料理をする際に使用されるスパイス。日本料理ではあまり使われることがないですが、世界中の料理で幅広く使用されているものです。一般的には匂い消しや風味づけなどに使われることが多いですが、実は薬膳的な効果もあると考えられています。今回は、武政三男氏著の「スパイスの科学」(2015)を参考にして、スパイスに期待される効果についてみていきたいと思います。

そもそもスパイスの定義って??

そもそもスパイスとは、なんでしょうか?香辛料、薬味、香料、調味料…などなどいろんなイメージが思い浮かぶと思いますが、これというものがないですよね。スパイスは和食では馴染みがないこともあって、実は、スパイスを的確に表現する日本語は存在しないのです
では海外ではどうでしょうか。国によって異なり、共通の定義となるとやはり難しいようです。武政氏の著書では、あえて定義すると、「主として熱帯、亜熱帯、温帯地域に産する植物の種子、果実、花らい、柱頭、葉茎、木皮、根塊、などから得られるもののなかで、刺激性の香味をもち、飲食物を風味づけたり、着色したり、食欲を増進させたり、消化吸収を助けたりする働きのあるものをスパイスと総称する」とあります。「刺激性の香味をもち、飲食物を風味付けたり、着色したり」の部分はイメージ通りですが、この定義で着目すべきは、「食欲を増進させたり、消化吸収を助けたりする働きがあるもの」の部分です。つまり、もともと薬膳的な効能も期待されているということです。薬剤師としては、ここは注目すべき点ですね。

食品へのスパイスの効果とは??

スパイスの食品への効果としては、抗酸化効果があげられます。油脂を含む食品を長く保存しておくと空気中の酸素によって酸化が進み、色や味が変化するだけでなく、蓄積された過酸化物の影響で食中毒や下痢などを引き起こすことがあります。スパイスはこれを防ぐために利用できます。実際、加工食品の酸化防止剤として、スパイスの抽出成分が使われています。具体的には、下記のようなものがあげられます。

マヨネーズ・サラダドレッシング クローブ・セージ など
ポテトチップス クローブ・シナモン・ジンジャー など
ハム・ソーセージ クローブ・ローズマリー・シナモン など

これらに加えて、クローブやセージには殺菌・抗菌効果もあります。ただし、注意すべきはこれらの効果は即効性や確実性が担保されているものではなく、過度に期待することは避け、きちんとした保存状態を積極的に確保するべきことです。

薬膳料理的な効果とは??

スパイスの薬膳的な効果ですが、例えば、スタミナ食品としても知られるガーリックには風邪の予防が期待されます。それは、ガーリックの生の状態であるにんにくの有効成分であるアリシンには、殺菌・抗菌・抗ウイルス作用があるためです。このアリシンは大変不安定な物質で調理中に別のイオウ化合物に変化してしまいますが、このイオウ化合物にもこの効果は認められています。ですので、乾燥した状態であるガーリックの定期的な摂取でも、風邪の予防につながることが期待されます。
実は、日本では薬機法で規制されていて、スパイスは薬理学的効能効果をうたってはいけないことになっています。スパイスの効果に関する科学的エビデンスがしっかりとしていないためです。

ですが、ガーリックのような風邪予防や、食欲を増進させたり、消化吸収を助けたりする効果は期待できるので、料理をする際に、意識してみるといいかもしれませんね。