以前紹介した総論に引き続き、今回は高齢者医療における具体的事例や解決策を紹介します。
超高齢社会を迎えつつある日本において、薬剤師も積極的に関わっていくことが求められています。
そういった中で押さえておきたい基本的なことと、盲点となっていることを中心にまとめます。

加齢に伴う薬物動態変化をまずは押さえてみよう!

まずは常に意識しておかなければいけない基本事項を復習します。
高齢者では胃液の分泌量が減少しています。
それに伴い、胃液のpHは上昇してアルカリ側に傾いています。

また、胃の運動も弱まっていますので、小腸への移行も遅れています。
ですので、溶解と小腸への移行が大切になるカプセル剤には特に注意が必要になります。
特に唾液の量も減っていますので、カプセル剤が食道にひっかかってしまう事も多く、若者より水を多めに飲む事が大事です。

また、各種臓器の重量が減少しているので、高齢者では身体組成が変化しています。
それに伴い、薬の分布にも影響が出てきます。
加えて、薬物代謝を考えてみると、高齢者の薬物代謝への影響要因として、


  1. 代謝酵素量減少または酵素活性低下
  2. 肝血流量・肝抽出率低下
  3. 腎機能低下による代償的肝代謝増加

の3つがあります。
薬によってこれらとの関わりがちがってきますので、この3つを意識しながら投薬を行うのが良いです。

意外と忘れがちな事柄を整理してみよう!

高齢者医療の中で忘れがちなのが新剤形に対する深い理解です。
近年は製材技術の進歩が著しく、次々と新しい剤形が登場してきています。
名前は聞いたことがあるし、製品情報もしっかりと読んでいるから大丈夫という人も多いかと思います。
しかしながら、ここで一つ盲点があります。

実は、調剤や販売はしたことがあるけれど、実物を見たり触ったりしたことがある人が意外と少ないという事実があります。
それでは患者さんが薬について実際にどんなことを困っていて、またどういう対処ができるのかということを推測できないと思われます。

例えば、口腔内崩壊錠をまちがって飲み込んでしまうなど、特に高齢者は既存の剤形の薬は飲み慣れていても、新しい剤形への対応が難しい人も多いです。
新しい剤形の薬が出たら、実際に見て、触ってみることに加え、内服薬なら味や匂いなどを、また外用薬ならその感触や張りやすさやはがしやすさ、塗った際のべとつき具合や落とし方などを確認しておくと良いかと思います。

最近では、服用しづらい薬に関しては、最初からゼリー剤として販売されているものも増えてきました。
特にこのゼリー剤に関しては、後発品メーカーが積極的に工夫をして特徴を出しているのも興味深い点でしょう。
まだまだ高齢者医療においては注意すべきことはたくさんあると思います。
今回の話を参考に、自分でも工夫点を是非考えてみてください。