椅子に座りっぱなしのデスクワークが多い現代において、痔は意外と厄介なものです。便秘が起因となることが多いことから、近年では便秘になりやすい、女性の痔の患者さんが増えていると言われています。何せ肛門に関わる症状なので、恥ずかしくて相談しづらい…と、適切な処置ができずに苦しんでいる方も少なくないのではないでしょうか。今回は、そんな痔の際に使用するOTCを確認してみましょう。

そもそも痔の種類と原因とは??

痔は、(1)裂肛、(2)痔核、(3)肛門周囲膿腫、(4)痔ろう、(5)肛門そう痒症の5つに分けられます。また、肛門部にとどまらずその周辺に発症する症状も痔と定義されます。この5つの中でも、(1)裂肛、(2)痔核、(4)痔ろう が全体の約9割を占めています。以下、それぞれの症状について、紹介します。

(1) 裂肛

一般的には切れ痔や裂け痔と呼ばれています。便秘などで便が固くなり、その固い便が肛門を通過する際に肛門の皮膚との間の摩擦で傷ついてしまうものです。これが続くと傷がひどくなり、強い痛みや出血を伴います。

(2) 痔核

一般的にはイボ痔と呼ばれています。長く同じ姿勢で座りっぱなしになったり、排便の際に力み過ぎたりすることで、肛門と直腸周辺部に密集しているナイーブな毛細血管がうっ血してしまい、イボ状の塊になる症状です。
直腸の内部にできるものを内痔核といいますが、目に見えず痛みもほとんどないので発見するのが難しく、排便時に痔核自体が肛門外に出てきたり、痔核がやぶれて出血したりすることで気が付くことも多いです。出血便を見て大腸がんと思ったら内痔核だったということも少なくありません。
一方、肛門の外側にできるものは外痔核と呼ばれ、お尻を拭くときに違和感があったり、排便時や座っているときに激しい痛みがあったりするため、割と発見しやすいものです。痔核の多くが、この外痔核です。

(3) 肛門周囲膿腫

肛門周囲膿腫は、主に下痢が原因となって直腸から肛門にかけての粘膜が傷つき、そこに大腸菌などの細菌による炎症が起こり、膿が溜まることでしこりや腫れが現れるものです。高熱や痛みなどが発生することもあります。

(4) 痔ろう

肛門周囲膿腫を放置すると、膿が皮膚をやぶって外に流れ出しますが、この膿の流れの通り道がトンネルのような形で肛門付近に残ってしまうのが、 痔ろうです。膿が常に出るので下着が汚れてしまいます。また、膿が一時的に出切ると症状が楽になるので、治ったと思ってしまう方も多いです。しかし、症状は繰り返され、自然に根治することはないため、改善には手術が必要です。

(5)肛門そう痒症

肛門そう痒症は、主に便の付着などで肛門周りが不衛生になることで、肛門部に強いかゆみの症状がでるものです。肛門周辺を清潔にすることでかゆみは解消しますが、まれに糖尿病などや精神的ストレスにより誘発されることもあるので、原因を自己判断することは避け、受信勧奨しましょう。

痔の際のOTC医薬品とは??

(1) 裂肛と(2) 痔核がOTC医薬品で対処できるものです。ただこれらでも歩行困難であったり、出血がひどかったりする場合は、受診勧奨することが必要です。一般的に痔の対処としては外用薬になりますが、痔核の場合は内服薬もあります。
とくに痔核の場合は恥ずかしいと感じる方が多いため、外用薬購入の際にも塗り方の説明を受けることにも抵抗がある患者さんには、内服薬を提案するのが良いかもしれません。

まず外用薬ですが、軟膏、注入軟膏、座薬の3種類あります。外痔核には軟膏、注入軟膏を、内痔核には注入軟膏、坐剤が向いています。内痔核の場合に、手を汚すのが嫌、また肛門がナイーブで異物感を気にしやすい、異物感を感じると便通が誘発されやすいといった方には注入軟膏の方をすすめましょう。傾向としては、男性の方のほうが異物感を感じやすい場合が多いため、最初から注入軟膏をすすめても良いかと思います。
CMでも良く目にするボラギノール®シリーズは、この、軟膏、注入軟膏、座薬の3種類とも販売されています。そのうち、軟膏と坐剤にはボラギノール®Aシリーズとボラギノール®Mシリーズの2つがあります。この2つの違いは、ボラギノール®Aシリーズがステロイド配合、ボラギノール®Mシリーズはステロイド非配合であることです。ステロイドを気にされるかどうか、選択いただく際には確認しましょう。

内服薬に関しては、漢方薬があります。実は痔は漢方薬が得意としている疾患の1つで、乙字湯(オツジトウ)がそれにあたります。肛門のうっ血を改善する作用のほか、排便促進作用も併せ持っているので、裂肛と痔核、双方の改善に期待できます。さらに構成生薬の1つである升麻(ショウマ)は平滑筋の緊張を正常にすることにより、痔核を持ち上げる働きを持ち、痔核が外に出てこないようにしてくれます。錠剤タイプもあるので、漢方薬の独特な粉の感じが苦手だという方におすすめすると良いでしょう。
また、動物由来の成分を含んだ医薬品として、繰り返す痔核の場合が対象である、ヘモリンド®舌下錠があります。こちらは静脈血管叢エキスを含み、ここに含まれるペプチドがうっ血を改善しつつ、痔核をやわらかくして痔核を改善します。
外用薬では10日間くらい、内服薬では1か月ほど使用してもまったく改善されない時には受診勧奨することが必要です。恥ずかしいからと受診を控えてしまう患者さんもいらっしゃるので、受診が必要な目安をお伝えするようにしましょう。

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