超高齢社会に突入した我が国において、認知症は年々増加傾向にあります。薬剤師をやっているなら必ず一度は認知症患者さんに投薬する場面が出てくるものと思います。認知症の症状は千差万別なのに加えて、認知症の患者さんはたくさんの薬を飲んでいる傾向もみられるようです。在宅医療に薬剤師の進出が増えていくなか、今後はこれまで以上に認知症の患者さんにアプローチする機会も増えます。今回は認知症患者さんへの服薬指導のコツを確認してみましょう。

認知症の種類と症状とは??

認知症には様々な種類が存在し、アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型などがあります。その中でも、患者さんの割合が多いのがアルツハイマー型です。薬剤師の中にも認知症=アルツハイマー型と思い込んでいる方がいるかもしれませんが、他のタイプもあり、治療法も様々です。加えて、症状自体も患者さんによって多岐に渡っています。強いて一般化するとしたら脳の認知領域に関する機能不全なので、失認、失行、言語障害、見当識障害、記憶障害などが考えられます。投薬時などに患者さんが、シャツのボタンを掛け間違えていたり、靴下の色が片方ずつ違ったり、いつもと違った表情であったりすることがないか確認してみましょう。これらが見られたら認知症を少し疑いはじめてもいいかもしれません。また、認知症はただ認知能力が欠損するだけでなく、性格が変わってしまったり、不眠が続いたりするという症状も併存することがあるので、この点にも注意が必要です。例えば、普段几帳面の方が急に大雑把になったなどの変化が見られたら注意が必要です。

認知症患者のために薬剤師にできること

上記で述べたような認知症の症状自体に、患者さん自身が気付いていない場合もあります。早期発見・早期治療で、認知症の進行を食い止めることができます。薬剤師としても少しでも早く発見することが重要です患者さんの発言や行動に気になることがあれば、薬歴とは別に患者さんの気になるポイントをリスト化してスタッフ間でシェアすると良いでしょう。特にかかりつけ薬剤師になった際には、その患者さんのリストを自宅に伺う際に持っていき、その都度変化点をアップデートしておくことをおすすめします。また、前述したように、患者さん本人に自覚がない場合は、ご家族やヘルパーに確認したり、少しでも変化がみられたらシェアしたりすることも必要です。ここでのポイントはなるべく患者さんご自身にも立ち会ってもらい、現状をきちんと伝えることです。もちろん、患者さんの中には取り乱す方も多いので、患者さんの立場にたって、当意即妙な対応が大事です。このような対応は、今後人工知能が医療の現場に出てくる中で、人にしかできない貴重な能力です。今後生き残っていく薬剤師になるという点でも、認知症の患者さんに病状を上手に伝える能力が必要になってくることを頭に留めておいてください。

最も大事な服薬コンプライアンス!!

認知症治療が進行しないようにするには、しっかりと服薬を継続することが大事になってきます。そしてこれこそが薬剤師が一番活躍できる場面です。認知症の患者さんは特に服薬コンプライアンスが悪くなり、その結果気がつかないうちにさらに認知症が進んでしまうということになりかねません。服薬コンプライアンス改善のためにも、薬剤師を中心として、ご家族、訪問看護師、ヘルパーなど患者さんをサポートするメンバーで服薬チームを作ることがおすすめです。その際にはもちろんコミュニケーション能力やリーダーシップ能力が求められるので、これまで以上にこういった能力を磨く必要があります。
認知症の患者さんへの対応を磨けば、今後、人工知能に負けない、生き残っていける薬剤師になれるものと期待できます。ぜひ積極的に動いてみてください。