近年、予防医学の重要性が叫ばれる中、特定保健用食品(以下、トクホ)への注目が増しています。CMで見かける頻度も多くなってきました。薬剤師の皆さんはトクホについて相談を受ける機会も増えてきたかもしれません。今回は、そんなトクホについて薬剤師が知っておきたいポイントをまとめてみました。

特定保健用食品(トクホ)は医薬品とどう違う??

医薬品は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)によって、「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物」(第2条第2項より抜粋)と示されています。つまり、病気の方が治療をする、あるいは病気にならないよう予防をするために服薬するもので、健康な方は予防以外の目的で使用しません。また、同法により「日本薬局方に収められている物」とも定められています。日本薬局方は厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定めた医薬品の規格基準書ですので、これに収められるには明確なエビデンスが必要とされます。医薬品の許認可は厚生労働大臣が行っています。

一方、トクホは、例えばおなかの調子を整える、血中コレステロールを正常に保つのを助けるといった、特定の保健の目的に役立つ食品のことです。つまり、医薬品との最大の違いは、主に健康な方の使用を前提としていることです。トクホのエビデンスについては、有効性・安全性の審査はあるものの、医薬品の臨床試験のような厳しい試験は必要とされていません。食品衛生法や健康増進法により規制を受け、許認可は消費者庁長官が行います。ニュースでトクホのことが話題になったときに、厚生労働省ではなく消費者庁がコメントを出すのは、このように認可する省庁が異なるためです。

特定保健用食品(トクホ)の分類は??

医薬品とトクホの違いがわかったところで、次にトクホの分類について説明したいと思います。

トクホはこれまで説明したように、医薬品ではなく食品の仲間に入ります。食品というのは実は大きく2つに分類されていて、一般の食品と、「保健機能食品」という種類があります。一般の食品は、当然医薬品のように効能・効果は謳ってはいけないことになっています。しかし、食品の中でも、国が定めた基準を満たしたものに関しては、機能性の表示を行えるようになりました。これらが「保健機能食品」です。トクホはこの中に含まれ、国による個別の審査で許可され、保健の用途表示ができるものです。トクホのマークは皆さんも目にしたことがありますよね。

ちなみに、国が定める特定の栄養成分の規格に適合したものには栄養機能の表示が許されており、これは「栄養機能食品」といいます。さらに、2015年からは事業者の責任で機能性表示が可能になる「機能性表示食品」というものも新たに設けられました。


『「機能性表示食品」って何?』(消費者庁) (http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150810_1.pdf)

トクホを含めたこれら「保健機能食品」は、医薬品と一般食品の中間に位置し、それ以外の健康食品は普通の食品と同じ扱いで、もちろん機能を謳うことは違法となります。国も健康食品への規制を強化しているのです。

α‐グルコシダーゼ阻害薬との相互作用には注意が必要!!

トクホを常用している方が増えている昨今では、医薬品との相互作用にはこれまで以上に注意することが必要です。それでは、よくある事例をもとに、併用注意なものについてみていきましょう。

トクホの食品を摂取されている方が意外と多いのは、糖尿病の患者さんです。処方医からは医薬品とトクホの併用に関して特に注意されず、少しでも血糖値を下げたいという自己判断からトクホも常用しているという例が少なくありません。血糖値に関してトクホに利用される成分に、難消化性デキストリンやグァバ葉ポリフェノールなどがあります。これらとα‐グルコシダーゼ阻害薬(ボグリボースなど)との併用は、血糖値が下がりすぎて、低血糖や腹部膨満感状態になる可能性があるので注意が必要です。

この併用に関しては知っている薬剤師の方も多いとは思います。しかし盲点なのは、α‐グルコシダーゼ阻害薬は、難消化性デキストリンやグァバ葉ポリフェノールだけでなく、他のトクホに利用される成分とも相互作用があることです。例えば、お腹の調子を整える成分として話題である大豆オリゴ糖やガラクトオリゴ糖などと併用すると、下痢・軟便が起こることがあります。

他にも、某人気フィギアスケート選手が出演するCMで有名なガムに含まれているキシリトールとα‐グルコシダーゼ阻害薬を併用すると、キシリトールにより医薬品の作用が増強されて下痢・軟便が起こる可能性があります。たかだがガムだからいいだろうと思っていると意外な落とし穴がある典型例です。キシリトールを含有した食品はガムだけでなく、これまた某有名タレントが出演するCMで扱われているアメにも使われています。このように多くの食品に利用されているので、注意する必要があります。

薬剤師であればこういった細かい併用注意な事柄にも目を向けて、患者さんにきちんとその可能性を説明することが必要でしょう。今回の事例を参考に自分でも調べてみてください。