現在、多種多様な薬が存在していますが、薬剤師でも服用タイミングについてすべてを完璧に把握している方は少ないと思われます。薬によってはこの服用タイミングが重要な場合もあります。今回は薬の服用タイミングについて復習してみましょう。

服用の際のポイントとは?

薬を服用することは、極論を言うと命に関わる可能性があるため、きちんとルールを守ることが大事です。具体的には、服用タイミングが最も大事ですが、そのほかにも重要なポイントがあります。
覚えておきたいのは、「服用タイミング・量・方法・期間・飲み合わせ」の5つです。この中のどれかが誤っていると、効果が期待できなくなるだけでなく、場合によっては命に関わることもありえます。例えば、錠剤やカプセル剤は通常コップ一杯の水で飲むことになっていますが、水なしで飲むと薬が食道などにひっかかり、食道炎などを起こすことがあります。また、水の量が少ないと薬の吸収が低下し効果が十分に発揮されないということもあります。ほかにも、水以外の飲み物で服用すると相互作用も起こることがあります。
服用タイミングを注意しつつ、ほかの要素も一緒に意識してみるとよいでしょう。

服用タイミングの基本を復習してみよう!

服用タイミングの基本は「食前、食後、食間、寝る前」があります。
具体的には、食前は食事の約30分前、食後は食後の約30分後までというのは理解しやすいです。
勘違いされやすいのは、食間と寝る前です。食間は食事の2~3時間後、寝る前は就寝の約30分前を指します。
薬剤師の中にも勘違いしている方が意外といるので注意してください。また、頓服は症状が出ているときに飲むものですが、患者さんの中には薬をきちんと飲み続けなければいけないと勘違いしている方もいるので、薬剤師としても服薬指導時にきちんと確認することが重要です。

食後が多いのには理由がある?

内服薬の多くが食後服用になっていますが、これには理由があります。まず、生活習慣との関係です。人は必ず食事をしますので、食後と決めておけば薬を飲み忘れにくいという利点があります。また、吸収にも影響があります。血中の薬物濃度は極力一定にすることが重要と言われています。薬物濃度が下がってくる際に耐性ができやすいからです。そのため、食後に服用すると決めておけば薬物濃度が適切に保たれ、効果を安定的に発揮します。実際、食後に服用すると吸収が悪くなると分かっている薬も、あえて食後に服用するように指示する場合があります。これは多少吸収が低下したとしても、血中の薬物濃度を一定にすることで安定的に効果を発揮するためです。

食事が不規則な場合の対応は?

一般的に服用タイミングは1日3食を基準としています。最近では食の多様化や健康ブームなどもあり、食事が不規則な方も多くなっています。そのため、不規則な場合の対応が重要となります。服薬指導の際に食事時間について毎回きちんとヒアリングすることが大切です。一部例外を除いて、薬は食前に飲んでも食後に飲んでも効果はあまり大きく変わりません。前述したように薬の血中濃度を一定に保つことの方が重要です。そのため、食事をしなくても決まったタイミングで服用することが大事です。ただし、空腹で薬を飲むと胃腸に負担がかかりやすいので、多めの水で服用するとよいでしょう。
注意したいのは糖尿病の薬です。糖尿病の薬には血糖値を下げる効果があるので、食事をしない場合には服用を避けるべきです。
服用間隔としては、食事をしているかに関係なく、1日3回の場合は4時間以上、1日2回の場合は5時間以上、1日1回の場合は8時間以上空けるようにしましょう。飲み忘れた際はすぐに飲み、次の服用までの必要な間隔を守るようにしましょう。2回分をまとめて飲むのは避けましょう。
以前、ある患者さんから「服薬指導の最初に薬剤師から食事のタイミングを聞かれて、1日2回と伝えたのに、その後の説明でこの薬は1日3回食後に服用するようにと説明されて混乱した」という声を聞いたことがあります。このような機械的対応をしているようでは今後医療業界にも浸食してくるAIに勝てません。
ぜひ、服用タイミングの観点からも臨機応変に対応できる薬剤師を目指してください。

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