昔から「Laughter is the best medicine(笑いは最良の薬である)」といわれ、笑うことは健康に良いと考えられてきました。日本でも「笑う門には福来たる」ということわざがありますね。今回は、笑いの効能について、最新の科学的・医学的エビデンスを基に紹介します。
笑いの身体的効能とは?
まずは笑うことで身体にどういった効果をもたらすかを見ていきましょう。これまで報告されていることをまとめると、(1)免疫への効果、(2)自律神経への効果、(3)中枢神経への効果、(4)血糖値への効果などがあげられています。さらに、この4つの効果を介して、関連する他の臓器にも間接的に影響するので、笑いの効果は身体全体に広く作用します。
具体的に説明すると、(1)免疫への効果としては、NK細胞活性の上昇、NK細胞数の増加、CD4 / CD8比の改善、IL-6の低下、コルチゾールの減少などを介した免疫系の正常化・活性化です。NK細胞数が増えて、かつ活性化が促進されることでがん予防にもつながと考えられています。IL-6は炎症に関係し、関節リウマチにも寄与するものですが、これが減少することで関節リウマチの改善にもつながることが期待されます。また、アレルゲンによる膨疹や赤斑反応の縮小も起こるので、アトピー性皮膚炎の改善にもつながると考えられています。
(2)自律神経への効果としては、交感神経と副交感神経のバランスを保つことで、自律神失調症を回避するという効果が期待できます。この自律神経は呼吸、心拍数、血圧などに影響するので、これらのバランスも良くなります。
(3)中枢神経への効果としては、血流量の増加に加えて、記憶中枢である海馬の容量が増えることで記憶力アップにつながることがまずは挙げられます。また、血流量増加によってα波が増えることで脳がリラックス状態になります。さらに、脳内麻薬や幸せの脳内ホルモンと称されるβエンドルフィンの増加によって幸福感が増し、鎮静作用をもたらします。この作用はモルヒネの数倍とも考えられているので相当強力なのがわかります。
(4)血糖値への効果としては、笑った後では食後血糖値上昇が抑制されたのはもちろん、さらには、HbA1c値の改善に加えて、インスリンの働きを助けるアディポネクチンの増加によって糖尿病を改善する可能性が示唆されています。
他にも、唾液分泌増加に伴う唾液中のリゾチームの上昇による風邪予防効果、笑っている時に横隔膜・腹筋・顔の表情筋などを連動して動かすことによる筋力アップやダイエット効果、血流がよくなることでの肩こり改善や冷え解消効果、新陳代謝アップによる美肌効果、免疫活性化と血流増加による傷の回復促進効果、胃腸の血流増加と横隔膜・腹筋運動の活発化による消化促進効果など、笑いのもたらす効果は本当に多岐に渡っています。
笑いは精神にも効果をもたらす!
精神的効果についてもたくさんの研究報告がなされています。列挙していくと、ストレス軽減・否定感情の改善・抑うつ防止・不安や緊張の軽減・人間関係の確立促進・コミュニケーション機能の改善などです。
薬剤師を含めた医療人は日々命の現場で責任を持って仕事をしているために色々なストレスを貯めがちです。しかし、複数の研究グループが笑いによってそのストレスを軽減することができると報告しているのです。患者さんのストレスに目が行きがちですが、患者さんを笑顔にするには、まずは医療人側のストレスを減らすことが重要ではないでしょうか。
また、患者側に目を向けると、超高齢社会である我が国においては高齢者の患者さんに特にしっかりと笑ってもらうことが重要だと考えられます。高齢者世代では、定年退職や身体面の老化といった自身の変化の他に、配偶者の死をはじめとした、重大な喪失体験を経験する機会が増えるので、否定的な思考に陥りやすいという傾向があります。
大阪がん循環器予防センターの研究報告によると、ほぼ毎日笑う人と笑う機会が無い人では、後者のほうが1年後の認知機能の低下が大きいということです。もちろん必ずしも認知症にならない訳ではないですが、笑いが認知機能改善につながる可能性は否定できません。
服薬指導時に高齢者の患者さんとお話する際には、なるべく薬剤師側が積極的に笑顔になれってみてはどうでしょう。笑顔の連鎖で患者さんも笑顔になり、結果として病気に改善が進むとなれば素敵ですよね。作り笑いでも効果があると言われていますので、まずは毎日笑顔を作る練習をしてみてください。
最後に余談ですが、医師かつ落語家でいらっしゃいます立川らく朝さんは健康と落語をミックスした「健康落語」を独自に開拓することで、笑いと健康について日々啓蒙されています。著書も出されていますので参考にしてみてください。
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