医療費が年々高騰する中で、現在国が進めているのが、ジェネリック医薬品(以下、GE)の使用促進です。しかしながら、国民皆保険をとっている日本において、患者さんの医療費負担額がそもそも少ないことから、患者さんの注目度が低く、他国ほどGEの普及率が高まらないのが現状です。今回は、GEについて、その性質や説明時のポイントなどを復習し、患者さんにきちんと説明できるようになりましょう。
復習!そもそもジェネリック医薬品とは?
医薬品には、有効成分に対する物質特許、製造方法に対する製法特許、効能効果に対する用途特許、用法容量に対する製材特許の4つの特許があります。その中の物質特許が切れ、先発品と異なる製薬会社が同じ有効成分で製造・供給した医薬品がGEです。特許が切れたあとにゾロゾロと出てくるものであることから、以前はゾロと呼ばれていました。しかし、あまり良いイメージではない呼び名であることが問題とされるようになりました。そこで、欧米でGEを処方する際、一般名が用いられることが多かったことより、一般名の英語名「generic name」から、「ジェネリック医薬品」という名前が使われるようになりました。
患者さんへの説明する際に注意すべきことは?
患者さんへの説明のときに、「同じ効果を持つ安いお薬です」と説明することがあるかもしれませんが、実は注意すべきことが2点あります。
1点目は、GEは先発品と同じ有効成分でありますが、そもそも薬というのは有効成分だけで作られてはいない、ということです。先発品の中に含まれている医薬品添加物の特許は切れていないので、他社が製造・販売する場合には、先発品と異なる添加物を使わざるを得ません。その結果、効果が先発品と違ってしまったり、先発品では起こらなかったアレルギーが起きたりすることがあります。ですので、同じ成分と言ってもいいですが、同じ効果と言ってしまうのは早計かと思います。ただし、この添加物や製造方法が先発品と異なることで、先発品にはない剤形のものを作れるといったメリットもあることは頭に置いておきましょう。なぜなら、同じ成分のものでも剤形を変更することで、治療の効率が上がる可能性もあるからです。
2点目は、GEによっては先発品と同じ値段のものもあるので、GEに変更しても、必ずしも安くなるわけではない、ということです。この点をしっかり患者さんに説明しないと、お会計が変わらない、といったクレームに繋がりかねません。盲点なのが、薬剤師がいくら理解していても、事務さんが理解していない場合があることです。事務さんが受付時に患者さんに誤った説明をしてしまい、薬剤師が投薬時にクレームを受けてしまう事態にもつながります。普段から事務さんにもきちんとGEの特性について理解してもらうことも、薬剤師の重要な責務です。
同じ効果と言っても良い状況とは?
同じ効果と言っても品質上問題ないのは、オーソライズドジェネリック(以下、AG)のときです。AGは、先発品の会社が特許権を公認(オーソライズ)したGEです。つまり、先発品の特許が切れる前に発売することができます。AGの場合は、先発品と有効成分・添加物・製法等が同等なので、生物学的同等性などの試験を省略できます。そして、有効成分以外の添加物や製造方法も同一であることから、先発品とほぼ同じ医薬品であると言えます。ただ、ここにも盲点があります。いくら製造方法や有効成分などが同一であり、科学的には同じであっても、具体的な試験をしていない以上は、完全に同じ効果が出るとは断言はできません。ですので、患者さんにAGについて説明する際には、普通のGEについて説明し、比較しながら話してあげると良いです。例えば、「GEは先発品と有効成分は同じですが、添加物や製造方法は異なります。AGは先発品と有効成分や添加物、製造方法まで同じように作られているので、先発品と効果がほぼ同じと言えます。」といった感じです。また、AGは、GEの中では値段が高めなので、こちらについても患者さんに説明できるようになる必要があります。
最近になってGEが急に増えてきました。特に高齢の患者さんにおいては、後発品をきちんと理解せずに、昔から使っている先発品を選択する傾向があります。薬剤師としてはGEを正しく理解してもらえるよう、上手に説明するスキルを磨き、できればGEに変更してもらい、医療費削減にも貢献したいものです。
これからは、「医療費削減の影に薬剤師あり」と言われるようになりたいですね。