数字が漢方医学(気血水、五行説)でも共通しているところです。ちなみに余談ですが、日本人は<1>ヴァータのドーシャが多いと言われています。

アーユルヴェーダのもう1つの大切な概念!

前述したドーシャは遺伝的要素が強い先天的なものでした。それに対して、後天的な要素もあり、これを「アグニ」と呼びます。

アグニは消化力のエネルギーのことです。消化とはいうものの、口から食べた物を消化するだけでなく、心に生じた感情や考え、目や耳から受け取った情報など、外界から取り入れたもの全てが対象で、これらを完全に消化できたときに、オジャスと呼ばれる生命エネルギーが作られます。

アグニのエネルギーが弱まると、十分に消化できず、アマと呼ばれる有毒な残渣物が体内に蓄積していきます。これが溜まってくると、心身をめぐるエネルギーの流れが悪くなり、最終的に病気につながる訳です。

つまり、食生活を含めた生活習慣や精神的な感情の起伏が病気に影響すると考えていて、遺伝的要因と環境要因の両方とも大事という現代科学的な事実とも密接に結びついているから驚きです。こういう観点でも、「古くて新しい医学」と考えられますね。

漢方医学を勉強している薬剤師の方も多いかと思いますが、ぜひアーユルヴェーダも少し学んでみると良いかと思います。今回は基礎でしたが、もっと奥が深い医学になりますので、気になる方はご自身でも勉強してみてください。

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