1秒の判断の違いが患者さんの予後に大きな影響を与える救急医療現場。近年、救急医療の現場での薬剤師の重要性が増しており、活躍できる場面も増えてきました。薬局での服薬指導とは違ったことが要求されるのではと考える方も多いかもしれませんが、実は薬剤師として知っているべきことは変わらないものです。今回は救急医療現場での薬剤師の業務内容や、よく使われる医薬品に関して紹介します。

救急医療現場で期待される薬剤師の具体的業務とは?!

薬剤師の最も基本となるのは医薬品の管理ですが、それは救命救急の現場でも変わりません。ただし、日常の薬局などの場合とは異なる姿勢が求められます。通常のように医師の処方指示などをただ待っているだけでは乗りきれないことが多いのです。指示が出る前から、患者さんの状態や傾向をいち早く理解し、必要な医薬品を常備しておくことが求められます。

また、救命救急においては心肺停止の患者さんが運び込まれてくることが多いので、アドレナリンなどを静注する機会に多々遭遇します。こういった薬の投与は一定時間ごとに繰り返す必要がありますが、事故などでたくさんの患者さんが搬送されている時は、医師・看護師はそこまで手が回らないといった状況が出てきます。そういった際に、薬剤師が積極的に記録係を務めると良いでしょう。加えて、医薬品の投与経路や投与後の経過観察を行うこともできれば、薬剤師としての存在意義をいかんなく発揮できます。

そして意外と盲点なのが、持参薬に対処するということです。搬送されてくる患者さんの中には、もともと生活習慣病などの持病を抱えている方も多く、それに伴い普段飲んでいる薬も多岐に渡ります。近年ではジェネリック医薬品も増えてきているので、もはや医師と看護師だけでは把握することは困難です。そんな時に、持参薬の確認を行い、その医薬品の性質やこれから使用する医薬品との相互作用を瞬時に把握することが、薬剤師として行うべき業務でしょう。

救急現場に特化した医薬品について見てみよう!!

薬局でも循環器系の薬などはもちろん見かけますが、その多くは内服薬です。1秒を争う救急医療においては、すぐに血中に入り薬効を発揮する静注が多いです。循環器系の医薬品に関しては投与経路が異なるものの、薬効という点では同じなのでなじみやすいと思います。

救急医療現場に特化している事柄としては、気道確保のための気管挿管ではないでしょうか。この過程においては呼吸と循環の安定を保ちつつ、鎮痛・鎮静の正しいコントロールも求められます。また挿管時に肺炎も発症しやすいので、その対策も必要になってきます。挿管時には麻酔薬が使われますが、それぞれの特徴を理解することが必要です。

プロポフォールは導入が速やかで意識回復も早い反面、防腐剤が使われていないため、感染のリスクに注意が必要です。また、鎮静作用だけで鎮痛作用はありません。加えて過剰に投与すると心血管系抑制作用を起こし、心拍数低下などが現れることがあるので注意が必要です。

キシロカインは神経のナトリウムチャネルに結合して局所神経伝導を遮断できる一方、心臓のナトリウムチャネルにも影響するため、過剰投与が心停止などにつながることが注意点でしょう。

ミダゾラムは中枢神経自体の信号伝達を抑制することで鎮静作用を示し、作用発現も速やかですが、中枢神経を抑制しすぎることで呼吸抑制や健忘などを起こすおそれがあります。

他方、鎮痛薬・鎮静薬を見てみると、デクスメデトミジンは持続投与中の鎮静下でも、刺激により容易に患者を覚醒することができ、かつ、呼吸抑制が少なく調整しやすいので重宝されています。しかし循環器系の副作用が生じることがあります。また、挿管しやすいように筋肉を弛緩させるためにはスキサメトニウムなどが使われますが、効果発現まで速やかである反面、持続時間も短いので高カリウム血症に注意が必要になります。

薬剤師がICUに介入することによる様々なメリットも報告されてきており、また「救急認定薬剤師制度」も存在しています。ますます救命救急現場に薬剤師が介入することが増えるものと予測されます。救急の現場においては人工知能ではできないような臨機応変さが大きな武器になります。ぜひ自分でも勉強してみてください。

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