ネックレスなどの装飾品に欠かせない真珠ですが、実は薬でもあります。どのようなものでも薬として利用してきた中医学や漢方医学の特徴を考えると、真珠が薬というのも納得だと思います。今回は真珠について見ていきたいと思います。
元々日本人は真珠の金銭的価値には無頓着だった!?
今でこそ真珠は装飾品に欠かせないものとして広く使われていますが、実は日本で装飾品として使われるようになったのは、長い歴史で見ると比較的最近です。
ヨーロッパでは、真珠は装飾品として大変人気で偽物が多く作られるほどでした。
一方の日本人においては、真珠がたくさん取れたこともありそれほど価値があるものと考える人はおらず、「貝が作る石」という扱いでした。今でも貝を食べるときに殻を捨てることが多いですが、当時は真珠もそのような扱いでした。
当時はオランダ人と真珠の取引をしていた!?
中医学を基に日本人の体質に合った医学を確立しようと漢方医学が発展した江戸時代においても、日本人にとって真珠は金銭的価値のあるものではありませんでした。江戸時代の大半で鎖国を政策として掲げていたため、海外の情報が入りにくかったことも原因としてあります。
鎖国の中でも交易が許されていたオランダ人にとって真珠は価値のあるものだったので、海外との唯一の交易地点である長崎の港では、海外と真珠の取引があったという記録があります。長崎の港では当時、真珠がたくさん取れたことも背景にあり、かなりの収益が出たといわれています。日本の真珠は高品質なため高値で取引できたそうです。
あの有名なコロンブスも日本の真珠に惚れ込んでいたといわれています。その美しさから別名、「月のしずく」、「人魚の涙」とも称されていました。
日本人にとって真珠は薬であった!?
漢方医学が発展した江戸時代において、日本人にとって真珠は薬としての価値が高いものでした。漢方医学やその基になっている中医学などの東洋医学においては、自然にあるものはすべて薬として使うことができるという概念があります。その考えにより、真珠も立派な薬だったのです。
真珠を粉状にして服用すると、鎮静効果や美肌効果など幅広い効果があると考えられていました。真珠は炭酸カルシウムを主成分とし、ロイシンやメチオニンといった必須アミノ酸なども含まれているので、鎮静効果や美肌効果は確かにあるのかもしれません。生薬名としては、「珍珠(チンジュ)」という名前がつけられ、竜骨(リュウコツ)や牡蛎(ボレイ)などと同様に興奮を鎮める生薬に分類されています。
ただし、現代では真珠を使った漢方薬は見かけなくなり、健康食品として販売されていることが大半です。真珠の粉を配合した化粧品もあります。
世界三大美人であるクレオパトラも真珠を酢につけて飲んだと伝えられています。また、邪馬台国の女王卑弥呼の娘である台与が、中国に真珠を貢物として送っていたという記録もあります。
それほど昔から真珠は、装飾品や薬のどちらかを問わず人々の注目を集めていたのです。ぜひ知っておいてください。
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