ストレス社会と言われる昨今、睡眠薬を服用したことがあるという方も多いと思います。しかし、間違った服用方法や何種類かを同時に服用している方もいます。薬剤師にはそのような使用を止める役割があります。そのため薬剤師自身が睡眠薬を正しく理解している必要があります。今回は睡眠薬について復習してみましょう。

そもそも睡眠のメカニズムは未知?

睡眠については未だに世界中で研究されており未知の世界ですが、これまで多くの知見が出ており、それに基づいてさまざまな睡眠薬が作られています。
しかし、まだ詳細に分かっていないということは、今使用されている睡眠薬には副作用のリスクがあるといえます。そのため、薬剤師としては「睡眠には未知の部分が多い」ということと、「現在の睡眠薬を使用する際には注意が必要」ということをしっかりと理解しておく必要があります。きちんと理解できていれば、正しく睡眠薬を使えます。
現在の睡眠薬は睡眠に関与する体内物質に作用するものが多いので、この理解がまずは重要です。

睡眠に関わる体内物質とその違いとは?

睡眠のメカニズムは未知であるため複雑だと予想されますが、睡眠に関与する体内物質は分かってきています。
一日を考えてみると、寝ている状態(睡眠状態)と起きている状態(覚醒状態)とに分けられます。睡眠状態にはメラトニンやGABAなどが関与し、覚醒状態にはセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン、アセチルコリン、ヒスタミン、オレキシンが関与します。この中で、睡眠・覚醒のリズムを調整するのはメラトニン、オレキシンです。
睡眠薬には、〈1〉覚醒状態をやわらげる(脳の働きを低下させる)もの、〈2〉睡眠状態を強調させる(自然な眠気を増強させる)ものの2種類があります。さらに〈1〉覚醒状態をやわらげるものには(1)バルビツール酸系、(2)ベンゾジアゼピン系、(3)非ベンゾジアゼピン系があり、〈2〉睡眠状態を強調させるものには(4)メラトニン受容体作動薬、(5)オレキシン受容体拮抗薬があります。
主に使われているのは〈1〉覚醒状態をやわらげる(2) ベンゾジアゼピン系、(3) 非ベンゾジアゼピン系ですが、最近ではより安全性が高い〈2〉睡眠状態を強調させるものに置き換わってきています。

最近の傾向は?

現在主流なのは(2) ベンゾジアゼピン系です。(1) バルビツール酸系には劣るものの、それなりに強い効果が期待できると同時に、(1) バルビツール酸系よりも安全性が高いので広く使われてきました。しかし最近の研究で(2) ベンゾジアゼピン系は「認知症のリスクを高める可能性がある」と報告されているため、結論付けはされていませんが、認知症のリスクが上がる可能性があるということが分かった以上積極的には使いにくくなってきました。その結果、安全性がより高い〈2〉睡眠状態を強調させるものの方に転換されつつあります。
ただし、〈2〉睡眠状態を強調させるものに関しては効果が弱いので、眠れなくなったという意見も出てきました。ですので、〈1〉覚醒状態をやわらげるものをずっと使用している患者さんは量を徐々に減らすと同時に、〈2〉睡眠状態を強調させるものを併用し、最終的には〈2〉睡眠状態を強調させるものだけにするという手法が多く取られています。もちろん個人差があるので、この方法は難しい場合もあります。このような処方せんを薬局に持ってこられた患者さんには、特にしっかりと状況をヒアリングすることが必要です。

軽度不眠の場合は?

最近少し不眠気味だけれど、重症でない(普段はきちんと眠れているけど一時的に眠りにくい)場合は、1.睡眠改善薬、2.漢方薬が選択肢になります。どちらも薬局などで手軽に購入でき、安全性が高いので試しやすいと思います。

1. 睡眠改善薬は、アレルギーの薬の眠気の副作用を利用したもので、ヒスタミンに作用します。ただし、長期服用によって耐性ができやすいので、短期的な服用向きであることに注意が必要です。

2. 漢方薬は、体質などにもよりますが、抑肝散(ヨクカンサン)、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)、加味逍遙散(カミショウヨウサン)、酸棗仁湯(サンソウニントウ)など精神を鎮めるための漢方薬がよく使われます。

睡眠は奥が深いため、薬剤師としては睡眠の利点を最大限引き出せるように導きたいものです。ぜひ自分でも勉強してみてください。

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