普段の何気ない生活の中でいつの間にかできる口内炎。できる場所が悪いと食事するときに痛みがひどくなったり、しゃべりにくかったりと意外と厄介なものです。口内炎くらいでいちいち病院へ行くことは少ないので、OTC医薬品で対処する方が多いと思います。今回は口内炎のOTC医薬品について確認してみましょう。
そもそも口内炎ってどういった病態??
口の中のあらゆる場所にできる可能性がある口内炎。主な原因としては、(1)ビタミン不足、(2)疲労やストレス、(3)ウイルス(主にヘルペスウイルス)感染、(4)噛んでしまったなどの物理的刺激などが挙げられます。薬局に来る患者さんではまだ少ない事例ですが、抗がん剤治療をうけている患者さんでは、抗がん剤の副作用の1つとして出てくることもあります。このように原因が様々なので、口内炎自体の種類も、(a)アフタ性、(b)カタル性、(c)ヘルペス性、(d)カンジダ性など多岐にわたります。
(a)アフタ性
アフタ性は口内炎の大部分を占めます。白か黄色のくぼみの周りに赤い炎症が見られ、境界線がわかりやすい特徴があり、食べ物がしみるといった症状があります。1~2週間程度で自然に治りますが、早く治したいというときにはOTC医薬品での対処が可能です。
(b)カタル性
カタル性は熱いものを食べるなどの物理的刺激により炎症が起こるもので、赤くはれ上がった感じになり、唾液が増える、という特徴があります。傷を受けた部分に細菌が繁殖することが主な発症原因と考えられているため、きちんと受診をして、抗菌剤入りの医薬品を処方してもらった方が早く治りやすいでしょう。
(c)ヘルペス性
ヘルペス性はヘルペスウイルスが原因となり、ストレスで抵抗力が落ちてきたときに発症することが多いです。具体的な症状としては、痛みや複数の水疱ができるといったことが挙げられます。こういった症状が見られたときには受診をするように指導します。
(d)カンジダ性
カンジダ性はカンジダ菌というカビが増殖することで起こります。症状としては痛みがあまりないことが多く、口の中に白い苔のようなものが見られることがあります。これも受診して抗真菌剤の処方を受けることが必要です。
(a)アフタ性に関しては、OTC医薬品での対処可能ですが、他の種類に関しては別の疾患が隠れていたり、ウイルスなどがいたりするので、OTC医薬品での対処ではなく、きちんと受診勧奨することが必要です。まずは上記のような、口内炎の種類を選別できる能力を身に付けましょう。
実際のOTC医薬品を選ぶときの注意点とは??
前述した(a)アフタ性の口内炎で、かつ他の持病や発熱がなく、口内炎が1カ所に限定していて口腔内以外に広がっていない場合には、OTC医薬品での対処可能です。ステロイド成分を含むものをメインとして抗炎症成分(グリチルリチン酸、トラネキサム酸)、ビタミンB類を含んだものもいくつかありますが、ここでいくつか注意があります。
1つ目の注意点は、医療用医薬品と同じブランド名でも違う成分が含まれているという点です。例えば、ステロイドを配合しているものとして医療用のデスパコーワ口腔用クリームがありますが、同じデスパシリーズでOTCの新デスパコーワにはステロイドは含まれていないため、患者さんにもきちんと説明することが必要です。
2つ目は、前述した医薬品は、免疫抑制作用を持つので、前述の(b)カタル性、(c)ヘルペス性、(d)カンジダ性の口内炎の方が使用してしまうと、かえって悪化してしまうことがあるという点です。こういった理由からも、具体的な商品を覚えること以上に、どのタイプの口内炎なのかを薬剤師が判断できるようになることが大事です。
その他の注意点としては、チョコラBB®プラスなどのビタミンを含む内服薬は、徐々に改善していくという特徴があるため、きちんと継続服用することが大切です。数日で服用をやめてしまうことがないように説明しましょう。また、半夏瀉心湯や黄蓮解毒湯などの漢方薬も口内炎に効果が期待できます。しかし、各自の証によって使い分けるものであることと、比較的高価であるため、症状や体質をきちんと患者さんから聞いてから選ぶことが大事です。意外と薬剤師の中でも知らない方もいるのですが、口内炎パッチ大正Aは、紫根から抽出したシコンエキスが配合された漢方薬成分のパッチです。漢方薬成分のOTCで治したい、という患者さんにおすすめすると良いでしょう。
口内炎は一見単純ですが、種類を見極めることが必要であり、奥が深いです。ぜひ復習してみてください。