年齢を重ねて最近何か体の調子が良くないと感じる…。40歳代後半~50歳代の女性に増えてくるのが、この更年期障害です。男性*からはなかなか理解されないばかりか、検査でも異常が出ないことも多く、ひとり辛く感じている方も少なくありません。今回はこういった、女性の更年期障害の症状に使用されるOTC医薬品について復習してみましょう。
*男性にも更年期障害はありますが、男性ホルモンの不足が原因なので女性のものとは異なります。
そもそも更年期とは??
古来より、漢方医学的に女性は7の倍数で体の状態が変化するとされてきました。それによると、42歳ごろから加齢の兆しとしての白髪が生え始めるなどが見られ、49歳あたりで閉経に至るとされています。長寿命化により、近年はこの年齢が遅くなる傾向にはあるようで、50歳代になってから閉経する方もいます。
現代医学的解釈でもこれにほぼ近く、様々な考え方があるものの、大体18歳くらいまでが「思春期」で、女性ホルモンの分泌が急に増えて体と心のバランスが崩れがちになります。その後45歳くらいまでは「成熟期」で、女性ホルモンの分泌が最大になります(この時期がいわゆる妊娠・出産の適齢期)。「更年期」は閉経したその後の時期で、女性ホルモン分泌が急に減ることで、体と心のバランスが崩れがちになります。
思春期もホルモンバランスが安定しないので、体調は崩れがちですが、ホルモン分泌が増える方向に進行することと、免疫系が高まる時期でもあるので、あまり深刻にならないことが多いです。しかし、更年期では、女性ホルモンが減る方向に進んでいくことと、高齢期を控えており、免疫系や酵素系の活性が相対的に下がってくる時期でもあるので、がんや生活習慣病のリスクも高まるため注意が必要です。
更年期障害で現れる症状は多種多様?!
更年期に現れる不調のことを更年期障害といいますが、ホルモンバランスの崩れは全身に影響を与えるので、その症状は多種多様です。
具体例を挙げてみると、精神神経症状としてイライラや不安感、運動器系症状として肩こり、消化器症状として食欲不振、生殖器系症状として不正出血、また、全身症状として頭痛やむくみなどがあります。ただし、症状の深刻度には個人差があり、自覚症状がない方もいれば、生活に支障が出るレベルの方もいます。重症度を判断する方法として、小山崇夫先生考案の簡易更年期指数(SMI)を利用した更年期障害の深刻度を数値的に判断するための更年期チェックリスト(NPO法人女性の健康とメノポーズ協会)などを活用し、セルフチェックをしてみることを、患者さんに提案すると良いでしょう。
更年期障害の症状には漢方薬がよく用いられる?
元来、更年期障害などの検査でははっきりと診断しにくい疾患は、漢方薬で対応されることが多いです。今回は、漢方処方を参考にして作られているOTC医薬品の特徴と選び方を見てみましょう。
有名なものとしては命の母®Aがあります。これは更年期特有の急な汗、イライラ・肩こりといった症状に特化したOTCです。命の母®シリーズには、命の母®ホワイトもありますが、こちらの効能・効果は月経痛などに対してで、どちらかというと更年期を迎える前までの女性(目安としては20~40歳代の女性)が対象になっています(命の母®ホワイトには血の巡りを良くする効果のあるボタンピとトウニンが含まれているなど、命の母®Aと成分も少し異なっています)。命の母®Aの成分としては、三大婦人漢方薬である当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、加味逍遙散(カミショウヨウサン)、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)に含まれる代表的生薬である、当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、茯苓(ブクリョウ)などに加えて、駆瘀血効果がある大黄(ダイオウ)、通経効果がある紅花(コウカ)、鎮静作用がある吉草根(キッソウコン・カノコソウ)などが挙げられます。この他に、ビタミンB群、細胞を正常に保つ働きを持つタウリン、神経伝達をスムーズにする働きを持つ精製大豆レシチンなどを含んでいます。ただ、大黄は緩下効果を持ち、胃腸に負担をかける場合もあるため、明らかに胃腸が弱く、過去に消化器系の副作用歴があるという方には勧めないほうが良いでしょう。
もう1つ、漢方処方を参考にして作られているOTCに、ルビーナ®があります。こちらも2種類あり、ルビーナ®とルビーナめぐり®があります。ルビーナ®の処方は閉経前後の更年期の女性に向いているのに対して、ルビーナめぐり®は、冷えを改善することも目的とし、血液の巡りを良くすることで体を温める当帰芍薬散加人参がベースになっています。ルビーナ®は四物湯(シモツトウ)と苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)の処方を合わせたものです。大黄を含んでいないので、胃腸が弱い人でも使いやすいです。
含有されている生薬の種類の数で比較すると、ルビーナ®が8種類、命の母®Aが13種類と命の母®Aの方が多いですが、生薬分量の総合量はルビーナ®が10,000mgなのに対して命の母®Aが1,782mgと、逆にルビーナ®の方が多いです。命の母®Aには生薬以外にビタミン類などが加わっており、また精神的症状の緩和を目的とした吉草根も配合されています。ですので、患者さんにお勧めする際の目安としては、身体的症状に対する効果を期待するならルビーナ®を、精神的症状をケアしていきたいというなら命の母®Aと思っていると良いかと思います。
もちろん個人差があるので、しっかりと患者さんと相談の上、OTCを提案してください。
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※製品の効能・効果、用法・用量、使用上の注意等の詳細につきましては各製品の最新の添付文書をご参照ください。