11月11日は介護の日です。最近では薬剤師も在宅医療への積極的な関与をするべきと言われています。現に在宅医療に力を入れている薬局も増加傾向にあり、既に多くの薬剤師の方が何らかの形で在宅医療に関わっていると思います。介護の日を迎えるにあたって、今後薬剤師が在宅医療でできることやすべきことなどを復習してみましょう。

一番大切なのは「薬薬連携」?

在宅医療を始めようと思ったら、まずは色々な制度上のルールなどを正しく理解することが大事です。制度については、以前のコラム「在宅や介護現場で薬剤師が把握すべき事を復習しよう!」で書きましたが、医療制度だけでなく、介護制度まで絡んでくるのでより複雑になってくる場合があります。ただ制度の話ばかりに気を取られてしまうのは好ましくありません。

一番大事なのは多職種連携が必須である点です。普段薬局薬剤師をしていると、なかなか多職種の方と患者さんについて議論をする機会が少ないと思います。在宅医療を行う際には、医師・看護師・ケアマネージャーなど様々な職種と薬の専門家として議論ができないといけません。加えて、薬以外の会話や雑談までも行う必要も出てきますので、薬、時には医療以外の幅広い知識を身に着けることも大事です。

また、病院内の症例検討会や会議などで多職種連携の多い病院薬剤師も、退院してしまった後までのフォローはなかなかできないということが少なくないです。両方の薬剤師経験がある筆者が感じることですが、多職種連携として最も重要になってくるのは、実は薬局薬剤師と病院薬剤師との連携、つまり「薬薬連携」ではないかということです。

抗がん剤やハイリスク薬に精通し、褥瘡などの知識も持つ病院薬剤師と、慢性疾患の薬や漢方薬に詳しい薬局薬剤師がタッグを組めば、在宅医療の質が向上することが期待できるように感じます。まずは、在宅医療についての勉強会を病院薬剤師と薬局薬剤師が一緒に行うなどから始めていけばいいと思います。

薬剤師らしい臨床推論の方法とは?

疾患が多角化し、それに伴って薬物療法も複雑化している昨今において、薬剤師による臨床推論の重要性が叫ばれてきています。そういった中で、これまであまり患者さんに触れてこなかった薬剤師という職種でも、バイタルサインを考えようという動きにもなっています。特に在宅医療の際にはその時々の患者さんの身体状態や精神状態などをきちんと把握することが適切な服薬状況にもつながるという点でも大事になってきます。

しかし、いきなり臨床推論・バイタルサインと言われてもなかなか手につかないという薬剤師の方も少なくないと思います。特に日々の様々な業務を、少ないスタッフでこなさなければいけない薬局薬剤師にとってはかなり厳しいと予想されます。

ここで考えたいのは、薬剤師らしい臨床推論です。最近では処方せんに検査値が記載されていたり、お薬手帳に医師からのコメントや患者さんに関する情報が記載されていたりするなど、かなり臨床推論がやりやすくなってきました。しかし以前は、処方せんに記載された薬の情報と服薬指導時の患者さんとの会話から臨床推論をしなければいけませんでした。

つまり、薬剤師は本来少ない情報から、「薬の効果と副作用のバランス」という薬剤師特有の道具を使って患者さんの病態をとらえるという訓練をしてきたと言えます。臨床推論と意識はしていなくても、薬剤師は元々臨床推論を長年行ってきたと考えられるのではないでしょうか。

当たり前のことですが、多くの薬剤師が忘れがちなことです。今一度その基礎に戻ることが、在宅医療推進の今だからこそ重要であると思います。バイタルサインを取るまではできなくても、患者さんの検査値やむくみや腫れなどの身体情報と今使っている薬の情報とを照らし合わせて臨床推論を行うことが大事になってきます。

例えば、利尿剤をずっと飲んでいる高血圧の患者さんを在宅医療で訪ねた際に、これまでは寝たきりでむくみがひどかったけど、最近はやたら喉が渇くという話を聞いたとします。この場合、体に水が足りていないかもしれないと考え、もしかすると利尿剤の効果がですぎていて利尿剤を中止しなければいけないのではないかと類推できるでしょう。

もちろん検査して体内の水分状態を調べるまでは、はっきりとはわかりませんが、症状から推測できることも多々あります。そのためにはこれまで以上に、薬剤師は前述した「薬の効果と副作用のバランス」に精通することが大事です。この観点は医療系職種の中では薬剤師が得意とするところですので、これをまずは磨くとよいと思います。
在宅医療では薬剤師単独で訪問することも多いと思いますので、少ない情報から正しい臨床推論をする訓練を日頃から意識してみてください。

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