今回も2年に1回の診療報酬改定が行われました。診療報酬は時代の医療事情を反映しているものなので、改定のポイントを整理することで、いま必要とされている事柄や今後の動向を把握することが可能になります。一緒にポイントを整理してみましょう。

まずは全体を把握することが大切

診療報酬が改定された時に、ついつい調剤に関係するところしか見ないという方も多いかもしれません。他職種連携が重要な昨今、調剤の部分以外もある程度広く理解することが大切になります。逆に言うと、他の部分もしっかり把握できれば、他職種連携につなげられると考えられます。

よく薬局にいると、なかなか他職種と交流ができないという話も聞きますが、診療報酬の理解不足に起因している事例もいくつか見られます。直接業務には関係なくても、まずは広く読んでみることを意識してみましょう。

すべてを読んで理解する、というのは難しいので、業務に関係しない部分については内容の理解だけにとどめ、点数まで把握する必要はないと思います。意外と知られていないですが、厚生労働省が示す改定の基本方針というものが存在します。この方針に従って改定は行われるので、まずはこの方針を理解することが大事になります。

(1)健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現
(2)患者・国民に身近な医療の実現
(3)どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進
(4)社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和

基本方針に基づく、今回の変更の方向性

続いて基本方針を踏まえた改定点を、もう少し具体的に考えてみましょう。各基本方針が、どのような施策に反映されているかを理解すれば、全体把握としては十分と思います。

(1)健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現
…基本方針の中でも一番基本的な概念で、すべての改定に活かされる

(2)患者・国民に身近な医療の実現
…かかりつけ機能の評価・強化、薬局薬剤師の対物業務から対人業務へのシフトを推進するための評価・強化、病院薬剤師業務の評価など

(3)どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進
…業務効率化に資するICTの利用推進、チーム医療によるタスク・シェアリングおよびタスク・シフティングの推進、在宅医療・訪問看護の質の底上げ、地域包括システム推進など

(4)社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和
…医師・病院薬剤師と薬局薬剤師との連携の推進、後発医薬品やバイオ後続品の使用推進など

調剤に関する部分は?

重要と考えられるポイントとしては以下の点です。
・後発医薬品体制加算は維持だが、減算は現行の20%以下から引き上げ
・調剤料は7日以下と14日以下で包括化
・かかりつけ薬剤師指導料等の施設基準にプライバシー配慮が追加
・敷地内薬局については病院だけでなく、診療所も対象に
・オンライン服薬指導を行った場合の「薬剤服用歴管理指導料」、「在宅患者訪問薬剤管理指導料」が新設 ・がん患者さんの薬薬連携に関する取り組みについて、「薬剤服用歴管理指導料 特定薬剤管理指導加算2」が新設

この中で特に注目すべきは、オンライン服薬指導の部分とがん患者さんに関する事柄でしょう。オンライン服薬指導はネット時代に相応しい方法ですし、在宅勤務やネットショッピングが普通になってきた中、今後オンライン服薬指導がさらに広がってくることが考えられます。紙薬歴しか経験していないので、電子薬歴管理が苦手だとは言っていられない時代になってきました。パソコンが苦手な方も少しずつ勉強すると良いでしょう。

また、がん大国と呼ばれる我が国ですが、これまで薬局薬剤師にとってがんがまだまだ遠い存在であったことは否めません。以前より本コラムでも繰り返しお伝えしていることですが、薬局薬剤師もがんに関する知識を持って当たり前という時代になってきています。

一般公開されている先端医療やがんに関する勉強会もあるので、今回の改定を機に勉強してみましょう。例えば、筆者が在籍している東大病院でもそういった勉強会を行っています。興味のある方は、東大病院のサイトを見てみてください。

薬局での業務に直結する点とは?

日常の業務に一番直結するのはお薬手帳の点数の変更ではないでしょうか。手帳持参の場合、再来局までの期間が現行の6ヵ月が3ヵ月に短縮され、点数も43点に引き上げられました。さらに、手帳を持ってこない、または、持っているが3ヶ月以内の再来局ではない場合には57点に引き上げられました。結果として、手帳ありなしの差が現行の12点から14点に広がったことになります。

また、これまで手帳持参のインセンティブが、53点を算定していた基本料1以外の薬局にも拡大されました。患者さんの手帳持参率が上がることが期待される反面、これまで以上に影響を受ける薬局も出てくるものと思われます。

AIの導入などで薬剤師が必要なくなるのではないかと心配する方もいらっしゃるかもしれません。しかし、今回の改定を見ると決して薬剤師を淘汰しようとするものではなく、薬剤師を積極的に次世代医療に関与させ、患者さんにとってより身近な存在にしようというものです。この気運に乗れたら成長できることは明白です。ぜひ一緒に頑張っていきましょう。

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