飲食店では禁煙席と喫煙席が用意されるなど、いたるところで禁煙が促進されている昨今。禁煙を本気で決意する方も増えてきました。ただ、自分の意志だけで禁煙するのはかなり大変です。5月31日の世界禁煙デーを迎えるにあたり、再度禁煙について薬剤師の立場から考えたいと思います。

薬剤師が介入する禁煙指導の意義とは?

最近では個人の希望に即した医療人による禁煙サポートが可能になってきました。病院やクリニックによる禁煙外来にかかる方もいますが、禁煙サポートのOTC医薬品が充実してきたこともあり、薬局での禁煙指導を希望する方も増えています。しかし、自分の意志だけでは禁煙の完遂が難しいというのは、時代を問わず変わらない事実。

薬剤師としてはただ薬の説明をするだけでなく、それぞれに合った禁煙指導法を心がけたいものです。意外と多いのは、別の疾患でクリニックにかかり、その後処方箋を持って来局したついでに、禁煙について相談するというパターンです。薬局に訪れる患者さんは他の疾患で薬を数種類飲んでいる方が多いので、これ以上薬を増やしたくないという方も少なくありません。加えて、禁煙の薬を使用するために、他の薬の服用を忘れるなどがあっては本末転倒です。

そこで、薬のプロである薬剤師にとっては、まずは薬を使わない禁煙法について説明することが重要です。一見矛盾しているかもしれませんが、薬の有効性だけでなく、薬のリスクを知っている薬剤師だからこそ重要なのです。それがうまくいかなそうな時にOTC医薬品による治療、それでもだめなら禁煙外来受診勧奨をするのが良いと思います。

自力での禁煙のために!患者指導のポイント

患者さんへ指導する際には、ニコチン依存症の症状について理解しきれていない患者さんも少なくないので、まずはこれを説明しましょう。ニコチン依存症が形成されるまでのメカニズムは、以下(1)~(7)の流れとなります。

(1)ニコチンが脳に達する
(2)ニコチンが脳でドパミンを放出する
(3)快感が発生する
(4)ニコチンが時間とともに欠乏してくる
(5)ドパミンによる快感を回復させようとニコチンを切望する
(6)ニコチン不足がストレスとなり、タバコを吸いたいと思う
(7)イライラが生じて我慢できなくなる

禁煙する際に生じ得る具体的な症状としては、不眠、欲求不満、不安、食欲増加、体重増加、集中力低下、心拍数の現象などが挙げられますニコチン依存症に関して患者さんに説明すべきポイントは、このドパミン神経の異常は3~7日で徐々に正常化することです。そのため、まずは禁煙を3日以上続けることが必要となります。加えて、禁煙開始から2週間は禁断症状が強い時期です。この期間は精神的に安定することが必要となります。

また、生活習慣の改善としては、食後早めに席を立つ、タバコ以外の嗜好品であるコーヒーなどを控える、昼食をいつもと違う場所でとるなどが有効であることを伝えましょう。これらはあまり禁煙とは関係ないように思われますが、意外と有効です。また、家族から相談を受けた場合には、少しでもタバコを吸わないでいられたらマメに褒める、禁煙目標を立てて達成後にご褒美をあげる、1人にしないように一緒に出掛ける、禁断症状が強い時には理解して寄り添うことが重要であると説明すると良いでしょう。

禁煙支援のプロになりたい薬剤師への朗報!

禁煙支援のプロになりたいという方にお勧めなのが、東京都薬剤師会による禁煙支援薬剤師制度です。なお、他の都道府県薬剤師会も同様の制度を用意している場合もあるので、自身が所属する地区の薬剤師会に問い合わせると良いでしょう。

カリキュラムとして、タバコによる健康障害や環境汚染から、禁煙支援のためのコミュニケーションに至るまで幅広い内容が用意されています。また、e-ラーニングを活用しているので薬局業務で多忙な薬剤師でも受講しやすいシステムになっています。

禁煙補助のOTC医薬品に関しては、「禁煙したい?!そんな時のOTC医薬品とは??」で既に書きましたので、それも合わせて読んでいただき、ぜひ禁煙に貢献できる薬剤師を目指してみましょう。

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