暖かくなると毎年よく聞く「ヘルパンギーナ」という言葉。正しく理解していない薬剤師の方も少なくないかと思います。今回はこれについて見てみましょう。

そもそもヘルパンギーナとはどのようなもの?

ヘルパンギーナは乳幼児を中心に6月~8月頃に流行する夏風邪の一つです。子どもの夏風邪にはヘルパンギーナのほかにも、「手足口病」、「プール熱(咽頭結膜熱)」がありますが、その中でも特にヘルパンギーナが代表的なものと言っても過言ではありません。
ヘルパンギーナは風邪ですので、ウイルス(コクサッキーウイルスA群)が原因です。ウイルスは変異を繰り返してタイプが頻繁に変わっていくので、何度もかかる方もいます。また、乳幼児の患者がメインではあるものの、大人でもかかる可能性はあります。

どのような症状が出てどのように感染するの?

ヘルパンギーナは感染後、数日間の潜伏期を経て突然の高熱や喉の痛みなどが現れ、口の中に水泡や発赤が見られるようになります。この水泡が破れると潰瘍ができ激しい痛みが生じます。この痛みにより、水分などを摂取することができなくなり、脱水症状になってしまう方もいます。ヘルパンギーナは通常であれば1週間程度で完治しますが、まれに合併症として心筋炎などが生じることもあります(特に大人の患者はこのような重症な合併症を起こしやすい傾向が見られます)。
ヘルパンギーナの感染経路としては、飛沫感染経路(患者のくしゃみなどに含まれるウイルスによって感染)や、経口・接触感染経路(水泡や体液に含まれるウイルスに手などが触れた際に、そのまま眼などの粘膜に触れてしまうことで感染)があります。

治療法や予防法は?

現時点ではヘルパンギーナの予防接種、根治的治療法は存在しません。熱を解熱鎮痛薬で下げるなど各々の症状の軽減を目指す対症療法で対応します。また水分や食事が取りにくいという場合は栄養不足や脱水症状になってしまわないように、食物を柔らかくし、味付けも薄めにして対処します。おかゆや雑炊などは向いていると思います。
心膜炎など重症な症状になった場合にはすぐに専門医のいる医療機関を受診する必要があります。
ヘルパンギーナの予防方法は手洗い、咳エチケットなどです。
コロナ禍の中でインフルエンザなどの冬風邪だけでなく、ヘルパンギーナを含めた夏風邪の罹患者数が少なくなった要因は、手洗い回数増加や咳エチケットなどの飛沫感染対策を徹底したことも関係しているとも考えられています。このことから、ちょっとした日常の努力によって予防できることがよく分かります。
乳幼児は自分では難しいので、大人がきちんと寄り添って予防方法の補助を行うことがよいでしょう。

消毒用エタノールの効果は?

コロナ禍で医療機関にとどまらず、いろいろな場所で置かれるようになった消毒用エタノールですが、実はヘルパンギーナの原因となるコクサッキーウイルスA群にはあまり効果がないです。このコクサッキーウイルスA群はノロウイルスやロタウイルスなどと同様、ノンエンベロープウイルスに分類されるためです。
しかしながら、消毒用エタノールにリン酸などを添加してpHを低下させた酸性消毒用エタノールならば、これらノンエンベロープウイルスにも効果があるということが示されています。
酸性消毒用エタノールの商品も複数商品化されていますので、これらを夏場に各家庭に常備しておくことは有効な予防方法であるといえます。
また、手荒れ防止の保湿成分が入っている商品やウエットティッシュタイプの商品も存在しているため、肌が弱いお子さんや長時間エタノールが皮膚に残る感覚が嫌という方でも対処しやすい環境も整っています。

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