運動、睡眠などとともに、栄養は健康を維持する重要なバロメーターの一つです。近年は特に栄養の重要性が説かれるようになっています。栄養を担う専門チームであるNST(Nutrition Support Team)について見てみましょう。
栄養の重要性が再注目されてきた背景は?
栄養学という学問は以前より存在していましたが、ゲノム科学の進化によって形を変えて発展してきました。ゲノム科学の中心的学問である「分子生物学」が栄養学にも導入され、「分子栄養学」が誕生してから、栄養を分子ととらえて生体内分子との相互作用という点で研究が展開されてきました。
その結果、各々に適切な栄養を正しい量、適切なタイミングで摂取できるようになってきました。栄養学の重要性が増す中、栄養士・管理栄養士の重要性や活躍の場も広がり、NSTの存在感も増してきました。
NSTが誕生し広がった背景は?
NSTは1968年にアメリカで中心静脈栄養が開発された際に、これをきちんと実行するための組織として生まれました。日本では1998年に鈴鹿中央総合病院で初めてNSTが設立され、その後日本中に広がっていきました。現在では発祥の地であるアメリカを上回る数の施設で導入され、アメリカよりも進化したシステムとなっています。日本の国民皆保険制度もこの広がりを後押ししたとも考えられています。
NSTは医師と管理栄養士だけではなく、多職種連携による一大チームとなっています。NSTのメンバーは医師、管理栄養士はもちろん、歯科医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、介護福祉士などの医療系専門職種に加えて、医療事務職員や調理師といった方々がいる施設もあります。そのくらい栄養というものは複雑な要因が絡んでいるということです。
NSTの具体的な活動とは?
日本のNSTは多職種連携で行うことが基本となるため、経口栄養だけでなく静脈栄養、経腸栄養に至るまであらゆる栄養摂取管理が可能となります。NSTを持っている施設の中には、栄養状態の改善により治療効果が高まるだけでなく、医療費削減にもつながっているという声もあります。
最近ではさらに他のチームとも積極的に連携していくことで、さらなる治療効果改善につながっている施設もあります。例えば、嚥下困難対策チームと連携することで、経口にとらわれない対策を講じることができたという事例です。
今後は在宅医療推進の中で、薬局薬剤師も地域のNSTに参加することになるかもしれません。
NSTで活躍するための資格とは?
NSTのメンバーとして活躍する場合、栄養に関しての知識を持っている証明があればなお良いです。これにぴったりの資格が「NST専門療法士」です。
受験資格は
(1)薬剤師や看護師などの医療系国家資格を得てから3年以上医療・福祉施設で勤務し、栄養管理に関する業務を経験したことがある方で、
(2)日本静脈経腸栄養学会の学術集会とNST専門療法士受験必須セミナーにそれぞれ最低1回参加し、学会が認める研究会に参加し必須単位をみたすことと、
(3)日本静脈経腸栄養学会に認定された教育施設で合計40時間の実地修練を修了していること
です。
このように資格取得までに時間と費用がかかりますが、その分取得した場合には相応の価値があるといえます。NSTで即戦力として活躍したいという方はぜひ目指してみてください。
超高齢化社会が今後ますます進んでいく中で、栄養の重要性は増していくでしょう。NSTについてぜひ知っておいてください。
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