高齢社会の中で、薬剤師の職域拡大の一貫として、在宅や介護現場への参入が期待されています。
もちろんその場合には、薬剤師だけでなく、医師や看護師などによるチーム医療での強固な連携活動が求められます。
そのような中、薬のプロとしての薬剤師はどういったことを把握しておくべきでしょうか。
今回は把握すべき事柄を復習してみましょう。

まずは在宅療養開始の入り口を把握しよう!

療養開始の入り口としては、全部で5種類に分けられると思います。

薬剤師訪問後に医師からの指示が必要なもの


  1. 患者からの依頼型
  2. 薬局からの提案型
  3. 介護支援専門員(ケアマネージャー)からの提案型
  4. 多職種による提案型

薬剤師訪問後に医師からの指示が必要な場合は、まず患者宅へ訪問し状況把握します。
薬剤師がその患者さんの治療に参加する必要があると判断した場合には、薬剤師が訪問する意義や目的を具体的に説明します。
その後、医師に状況を報告し、訪問の必要性を伝えた上で、「訪問指示」を出してもらいます。
最終的に、患者さんの同意を得て、「訪問薬剤管理指導(居宅療養管理指導)」が始まります。

薬剤師訪問の前にあらかじめ医師の指示が出ているもの


  1. 医師からの指示型

薬剤師が訪問することはかわりませんが、あらかじめ医師からの指示の下で行われるので、訪問後に再度医師に情報提供をする必要はなく、患者の同意を得て開始となります。
いずれにおいても注意すべきは、「在宅患者訪問薬剤管理指導」を行うためには、保険薬局から地方厚生局にあらかじめその旨を届け出なければならないことです。

あと、意外と盲点ですが、対象となる患者さんが要介護・要認定者の場合には、医療保険制度ではなく介護保険制度が優先となります。
そのため、まず介護保険の被保険者番号を確認することも必要です。

患者さんの身体状況把握は、服薬支援には重要となる!?

薬剤師が主役になれるのは服薬支援だと思います。
それには患者さんの身体状況が大きく関わってきます。
服薬コンプライアンス向上のためにも是非把握しておきたいです。

筋力や運動能力低下している場合

薬をシートから出せない、坐剤挿入ができない、軟膏をうまく取り出せないなどといった状況では、一包化や調剤方法の工夫、または自助具の活用などの対処法が上げられます。

寝たきりで残薬がたくさん出てしまっていたり、飲み間違いが著しい場合

服薬カレンダーを利用し、かつ、介護者や看護者へもきちんと服薬指導することが重要です。
ちなみにこれらの方法は認知症などの患者さんの場合にも応用できます。

嚥下障害の場合

小さいサイズの錠剤や散剤に変更したり、薬自体にゼリーなどでとろみをつけたり、ひどい時には経管投薬を行ったりすることが対策となります。

視覚障害の場合

見やすい字で書いたり、点字・知覚シールを用いたり、また、聴覚障害の時には詳細な説明が書いてある書面や手話で説明したりすると良いでしょう。
これらは失語症の患者さんにも応用できる方法だと思います。

対処法としてはどれも当たり前のことですし、どの状況も実際に多く見受けられますが、同じ症状であっても患者さんによって個人差があるのでその時々での柔軟さが求められるのは当然です。
どんな状況であっても一番大切なのは、薬剤師自身が一人一人の患者さんときちんと向き合うという姿勢かと思います。

今後は薬剤師も調剤室にこもるのではなく、積極的に患者さんと対話する時代になります。
是非今回のことを参考に、調剤室を飛び出し、患者さんと積極的に向き合う薬剤師を目指してみてください。