何かと忙しい日々の中で、「疲労がたまってきていてつらい」という方も多いのではないでしょうか?疲労が蓄積すると解消するのが難しく、少し活動するだけでさらに疲れるという悪循環に陥ります。重力に逆らうように進化してきた人類は、科学的にみても疲労が溜まりやすいのかもしれません。そのため、昔から疲労回復に効果のある漢方薬も存在してきました。今回は元気になる漢方薬について見ていきましょう。

そもそも疲労とは?

疲労とは、「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態」を指します。具体的な症状には、集中力低下、眠気、だるさ、頭痛などがあります。疲労は、心身が消耗してしまっている状態であるため、休息を取って回復させる必要があります。

最近の研究において、疲労は脳の防衛反応の一種であることがわかってきました。脳からきちんと休むように命令がくるもので、本来は悪いものではありません。

ただこの疲労が少しばかり厄介なのは、「疲労していたとしても、他者には見えにくい」という点です。加えて、疲労の原因などが人によってまちまちなのも厄介な点でしょう。例えば、計算が得意な人は、ずっと計算をしてもそんなに疲れない反面、計算が苦手な人は、ある程度計算をしただけでかなり疲れてしまう、ということが起こります。
そのため、疲労の治療では、疲労の正しい原因を把握することが大事です。

漢方医学における疲労とは?

漢方医学は、具体的な症状を治すというよりは、原因自体をきちんと治すことで、根本的に疲労を改善することを目標にします。疲労は「体を流れる気・血・水の不調和」からくるというのが漢方医学の考え方です。

特に大事なのは「気」と「血」で、気や血が不足したり、それらの流れが滞ったりしている状態を改善することが、疲労回復において重要です。気や血が不足している場合、それらを補うことで症状を改善することが期待できます。

疲労に使われる漢方薬とは?

元気になる漢方薬として最も有名で、第一選択として適しているのは、気の不足である「気虚」を改善する漢方薬である補中益気湯(ホチュウエッキトウ)です。名前を見てもわかるように、「中(お腹)を補い、気を増やす(益)」という漢方薬です。疲労は、胃腸の不具合として現れやすいと考えられているため、お腹を補うという表現がよく使われます。

この補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は、夏バテや手術後の体力回復などにも使用されています。これでは少しばかり効き目が弱い場合や、皮膚がかさかさになりがちで体重減少が顕著に見られる場合には、血が不足する「血虚」の状態であると考え、十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)が適します。さらに貧血がひどい場合には、人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)がおすすめです。どちらも、名前からして元気になる漢方薬だと想像できますね。

冷えがひどく、胃腸症状が特に気になる方には、四君子湯(シクンシトウ)や六君子湯(リックンシトウ)が向いています。なお、夏バテが特にひどいという方には、夏バテ専用というのが名前からも想像できる、清暑益気湯(セイショエッキトウ)が良いでしょう。

女性の方で、産前産後に疲労が認められる、月経の際に疲労感がある、更年期障害の際に疲労があるなどの場合には、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)が良いと考えられます。また、女性の方で、疲れるとイライラしやすいなどの精神的な症状が気になる場合には、加味逍遥散(カミショウヨウサン)が適しています。

小児の虚弱体質で夜泣きや夜尿症などが気になる場合には、小建中湯(ショウケンチュウトウ)が適しています。

疲労は厄介なものですが、きちんと対処できれば、日々快適に過ごせるようになれると思います。ぜひ、元気を注入できる薬剤師になってください。

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参考
日本疲労学会.“抗疲労臨床評価ガイドライン”.(参照日2022/6/7)