AIの革新的な進化やコロナ禍によるリモートブームの中、医療業界でも遠隔の動きが加速しています。医薬品販売も例外ではなく、長らく対面が原則だった部分にも少しずつ変化が生じています。今回は遠隔医薬品管理販売について見ていきましょう。
本来医療は対面が必要?
「病を見るのでなく、患者自体を見よ」という言葉を医療ドラマでもよく耳にすると思います。近年の医療機器の進歩により、画像や検査値だけに注目する傾向がありますが、この言葉は患者自身をしっかり診るようにという反省をこめた言葉でもあります。東洋医学では古来より患者自身の自覚症状に重きを置いてきたことから、現在、世界的にも優れたオーダーメイド医療として評価されています。このことからも医療の原点が「患者と直接対話する」ことであることが理解できます。
薬学部などの医療系学部の講義でも、コミュニケーション、臨床推論、フィジカルアセスメントなどの重要性が指摘されています。特に日本においては接遇マナーが重要視される文化があるため、医療だけでなくさまざまな業界で対面が重視されてきました。そのため、遠隔やリモートといった言葉に嫌悪感を持つ人が一定数いるのは仕方ないのかもしれません。
デジタル技術を医薬品販売に取り入れる議論がすでに始まっている?
コロナ禍のようなパンデミックにより、多くの人がリモートの利便性に気がつき始めました。その中で、国を中心としてオンライン医療の推進が急速に進められています。オンライン診療については割と早くから枠組みが決まっていきましたが、議論がいまだに繰り返されているのが「医薬品の遠隔管理販売」についてです。この点に関してさまざまな観点から少しずつルールが決まってきています。
ここで一つ注意が必要なのは、デジタル機器を持たない人やデジタル機器の使い方に疎い人が置いていかれる可能性があるということです。
それを防ぐために今後遠隔・オンライン医療が拡大するにつれ、対応する薬剤師もデジタル機器やネットワーク、セキュリティに関する知識が必要になってくるでしょう。
具体的な方向性とは?
まず、既存の医薬品の販売区分・販売方法の見直しが行われました。詳細としては、やむを得ない場合に限った例外規定をルール化すること(零売の規制)、要指導医薬品の中で1類医薬品に移行することがない区分を新たに創設し、品目ごとに合ったオンライン服薬指導を導入することなどです。
これまで、零売と要指導医薬品販売に関しては議論が曖昧な部分があり、現場や患者の中で混乱が起こることがありましたが、今回の取り組みにより前進しました。
特に零売を行う薬局が増えたことで、利用者も増えている半面、利用者側もその存在意義を理解せず利用している場合もありました。今回、医療用医薬品に関しては「やむを得ない場合」にだけ薬局での販売を認めると決められました。このやむを得ない場合として、災害時以外の正当な理由として、①医師に処方され服用している医療用医薬品が不測の事態で手元になく、かつ、診療を受けられない場合、②一般用医薬品では代用不可、または代用可能と考えられる一般用医薬品が容易に手に入らない場合と明確に定義されました。
ただし、これまでと異なり、処方箋医薬品と非処方箋医薬品という分類は廃止され、薬局での医療用医薬品販売の可能性が広がったともいえます。そして、これはクリニックや病院から離れた薬局でも可能となるため、オンライン医療解禁の一つとも考えられます。
加えて、最近話題となっている緊急避妊薬に関しても、OTC医薬品には移行しないような区分創設も含め、オンライン対応の議論が始まっています。
今後デジタル機器を通したオンライン対応が可能となることが予想されており、その時すぐに対応できる薬剤師でありたいものです。
今後の流れに注目し、柔軟に対応できる人材を目指してください。
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