タバコの値上がりが激しく、また喫煙スペースが縮小されている昨今、禁煙に励もうという人も少なくないと思います。ひと昔前だったら、タバコを我慢するために飴などをなめてただひたすら耐えるという方法しかなかったかもしれません。こういった方法で何度も断念した人もいると思います。現在では禁煙補助のための薬が充実しているので、禁煙がスムーズにできるようになってきました。今回は禁煙補助のOTC医薬品についてお伝えします。

そもそもタバコをやめられないのは何故??

タバコにはおよそ4,000種類にもわたる化学物質が含まれています。その中の一部は有害物質に分類されており、特にニコチンは依存性に寄与しています。タバコを吸うとニコチンが肺から吸収されて、すみやかに脳に到達します。

その後、ニコチンがα4β2ニコチン受容体に結合して、快感物質のドーパミンが放出されます。これにより強い快感を得て、再度タバコを吸いたくなります。これを繰り返すうちに表れてくる離脱症状(イライラなど)を避けようと、タバコをやめられなくなります。この状態がニコチン依存症です。

ニコチン依存症になると常にタバコを吸わないと我慢できなくなります。さらにストレスなどを感じた際にドーパミンによる快感を得ようとしてタバコをついつい吸ってしまい、気がつくと吸う本数がどんどん増えていく悪循環に陥ってしまいます。

医療用の禁煙補助薬とOTC医薬品との違いとは??

病院の禁煙外来で処方される薬とOTC医薬品との違いについてはよく患者さんから聞かれることの一つです。にも関わらずうまく答えられなくて困るという薬剤師さんも少なくないのではないでしょうか。

両者ともα4β2ニコチン受容体に結合するという点では同じです。OTCのほうはニコチン自体が含まれており、粘膜から徐々に吸収されるようにしてあるので、喫煙時よりもゆるやかにニコチン濃度を上げます。つまりゆっくりとしたα4β2ニコチン受容体作動薬です。

一方、医療用のものにはニコチンではなく、バレニクリンという成分が含まれています。これはニコチンよりもα4β2ニコチン受容体と高い親和性を有するため、作動薬としての作用だけでなく、拮抗薬としての作用を持つという特徴も持ちます。
OTCのものと同様、α4β2ニコチン受容体に結合することで少量のドーパミンを放出させることで離脱症状を軽減し、さらに拮抗薬として、ニコチンとα4β2ニコチン受容体との結合を邪魔するので再喫煙による満足感も抑制してくれます。

ニコチン依存の症状が強い時にはOTCで対処するのではなく、禁煙外来受診を勧めることが求められます。加えて、医療用のものは禁煙開始1週間前から内服するので、喫煙を完全にやめてから使用する必要のあるOTC医薬品よりも、スムーズに治療に入っていけるという特徴もあります。禁煙の意志に自信がない方は禁煙外来のほうが向いていると考えられます。

OTC禁煙補助薬使用の種類とポイントとは??

OTC医薬品にはガムタイプとパッチタイプがあります。ガムは2類、パッチタイプは1類ということをまずは押さえておきましょう。
ガムタイプの利点は、発現効果までの時間がパッチよりも短めで、口寂しさを紛らわすことができることが挙げられます。反面、噛み方によって効果が変わりやすいので噛み方の指導が必要であること、切って量を調整することが難しいなどの欠点もあります。また、口の中が酸性だと吸収が悪くなるので、炭酸飲料やコーヒーなどと併用できないという点も注意としなくてはいけません。
パッチのほうはガムと比べて安定的にニコチンを補充でき、かつ使用していてもばれにくいというメリットがあります。デメリットとしては汗をかきやすい方には使いづらいのと、かぶれなどに注意が必要なことがあげられます。サウナやジムに通っているなどの方は避けた方がよいでしょう。

2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、タバコの規制はさらに厳しくなることが予想されます。禁煙外来の需要も高まっているので、ぜひ自分でも勉強してみてください。