超高齢社会に突入した我が国において、高齢者医療の役割は日に日に増してきています。高齢者医療において薬剤師は何をすべきで、何ができて、かつ、どうやって存在感を発揮するのが良いでしょうか。高齢者医療シリーズとして、今回は第1回目をお届けしたいと思います。

高齢者医療が意識されるようになったきっかけとは?

高齢者医療の重要性が増してきた背景として、以前から問題視されてきた「2025年問題」があります。これは、「団塊の世代が後期高齢者となることで高齢者人口が急増するのが2025年であるという問題」になります。見て分かるように、まさに今年がその年なのです。ずっと言われ続けていた2025年がついに来てしまったということになります。

実際に、臨床現場にいらっしゃる方々が日々実感されているとは思いますが、人手不足は深刻です。病院はもちろん、薬局においても例外ではありません。コロナ禍で落ち込んだ薬剤師の求人数の減少の反動もあり、どこも薬剤師確保に必死なようです。日本においては、薬剤師数だけならかなり多いですが、薬剤師数の地域格差、3割ほどは臨床現場以外で従事している(以前にも増して薬剤師の働き口が多様化してきている)、薬学部の進級の厳格化、薬剤師国家試験の難化などの現状があり、臨床現場における薬剤師数はいつまでたっても充足されていないようです。 加えて、医療機関の後継者不足や医療費の増加も問題となってきています。また、在宅に特化した薬局も増えてきているのも高齢者増加とも関連があると言えます。高齢者医療に関係した学会も増えてきています。

高齢者医療で大事になることとは?

高齢者といっても、患者さんである以上は、高齢者以外の方とも対応自体は大きくは変わりません。ただし、高齢者に特有の性質もあります。この特性をまずは理解しておく必要があります。具体的に列挙すると以下になります。

(1)副作用が出やすい

高齢になると、腎機能などの生理機能が衰えていて、普通なら副作用がほとんど問題とならないような薬でも副作用が起こることがあります。

(2)合併症を多く抱えていることが多い

例えば糖尿病と狭心症などといったように、高齢者では複数の疾患を同時に抱えている場合があり、併用薬も多種多様になる傾向にあります。いくら薬のプロである薬剤師が服薬状況を管理するといっても、普段の状況よりも困難を極めます。さらに、ある薬の副作用を別の薬で対処するなどといった感じで、さらに薬が増えていくということもあります。

(3)認知機能が低下している場合も多い

認知機能が低下している患者さんである場合には、薬の説明などをいくらしても、把握しきるのは困難となり、その結果として、間違った薬を服用したり、間違ったタイミングで服用してしまったり、さらには、本来はきちんと服用しなければいけない薬を服用しなかったりという状況になり得ます。

(4)歯の本数が少なかったり、嚥下機能の低下に加えて、口腔内の衛生環境が悪かったりする場合がある

歯が抜けてしまっていたり、うまく飲み込めないなどの物理的な機能低下だけでなく、口腔内の衛生環境が悪い場合もあります。歯が抜けていて減っていたり、うまく飲み込めない状態では、薬の服用や利用にも直接的・間接的な影響を及ぼします。また、口腔内の衛生環境が悪いと、まずは歯磨きなどをきちんとすることが必要になったりします。虫歯の原因菌が心臓に悪影響を及ぼすなどの研究成果もあるため、回り回って薬の効果に影響するといえます。

薬剤師は実は高齢者医療で活躍できる!?

薬剤師は高齢者医療で活躍できるポテンシャルを実は持っていると考えます。ただし条件はあります。高齢者対応においては、より密接な寄り添いや上手な説明などが求められることから、コミュニケーション能力や洞察力などをさらに磨いて、対人業務をこれまで以上に得意とする必要があります。時には手話を活用することもあるでしょう。

加えて、糖尿病に強い、がんなら任せてくれなど専門性を持つということも必要です。薬剤師は医療の中では、他職種に比べるとジェネラリストの側面はもちろんあり、それが武器ではありますが、さらにこれという専門性を持つと良いでしょう。

次回の第2回では、今回の内容を踏まえたより具体的な内容をお届けします。

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