新型コロナウイルスの世界的拡大が続いている昨今、マスクや消毒薬を始めとする衛生用品が飛ぶように売れています。ただ、実際に使用している方々を見てみると正しく使っているとは言いがたい事例が散見されます。正しい使い方をしなければ、当然期待される効果は得られません。薬剤師を始めとした医療関係者の中にも使い方を間違っている方がおられます。衛生用品を買いにくる患者さんと一番接する機会がある、薬局やドラッグストアに勤めている薬剤師ならば、特に正しい知識を持ち、正しく患者さんに伝えることが重要になってきますよね。今回は衛生用品の正しい使用方法について、一緒に学んでみましょう。

薬剤師がマスクの無駄な買い占め防止の一助に

まずは昨今特に不足しているマスクについてです。マスクなら何でもいいと思い込んで、買えるだけ買う方々を多く見かけますが、マスクで一番大事になってくるのは、「自身の顔に合った適切なサイズかどうか」の一点につきるでしょう。

これを確認するためには、以下の4つに注意すると良いです。購入後使用した際に、(1)顔とマスクの間に隙間がないか、(2)呼吸が苦しくないか、(3)紐がきつくて耳が痛くないか、(4)マスクの素材でかゆくなったり肌が荒れたりしてないか、の4つを確認しましょう。どれか1つでも気になるならそのマスクは合ってないため、マスクを外す回数が多くなったり、マスクの効果を発揮できてなかったりと、使用してもあまり有効ではないと考えられます。

自分の顔に合っているマスクのサイズを簡単に測れる方法も考案されています。一般社団法人日本衛生材料工業連合会のHPに詳細が紹介されていますが、親指と人さし指でL字形を作り、その状態で親指の先端を耳の付け根にあて、人さし指の先端のほうを鼻の付け根から1cm下に当てます。その時の親指と人さし指の間の長さがマスクのおおよそのサイズになります。その際に、9~11cmなら子供用サイズ、10.5~12.5cmなら小さめサイズ、12~14.5cmなら普通サイズ、14cmを超えるようなら大きめサイズがそれぞれおすすめです。

適切なマスクの選び方を薬剤師側から情報提供することで、自身に合ったマスクだけを買うことにつながり、結果として無駄な買い占めを減らせることができます。

マスクの着脱の時も注意が必要

一般的なマスクはウイルスを通過させるため、意味がないという話も耳にしますが、全く無意味という訳ではありません。自身が感染している場合、咳やくしゃみのしぶきに含まれるウイルスの拡散防止には一定の効果があります。また他人からの感染防止という点でも、マスクで埃をシャットアウトすることでそこに付着したウイルスからの感染リスクを軽減することができます。

ただし、正しく扱わないと逆効果にもなりかねません。一見紐がついている方が裏(口側)に見えますが、実は逆で、こちらを外側にすると、より密着度が上がります。もちろんメーカーによって違う場合もあるので説明をきちんと読みましょう。

そして特に注意すべきなのはマスクを外す時です。利用後のマスクにはウイルスやゴミがついているため紐の部分をつかんで外します。そしてそのまま手を洗うことが大事です。 よく、マスクを外してそのまま机に置くなどして、また着ける方を見かけますが、これにより机が汚染されるだけでなく、着け直してマスクを調整する際にマスク部分を触ってしまい、せっかく防いだウイルスに自身が接触することになってしまうためおすすめしません。基本的にはマスクは一度外したらそのまま捨てる、もしくはマスク部分を消毒してから着け直すのが良いです。

ただこのご時世では、マスクが手に入りにくく場合によっては再利用する必要もあるでしょう。着け直す際には口の中にマスク部分が触れないように注意し、着けた後に手をよく洗ってください。そして、捨てる際には、そのまま捨てるとそこに付着しているウイルスが空気中に拡散してしまう可能性があるので、外したマスクをビニールに入れて口をしばって捨てると感染拡大防止に有効です。

消毒薬や除菌ウェットティッシュの使用法にも注意

新型コロナウイルス感染には消毒用エタノールが有効です。濃度としては、70~80%が殺菌能力最大となるためベストですが、それより薄くても手指の軽い除菌としては使えます。こちらもマスク同様、正しく使わないと逆効果になりかねません。

手洗い後の利用時は、しっかりと水を拭きとってからにしないと、アルコール濃度が水で薄まってしまいます。かといって、手を洗わないで使うとこれも逆効果になることがあります。

例えば、泥だらけの手のまま消毒用エタノールを使用すると、一時的には効果があったとしても、乾いた後に泥のついたところでまた細菌などが繁殖してしまいます。さらに言うと、エタノールを刷り込むときにむしろ泥を広げてしまって繁殖範囲を拡大させてしまうことになります。

また、消毒用エタノールの不足で、その代替として燃料用のアルコールを購入しようとするお客さんがドラッグストア等に来られるかもしれません。「これはメタノールという成分が入っていて、有害なので人体には使用できませんですが大丈夫ですか」と、購入時に確認することもアルコールの正しい利用に繋がります。

除菌用ウェットティッシュも使用用途に気をつけることが大事です。中性か肌と同じ弱酸性の製品は人体に適しており、アルカリ性の製品は床や壁などを拭くことに適しています。さらに、アルコール濃度が70%よりも低い商品が多いですが、そこに除菌剤やクエン酸など別の成分を加えることで有効性を上げているため、通常の除菌用であれば効果があります。

昨今は厚労省や医療機関から感染症対策について啓蒙される機会が多くなったとはいえ、まだ十分に浸透しているとは言えず、一般の方から誤った感染症対策がSNSなどで発信されることも多いのが現状です。そんなときに薬局やドラッグストアで直接顔を合わせることができる薬剤師から、正しい知識できちんと説明をすることで、納得感を持ってもらえるのではないでしょうか。 ぜひ多くの薬剤師が正しい知識を発信できるインフルエンサーになれるようにと願っています。

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