みなさんもご存知のように、日本は今後もの凄いペースで超高齢社会へと突入していきます。
高齢者になるほど多種類の薬を服用するようになります。
しかしながら、薬の服用だけでなく、高齢者医療では色々と対処しなければならない点が出てきます。

複雑な高齢者医療においてはチーム医療が重要となり、薬剤師にももちろん活躍が期待されています。
今回は高齢者医療の第一弾として、薬剤師として活躍できるようにきちんと把握しておきたい基本的事柄を復習しましょう。

まずは各職種の役割を理解しよう!

高齢者ケアにおいては多職種で連携しますが、各々の役割を明確に理解しておくことが大切です。
薬剤師以外の職種の役割を見てみましょう。

まずは医療的ケアの点で、医師は患者さんの診断をする等でチームをまとめる役割です。
医師は言わば現場監督で、具体的な実務は他の職種が各々のプロとして分担します。
具体的に列挙していくと、看護師は医師の指示の下の医療処置や療養上の世話を、保健師は保健指導を行います。

福祉・介護的ケアに目を向けると、福祉に関する相談・援助は社会福祉士や精神保健福祉士が担います。
この二つの職種は、言わば患者さんを総合的・包括的に支援する役割を持つソーシャルワーカーとして機能します。
参考までに、ソーシャルワーカー自体には資格は本来必要ありませんが、ほとんどの医療機関においては実質前述した二つの資格保持者でないとなれないという状況になってきています。

さらに介護の現場には各ケアごとに様々な職種があります

実際のケアプランの作成は


  • 介護支援専門員(ケアマネージャー)
  • 介護指導は介護福祉士(ケアワーカー)
  • 介護・家事などは訪問介護員(ホームヘルパー)

が行います。

リハビリテーションでは、


  • 裁縫や手芸、農作業等といった作業療法によるリハビリでは作業療法士
  • 歩行や起き上がり等といった日常の基本動作訓練である理学療法によるリハビリでは理学療法士
  • 音声・言語・聴覚の機能向上や嚥下訓練等のリハビリでは言語聴覚士

が各々活躍します。

栄養指導は管理栄養士・栄養士が行います。
なお、心理的ケアが必要な場合には、臨床心理士によるフォローも行われることもあります。

そもそも医行為の範囲って!?

高齢者ケアを行う場合には、患者さんに実際に触れなければいけない場面が多々出てきます。
患者さんに触れること自体が医師や看護師にしか許されない医行為にあたるのではないかと躊躇した結果、ケアの質を落としてしまうのでは意味がなくなってしまいます。
2005年に国により通知が出され、医行為でないと見なされる具体的な行為が示されたことでこの曖昧な点が改善されました。

当該行為を行う際に、「医師の医学的判断と技術がないと人体に影響・危害を及ぼすおそれのある行為を、反復継続する意志をもって行うこと」が医行為であると定義されました。
裏を返すと、それにあたらなければ医行為ではなく、医療機関以外の高齢者介護・障害者介護現場などにおいても可能となりました。

医行為ではないケアもさまざま

具体的には、体温・血圧測定、動脈血酸素飽和度測定のパルスオキシメータの装着、軽微な切り傷・擦り傷・熱傷等の処置、爪切り、歯や舌等の汚れを取り除く口腔ケア、耳垢除去、ストーマ装置のパウチにたまった排泄物の除去、自己導尿補助のためのカテーテル準備・体位の保持、浣腸は医行為の対象外とされています。

さらに、患者の容態が安定していて、医師・看護師による経過観察が必要でない、当該医薬品の使用法について専門的な配慮が必要ないという3つを満たしている場合に限定で、軟膏塗布、湿布貼付、点眼薬点眼、一包化内用薬服用、坐薬挿入・点鼻薬噴霧の介助も、医行為ではないとされています。

次回は具体的事例を紹介します。
今回の基礎的な話はしっかりと整理しておいてください。