2016年より、法令によりきちんとした位置付けがなされたことで正式に開始された「健康サポート薬局」。超高齢社会の更なる進行の中で、薬局は重要な医療拠点になる反面、コンビニより多いため、今後淘汰されていくことが予想されています。そのような中で生き残っていくために、この健康サポート薬局を目指していくことがよいのではないでしょうか。今回は健康サポート薬局のあり方について、実際の実施例を参考にして一緒に考えていきましょう。
そもそも健康サポート薬局とは??
似たような言葉に「かかりつけ薬局」というものもあります。こちらは有名な概念なのでもちろん知っていると思いますが、健康サポート薬局との違いに関しては明確に答えるのは意外と難しいものです。まずはこの違いを確認していきましょう。
ざっくりとまとめると、かかりつけ薬局の進化版が健康サポート薬局です。まず、かかりつけ薬局の機能として以下の要点を満たす必要があります。
① 服薬情報の一元的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導
② 24時間対応、在宅対応
③ かかりつけ医をはじめとした医療機関などとの連携強化
この3つを満たしてかかりつけ薬局になった後に、次の7つの要件をさらに満たすことで健康サポート薬局になれます。
① 地域における連携体制の構築
② 薬剤師の資質確保
③ 薬局の設備
④ 薬局における表示
⑤ 要指導医薬品の取り扱い
⑥ 開局時間
⑦ 健康相談・健康サポート
健康サポート薬局にしかないポイントとは!?
まずはかかりつけ薬局を目指しましょう。これだけでも生き残っていける薬局にはなりえます。かつ、そこで薬剤師として勤務すれば、かかりつけ薬剤師としての技能や、在宅の知識も身に付くものと思います。
ここでポイントがあります。前述した要件を見るとよくわかりますが、かかりつけ薬剤師の3つの要件は具体的になっています。それに対して健康サポート薬局の7つの要件は抽象的ものが多いです。つまり、かかりつけ薬局よりも健康サポート薬局のほうが、その薬局のオリジナリティを発揮しやすく、他の薬局と差別化しやすいのです。例えば、⑦の健康相談・健康サポートのやり方は、薬剤師1人ひとり、患者さん1人ひとりで異なるので、薬局毎の個性を発揮しやすいと思います。このことを加味すると、健康サポート薬局になるほうがその薬局にしかないというプレミア感を患者さんにアピールしやすいと考えられます。
具体的な取り組みを見てみよう!!
健康サポート薬局(A、B)で働く、薬剤師にインタビューをしてみました。
―取組みを教えてください。
Aの薬局長「うちはチェーンではなく、1店舗しかない地域密着型の薬局です。門前でもないので、その日によって処方箋枚数もまちまちです。これまでは、どうしても大手ほど業務や店舗を拡大できないながらに、色々と模索をしながらがんばって患者さんを増やしてきました。今回、かかりつけ薬局と健康サポート薬局の基準がきちんと明示されたことで、目指すべき方向性がはっきりしましたし、うちのような小さなところは逆にチャンスだと感じました。健康サポート薬局となった現在は、OTCを前よりも増やし、栄養士のスタッフを雇ったり、知り合いの大学の先生に協力を頂き、地域住民向けに健康教室を開催したりしています。」
Bの薬局長「うちはチェーンの中の1店舗です。近くに5つのクリニックがあり、だいたいその5つから処方箋がきます。処方箋枚数が比較的多く、小児科や皮膚科もあるので複雑な処方もあり、これまでは日々の処方箋をひたすら調剤していくということで1日が終わっていました。今回本部にお願いし、スタッフを増員してもらってから流れが変わり、検査やOTC種目拡大もできるようになりました。また、うちは生活習慣病の患者さんが多くを占めているので、元々病院薬剤師で糖尿病に精通した薬剤師スタッフの協力を得て、生活習慣病に関するセミナーを定期的に開催しています。たまに近くのクリニックのスタッフさんや先生まで参加してくださるときもあります。健康サポート薬局は、薬局の中でも特に薬剤師としての機能を発揮しやすく、また、近くのクリニックの先生方からも一目置かれている、と感じています。」
スタッフ増員や開局時間延長などたしかにハードルは高いですが、このように、オリジナリティのある薬局を目指せます。ぜひ積極的に目指してみてください。