近年のグローバル化の波の中で、薬局にも外国人が多数訪れるようになってきています。
また、海外へ旅行に行く日本人も増えています。
そのような中で、海外の薬について相談を受けたりするという状況も増えてきたと聞きます。
日本の薬と比べながら、留学生や旅行者が特に多いアジアに焦点をあてつつ、外国の薬について見てみましょう。
(参考文献:海外で安心!くすりガイド(薬事日報社))

まずは制度の違いを知ろう!

大まかに知っておかなければいけない1つ目として、標準的な用量が大きく異なることがあるということです。
中には日本の数倍量が標準用量となっているものもあります。

2つ目としては、にせ薬に注意することです。
途上国では特ににせ薬が出回っていることが多いです。

3つ目として、一般名の英語表記を常に見ることです。
一般名の英語表記は世界保健機関(World Health Organaization: WHO)が定めている国際一般名(International Nonproprietary Names: INN)で成分を表します。
このINNはどこの地にいっても伝わりますので特に英語表記で覚えておくことが重要です。

4つ目としては、国によって異なる規制の違いです。
たとえば、抗菌剤の「レボフロキサシン(levofloxacin)は、日本はもちろん多くの国で処方せんが必要な医療用医薬品ですが、タイでは処方せんがなくても薬剤師が販売できるものです。
逆に、国によっては処方せんが必要なはずなのに処方せんなしで違法に販売されているものもありますので、注意が必要です。

以上の4つのことを、まずは知っておくべきかと思います。

具体例を見て見よう!

のどが痛いときの「トラネキサム酸(tranexamic acid)」を例にとってみてみます。
日本の商品である「イントウェル」にはイブプロフェンも配合されているので頭痛や発熱にも効果がありますが、海外製品の場合はのどの痛みだけを抑える効果がメインになります。

国別でみると、


  • 日本「イントウェルカプセル(小林):47mg(指定2類)
  • 香港およびマレーシア「Transaminカプセル(Daiichi Sankyo):250mg(要処方せん)」
  • インドネシア「Transaminカプセル(Otto / Daiichi):250mg(要処方せん)」
  • フィリピン「Hemoxane錠(Mercury Lab):500mg(要処方せん)」
  • タイ「Transaminカプセル(Daiichi Sankyo):250mg(薬剤師が販売可能)」

になります。

海外では処方せんが必要な医薬品として扱われる事が多いので成分量が多いですが、一日あたりの総投与量としては日本とほとんど変わりません。
また成分含量の違いだけでなく、国によって剤形も販売の仕方も違うことがわかると思います。
海外の医薬品を見かけたら、こういった細かい違いにも注意が必要です。

他にも注意しておくことが意外とたくさん!

医薬品の違い以外にも、特に海外旅行に出かける日本人にあてはまることですが、感染症を防ぐためのマスクの違いや、旅行する地域ごとにあらかじめの接種が推奨されているワクチンの種類の違いなどといった医療関連の情報は、把握していなければなりません。
薬局に相談する患者さんが来たときには、こういった事柄も当然答えられなければなりません。
今回の話を突破口として、普段から海外の医療事情に目を向けて、違っている部分も把握しておくことをおすすめします。