老若男女問わず、多くの方が悩まされている肩こり。デスクワークで同じ姿勢のまま座りっぱなしという場合は特に肩こりで悩んでいる方が多いでしょう。痛み止めの湿布を貼るのも効果的ですが、痛みの根本を改善することを目指し漢方薬を服用するという方法もあります。今回は肩こりに効果のある漢方薬についてみていきましょう。

そもそも肩こりってどんなもの?

肩こりとは、首すじや首のつけ根あたりから肩や背中にかけて存在する僧帽筋などいくつかの筋肉が張っていたり、凝っていたり、時には痛いなどの症状が見られることを指します。時には頭痛や吐き気を伴うこともあります。

肩こりの原因には、首や背中が緊張するような姿勢での長時間の作業、猫背などの悪い姿勢、運動不足、精神的ストレスなどが挙げられます。日本人は欧米人に比べて、頭が大きい割に首から肩の骨格や筋肉が華奢なため、肩こりが起こりやすいとされています。

時には、高血圧症、眼疾患、耳鼻咽喉疾患などの随伴症状として発症することもあるので、肩こりといっても決して侮れません。このような原因疾患が存在するものに関しては、その疾患自体を治療しないと肩こりがぶり返してしまいます。

漢方医学で考える肩こりとは?

漢方医学では、肩こりの原因を次の3つとしています。

(1)気と血の循環が滞る「気滞血瘀(きたいけつお)」
ストレスなど精神的疲労が続き、気血の流れが滞ることで肩こりが起こるものです。また、目を酷使しすぎたり老眼が進行したりするなど、目の疲れによって肝血の消耗を招くことで起こることもあります。

(2)冷えることで起こる「風寒侵入(ふうかんしんにゅう)」
体が冷えることで風寒の邪気が体内に侵入してくることで、経路の流れが悪くなってしまい肩こりが起こるものです。

(3)水の巡りが滞る「痰湿凝滞(たんしつぎょうたい)」
胃腸が弱かったり、お酒や脂っこいものを取りすぎたりすることで痰湿が血中にたまり、水の代謝が悪くなってしまうことで起こります。痰湿凝滞(たんしつぎょうたい)が原因の場合、むくみやすく、雨の日に起こりやすいという特徴があります。

他にも、加齢によっておこるもの(いわゆる四十肩・五十肩)がありますが、これは加齢により肩関節周辺の組織が変化することで関節に炎症が起こることが原因と考えられています。漢方医学から見ても、肩こりはさまざまな原因から発生するもので、侮れないものであることがわかります。

肩こりに有効な漢方薬とは?

前述した各々の原因別に適した漢方薬が用意されているので、西洋医学より漢方医学の方が、よりしっかりと肩こりの原因にアプローチできるという特徴があります。

(1)気滞血瘀には、気血の循環を良くする漢方薬である逍遥散(ショウヨウサン)や冠元顆粒(カンゲンカリュウ)などが、(2)風寒侵入には、葛根湯(カッコントウ)など、体を温めて風寒の邪気を汗によって外で追い出すことで強張りを解消するものが向いています。(3)痰湿凝滞に関しては、防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)、薏苡仁湯(ヨクイニントウ)など痰湿を取り除くものが適しています。

また、加齢に伴う四十肩・五十肩に適した漢方薬も存在しています。加齢による痛みの緩和に適した独歩顆粒(ドッポカリュウ)などはいくつかありますが、各々の体質などに合わせて選ぶことが良いでしょう。なお、痛みが激しい場合には、痛みの対処を得意とする西洋医学的治療法と併用することもおすすめです。

今回取り上げた内容をみてわかる通り、肩こりは意外と厄介なものです。漢方医学と西洋医学の良いところを上手に利用し対処できるようになりましょう。ぜひご自身でも勉強してみてください。

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