近年、人工知能の進歩の勢いはすさまじいものがあります。この動きは医療業界においても例外ではありません。人手不足解消につながる反面、人間から仕事を奪うという面も否定できません。一部の予測によると、医師や薬剤師も仕事を奪われる可能性のある職種であると考えられています。このような時代の中、今後生き残っていくためにはどういった薬剤師になればいいのでしょうか。今回は人工知能の特徴を理解しつつ、人工知能に負けない薬剤師像を探りましょう。

そもそも人工知能って何??

人工知能は、人間の脳の一部の能力を、外部装置であるコンピューターで再現したものです。脳の一部の能力をコンピューターに任せることで、よりスピーディに仕事ができるようになります。
スマートフォンが普及した現在では、誰しもがこの人工知能を搭載した端末を持っているといっても過言ではないかもしれません。我々が日常的に行っているスマートフォンで調べるという作業。検索するたびに検索者独自の検索方法を学習していくので、その人独自のスマートフォンが出来上がっていき、各々の生活様式に合わせた検索に対応できるようになります。これこそまさに人工知能の能力の1つである、次第に学習していくというものです。以前から、記憶させたり、プログラミングによってゲームやアプリを作ったりするということはでましたが、人工知能はそれに加えて学習して進化していくのです。
複雑そうに思われますが、メカニズムは意外とシンプルで、統計学手法のうちの回帰分析というものを使っているものがほとんどです。回帰分析とは簡単にいうと、過去のデータからそのデータ群の傾向をあらわす関数の式(Y=aX+bなど)から、変数の相関関係を導き出すものです。この式が導けてしまえば、今後何かの現象(X)が起こった時にこういった結果(Y)になると予測できるようになります。中学高校で習ってきた関数の知識の応用です。もちろん絶対そうなるとは言えないところが統計学を用いる限界であり、人工知能の限界とも言えます。

人工知能の得意領域とは

前述したように、回帰分析に基づいている人工知能は傾向が予測しやすく、機械的作業には実力を発揮しやすいのですが、予測困難な現象には対応が難しくなります。例えば、過去のベストセラー小説を学習させてそれを参考に小説を書くこと自体はできますが、その小説が人々の感動を呼ぶかどうかは話が別です。何故なら、感動するポイントは人によって異なり、どういった文章で感動するかは実際に読んでみないとわからないからです。
薬剤師業務で言うと、処方箋入力や調剤業務はある程度の手順が決まっている業務なので、人工知能は得意としています。処方解析もある程度得意です。ただ服薬指導や在宅医療などは実際に患者さんを目の前にしてみないと状況が分からず、人工知能では限界があります。また、検査値に関しても、人工知能は検査値の各数値から疾患の可能性があることまでは導けますが、検査値こそ日々変化しているので、やはりその場の状況によってしか最終的な判断はできません
これらを加味すると、調剤、病態予測までは人工知能ができますが、最終的な投薬や病態決定などは人間にしかできないといえます。これまでは正確な調剤ができることが薬剤師として重要なことでしたが、今後はより服薬指導を当意即妙にできるかが鍵となるでしょう。必要なのは、患者さんの話の行間を読む力、また表情から状態を察する力といったコミュニケーション能力です。

人工知能に勝つためには??

そしてこれから意識したいのは、人工知能に太刀打ちするためには、その強みや弱みを理解するために、人工知能自体の仕組みやその根本となっている統計学を勉強する必要があるということです。また、様々な方と交流したり、色々なことにチャレンジしたりといった日々感動するようなことを積極的に行うようにするなど、人間にしかできない能力(感性)を磨く必要があります。その上で、患者さんの本当の気持ちを察するためには心理学の知識も必要でしょう。最近では薬学部のカリキュラムにこれらが入ってきていますが、今現場で働いていらっしゃる方々の頃はあまりなかったと思います。
ぜひ、医療の先を見据えて、人工知能に負けない薬剤師になれるよう、勉強してみてください。

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