厄介な片頭痛。片頭痛が日常生活に影響をきたしてしまうという方も少なくないと思います。近年、片頭痛のメカニズム解明によって画期的な新薬、抗CGRP抗体薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ)が登場しました。薬剤師であれば正しく知っておくべき知識であると思います。今回は片頭痛のメカニズムと抗CGRP抗体薬について言及していきます。

そもそも片頭痛とは?

お酒を飲み過ぎた翌日の二日酔いによる頭痛や、風邪を引いた時の頭痛など急性のものは自ずと収まりますが、病気でもないのに定期的に起こる慢性頭痛は非常に厄介なものです。その中でも緊張型頭痛や片頭痛は特に厄介です。片頭痛の罹患者数は、年間でおよそ1,000万人と言われており、男女別では女性のほうが圧倒的に多くなっています。

頭の片側(時には両側)がズキズキと痛むような頭痛発作を繰り返すというのが片頭痛の特徴で、運動などで悪化し、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。また、光や音に対して敏感になるという特徴もあります。ただし、症状にはかなりの個人差があります。

2000年代にトリプタン系製剤が登場したことで、発作が起こった後の治療は飛躍的に進みました。しかし、予防に関しては、使用される薬剤はいくつかあるものの、効果が出るまでの時間の長さ、安全性、副作用などの点から多くの課題がありました。

片頭痛のメカニズムとは?

片頭痛のメカニズムは完全には解明されていませんが、近年の活発な研究の結果、「三叉神経血管説」が有力な仮説として支持されつつあります。

三叉神経は脳内神経の一つです。三叉神経の一部分が何らかの刺激によって活性化されると、三叉神経からCGRPと呼ばれるアミノ酸の結合体が放出されます。放出されたCGRPが血管側のCGRP受容体に結合することで、血管やその周囲の組織に炎症を起こし、その炎症によって三叉神経が興奮します。この興奮が、三叉神経から視床、大脳皮質感覚野(痛みを感じる中枢)まで伝わることで片頭痛の痛みとして認知されます。

この「三叉神経血管説」から考えると、CGRPの働きを阻害することが出来れば片頭痛の痛みを止められるということです。そしてCGRPの働きを阻害するのが、今回紹介する新薬です。

新薬の優れた点とは?

前述した、CGRPが受容体に結合するのを阻害する抗CGRP抗体薬として、3つの新薬が2021年に立て続けに登場しました。「エムガルティ(一般名:ガルカネズマブ)」「アジョビ(一般名:フレマネズマブ)」「アイモビーグ(一般名:エレヌマブ)」です。

これらの新薬の利点は、副作用が少なく、効果も比較的長く持続することです。また、月1回の注射で予防効果が期待でき、注射1週間目から効果が出ると言われています。一方で、日本には、現時点では注射薬しかないため、以下のような懸念点もあります。

(1)月1回受診しなければならない

(2)使用できる患者さんに関するガイドラインに従わなければならない
※次の項目をすべて満たしている、または内服の継続が困難な方に限定される
・医師に片頭痛と診断されている
・過去3ヵ月間に片頭痛が平均して1ヵ月に4日以上発生している
・既承認の片頭痛発作の発症抑制薬の効果が不十分

(3)「エムガルティ(一般名:ガルカネズマブ)」の場合には、保険適用の3割負担でも、初月27,100円、2ヵ月目以降13,550円と高額である

上記のように懸念点はいくつかあるものの、片頭痛で悩む方の予防治療の選択肢が格段に広がったことは事実で、患者さんのQOLが上がることも確実です。費用はかかりますが、片頭痛の悩ましい痛みから解放されることを考慮すると、費用対効果としては悪くないかと思います。今後、日本でも抗CGRP抗体薬の内服薬が登場すれば、薬局薬剤師も新薬に触れる機会が増えると考えられます。今のうちからしっかりと勉強しておきましょう。ぜひ覚えておいてください。

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